マクラーレン初となるPHEVモデル、アルトゥーラが2021年に誕生。そして24年にはオープンモデルであるスパイダーが登場し、日本でも発表された。今回はひと足先にその次世代スーパーカーの走りを体感した自動車評論家、渡辺敏史氏にその魅力を語ってもらった。(Motor Magazine 2024年8月号より)
パフォーマンスでもアップデートされていた
アルトゥーラはマクラーレンのプロダクションモデル群の新たな歴史を切り拓く銘柄だ。パワートレーンのPHEV化を筆頭に、シャシやサスペンションなどがまったくの新設計となり、そのアーキテクチャーは今後のモデル群の更新の軸となる。そういう意味ではかつてのMP4−12Cに似た位置づけといえるだろう。
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いわばブランドの第二章の幕を開けたともいえる、そんなアルトゥーラに追加されたのがスパイダーだ。
だが、単に屋根が開くというだけではなく、初出のクーペに対するとソフトウェアを中心に大幅な更新が施され、パフォーマンス面にも少なからぬ進化がみてとれる。ちなみにこの性能向上は今後販売されるクーペのみならず、初出時からの車両にもアップデート対応が可能だという。
パワートレーンはアルトゥーラ用に開発され、リカルドが生産を担う120度バンクの3L V6ツインターボだ。その出力は605psと20ps向上。95psの駆動モーターとの組み合わせで、システム総合出力は700ps/720Nmと、フラッグシップの750Sにも肉薄するパワーとなる。
アルトゥーラシリーズは小型でトルク特性に優れたアキシャル型駆動モーターを採用、その出力は95ps/225Nmと、ハードウェア的には大きな変化はない。が、ソフトウェアのアップデートによりモーター走行での航続距離は33kmと、約1割向上した。モーターでの最高速は130km/hとこちらは変わりはない。
さらに組み合わせられる8速DCTもキャリブレーションが加えられ、変速スピードが25%向上、これによりスパイダーの動力性能は0→100km/h加速が3秒フラット、最高速は330km/hとなる。数値的にはクーペと同じと、このあたりがトルクを瞬時に立ち上げるモーターを内包するパワートレーンの強みといえるだろう。
オプションで調光機能付きのスケルトンパネルも選ぶことができるルーフの開閉時間は約11秒。スパイダー化に伴う重量増は約50kgだが、それでも乾燥重量比ではライバルより83kg軽い。
小型・軽量はマクラーレンのクルマ作りの核心だが、同様に強いこだわりをもつ視界は、リアのバットレスをわざわざスケルトン化して斜め後方視界を確保しているあたりからも、意気込みのほどが汲み取れるだろう。
750Sに比肩する、優れた乗り心地を実現
今後のマクラーレンのプロダクトのキーとなるだろう、進化したカーボンタブを軸に構築されるMCLAアーキテクチャー、それを用いた第1弾となったのがアルトゥーラシリーズだ。コクピットに収まってのインターフェースの清冽さには相変わらず感心させられる。標準シートの剛性やサポートも完璧で、そのフィット感は他とは一線を画する感がある。
試乗時はWRCのコース付近のタイトなワインディング路なども走る、クルマにとっては相当タフな環境だったが、アルトゥーラ スパイダーはまったく音を上げることなくバンピーな路面に吸い付くようなフットワークを披露した。
可変ダンパーシステムの応答速度は初出時に対して実に90%も高められているというが、大入力だけでなく石畳をそろそろと進むようなタウンライド域でもしっかり減衰を立ち上げて、入力の角を丸めている。足まわりの饒舌さや度量の深さという点でいえば、油圧システムを用いる750Sにも比肩するといっていいだろう。
このアシの良さによって700psのパワーも持て余さず、山道でもしっかり踏んでいける。エンジンとモーターとの繋がりも均され、ブレーキの癖も削られ・・・と、アルトゥーラシリーズはスポーツカーとしての洗練度が一気に高まった。スパイダーはその凝縮感を開放感と共に味わえるという格別な魅力を備えた1台だ。(文:渡辺敏史/写真:マクラーレン オートモーティブ)
主要諸元 アルトゥーラ スパイダー
●Motor
型式:M630
種類:V6DOHCツインターボ
総排気量2993cc
最高出力:445kW(605ps)/7500rpm
最大トルク:585Nm(59.6kgm)/2250-7000rpm
燃料・タンク容量:プレミアム・65L
WLTPモード燃費:20.8km/L
CO2排出量:108 g/km
●Motor
最高出力:70kW(95ps)
最大トルク:225Nm(22.9kgm)
EV航続距離(WLTPモード):33km
●Performance
システム最高出力:515kW(700ps)
システム最大トルク:720Nm(73.4kgm)
0→100km/h加速:3.0sec
最高速度:330 km/h
●Dimension&Weight
全長×全幅×全高:4539×1976×1193mm
ホイールベース:2640mm
トレッド 前/後:1650/1613mm
車両重量:1457kg
●Chassis
駆動方式:MR
トランスミッション:8速DCT
ステアリング形式:ラック&ピニオン
サスペンション形式 前:ダブルウイッシュボーン 後:マルチリンク
ブレーキ:カーボンセラミックディスク
タイヤサイズ 前、後:235/35R19、295/35R20
●Price 車両価格:36,500,000円
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