現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > BMW NEXT Genに見る、未来のクルマとモーターショー

ここから本文です

BMW NEXT Genに見る、未来のクルマとモーターショー

掲載 更新
BMW NEXT Genに見る、未来のクルマとモーターショー

BMW NEXT Gen

BMWの“未来”を一堂に集めたイベント

BMW NEXT Genに見る、未来のクルマとモーターショー

「NEXT Gen」とはネクスト・ジェネレーション、つまり次世代を意味する。BMWが考える未来のテクノロジー、未来のデザイン、そして未来の自動車のあり方を提案し、「次世代の子供たちに自動車メーカーとして何を残すのか?」について考えるのが、このイベントの主旨だったといっていい。

内容は盛りだくさん。たとえば自動運転に関するデモンストレーションでは、BMWが自動運転の開発に用いている7シリーズ・ベースのテスト車両を使用し、ドライバーが運転席に腰掛けていない状態で走行する“ドライバーレス自動運転”を実演。

BMW所有の敷地内という限定的状況ながら、私たちを後席に乗せて曲がりくねったコースを滑らかに走りきり、途中で道路を横断中の歩行者を見つければ彼女が通り過ぎるまで辛抱強く待ち、安全が確認されたところで再発進してみせた。

それだけでなく、数10m離れた待機場所から操作用のスマホを持つ利用者のところまで自動で移動し、利用者が降車したあとは自動で待機場所に復帰する機能まで披露。50代以上の読者限定でいえば、“スーパージェッター”に登場する“流星号”並みの賢さといえる。

電動化技術では3モーターの駆動系を発表。フロントにふたつ、リアにひとつのモーターを配置したそのレイアウトならびに発想はホンダNSXに搭載されたSH-AWDのEV版ともいえるものだった。また、モーターにレアアースを用いていない点も特徴的。このモーターは間もなくデビューするiX3に搭載されてデビューする(ただしモーター単体で、3モーター駆動ではない)。

モーターショーにも匹敵する大規模開催のワケ

そのほかにも1シリーズ、X1、M8クーペ、M8コンペティション・クーペ、3シリーズ・ツーリング、8シリーズ・グランクーペなどの量産モデルがワールドプレミアを飾ったほか、PHVを搭載したスーパースポーツ・コンセプトカーのビジョン M NEXTまで投入。モーターショーと見紛うような大規模な発表を行ったのである。

しかも、BMWがドイツのミュンヘンでNEXT Genを実施したのは、同じドイツのフランクフルト・ショーが開催されるわずか3ヵ月前のこと。このタイミングで、これほど派手なネタを大盤振る舞いして大丈夫かと心配になるのも無理からぬ話だろう。

そこで私は会場で何人かのBMW関係者に「こんなに多くの発表を行って、フランクフルト・ショーは大丈夫なのか?」と訊ねてみたのだが、彼らは一様に「大丈夫です。フランクフルトショーでもたくさんの発表を行うので楽しみにしていてください」と私に語った。

今回、BMWがNEXT Genを実施したことについて「自動車メーカーのモーターショー離れを象徴する出来事」と捉える向きもあるようだが、それは一面で正しくて一面で誤り。事実、BMWは今年のフランクフルト・ショーにもしっかりとブースを構え、主役の一画を担うと見込まれている。

では、なぜ彼らはお膝元であるフランクフルト・ショーの直前にこのようなイベントを開いたのか? BMW関係者のひとりは、私にこう打ち明けてくれた。

「現在、自動車メーカーの活動は非常に多岐にわたると同時に、それらは急速に高度化しています。一方でモーターショーは時間もスペースも限られているために、ひとつひとつの活動を詳しく説明するのは困難です。私たちが今回、NEXT Genを実施したのは、モーターショーでは紹介しきれない私たちの活動をみなさんに理解していただくのが目的です」

単一開催だからできる“スタートアップ”の発表

たしかに、NEXT Genでは普段知ることのできないBMWの最新技術やビジネス戦略に触れることができた。スタートアップに関する発表は、まさにその代表だろう。

スタートアップとは、新規に立ち上げられたベンチャー企業のことだが、BMWはユニークなアイデアや独創的な技術を有するスタートアップと提携。ときに経営支援をするなどして、彼らの活動をBMWの製品開発に役立てている。その領域は極めて広範でAIからデザインにまで及ぶが、そういった実例を垣間見られたことは、NEXT Genのような単一企業の独自イベントならではといえる。

一方で、単一自動車メーカーによる独自イベントにも限界はある。たとえば、今回のNEXT Genに招かれたメディア関係者の数は世界中で200名ほど。なお、メディア向けの開催は1日限りで、それに続く3日間は学生などの一般客に開放されたそうだが、それにしても1000人程度に過ぎないはず。何十万人が訪れるモーターショーとは規模の点で格段の差がある。

前述の関係者が続ける。「より多くのお客さまに見ていただくという面では、やはりモーターショーに大きな意味があります。したがってモーターショーにはこれからも継続して 出展します。今年はNEXT Genを実施しましたが今後については未定です」

おそらく、NEXT Genのような独自イベントは将来的により増えていくだろう。その一方で彼らはモーターショーにも関わっていくが、これまでのように大規模なモーターショーにすべて参加する方針を改め、自分たちに重要と思われるショーに的を絞っていくと推測される。

自動車産業の大変革が招いた必然

先ごろ、今年の東京モーターショーに参加する輸入車メーカーが激減することが明らかになったが、これは我が国に限った話ではなく、世界中のモーターショーで起きていること。毎年1月に開催され、世界を代表する自動車ショーのひとつとされてきたデトロイトショーが海外メーカーから見放され、6月に開催時期をずらしたのもその一環といえる。

モーターショーが曲がり角に差し掛かっているのは間違いないが、それは現在起きつつある自動車産業の大変革と深く結びついた出来事でもあるのだ。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)

こんな記事も読まれています

日産、全国車椅子マラソンを12月開催へ…パラリンピック選手も参加
日産、全国車椅子マラソンを12月開催へ…パラリンピック選手も参加
レスポンス
宮田莉朋、FIA F2初開催カタールはライバル勢に“コソ練多し”目標はトップ10入り/第13戦プレビュー
宮田莉朋、FIA F2初開催カタールはライバル勢に“コソ練多し”目標はトップ10入り/第13戦プレビュー
AUTOSPORT web
ブレーキだけで1台分500万円も!? 高性能車に採用される「カーボンセラミックブレーキ」はなにが違う? 摩擦力と耐熱性に優れた理想のブレーキでした
ブレーキだけで1台分500万円も!? 高性能車に採用される「カーボンセラミックブレーキ」はなにが違う? 摩擦力と耐熱性に優れた理想のブレーキでした
Auto Messe Web
スズキ、子どもたちに宇宙の魅力発信 12/8にスズキ歴史館でイベント開催
スズキ、子どもたちに宇宙の魅力発信 12/8にスズキ歴史館でイベント開催
日刊自動車新聞
F1由来の最新ターボシステムを採用!「メルセデスAMG GT 43 クーペ」が日本デビュー!
F1由来の最新ターボシステムを採用!「メルセデスAMG GT 43 クーペ」が日本デビュー!
Webモーターマガジン
&quot不死鳥”ウィケンス、IMSAのGTDクラスに参戦! インディカーでのクラッシュで下半身不随もレースへの情熱は燃え続ける
&quot不死鳥”ウィケンス、IMSAのGTDクラスに参戦! インディカーでのクラッシュで下半身不随もレースへの情熱は燃え続ける
motorsport.com 日本版
激レア車が集結!オーテック湘南里帰りミーティング2024レポート
激レア車が集結!オーテック湘南里帰りミーティング2024レポート
レスポンス
V8エンジン7基搭載の魔改造トラクターって地球の底まで耕す気か! 重いものを引っ張る競技「トラクタープリング」がこれぞアメリカだった
V8エンジン7基搭載の魔改造トラクターって地球の底まで耕す気か! 重いものを引っ張る競技「トラクタープリング」がこれぞアメリカだった
WEB CARTOP
【F1メカ解説】本当はミニDRSを使いたかったのに……使用を制限されたマクラーレン、ラスベガスを超低ダウンフォース仕様でしのぐ
【F1メカ解説】本当はミニDRSを使いたかったのに……使用を制限されたマクラーレン、ラスベガスを超低ダウンフォース仕様でしのぐ
motorsport.com 日本版
クルマに戻ってきたら顔面蒼白! ほぼ泣き寝入り確実の「ドアパンチ」を防ぐ5つの手段
クルマに戻ってきたら顔面蒼白! ほぼ泣き寝入り確実の「ドアパンチ」を防ぐ5つの手段
WEB CARTOP
運転士がこないと「こまります」バスが集結! 切実な人手不足を訴えるイベント実施 名鉄
運転士がこないと「こまります」バスが集結! 切実な人手不足を訴えるイベント実施 名鉄
乗りものニュース
ファルケンモータースポーツチームがニュルブルクリンク耐久シリーズのチャンピオンを獲得
ファルケンモータースポーツチームがニュルブルクリンク耐久シリーズのチャンピオンを獲得
Auto Prove
約299万円!? マツダ新型「スポーティ“セダン”」公開! 半円4連テール×流麗ボディが超カッコイイ! 全長4.9m級の「イージーシックス」中国に登場
約299万円!? マツダ新型「スポーティ“セダン”」公開! 半円4連テール×流麗ボディが超カッコイイ! 全長4.9m級の「イージーシックス」中国に登場
くるまのニュース
シンプルながら力強さと美しさを兼ね備えたNEWグラフィック!! アライが2タイプの「RAPIDE-NEO46WORKS」を発売
シンプルながら力強さと美しさを兼ね備えたNEWグラフィック!! アライが2タイプの「RAPIDE-NEO46WORKS」を発売
バイクのニュース
過去20年で最多となる405台が湘南に帰ってきた! 「オーテック里帰りミーティング2024」が開催
過去20年で最多となる405台が湘南に帰ってきた! 「オーテック里帰りミーティング2024」が開催
WEB CARTOP
BMW、新型「X3」を発売!全モデルに48Vマイルド・ハイブリッドを搭載した第四世代
BMW、新型「X3」を発売!全モデルに48Vマイルド・ハイブリッドを搭載した第四世代
LE VOLANT CARSMEET WEB
トヨタ、スープラの生産終了を告知…特別仕様車A90 ファイナルエディションの日本導入時期は「検討中」
トヨタ、スープラの生産終了を告知…特別仕様車A90 ファイナルエディションの日本導入時期は「検討中」
driver@web
スープラ、販売終了へ! “A90 Final Edition”も登場へ──GQ新着カー
スープラ、販売終了へ! “A90 Final Edition”も登場へ──GQ新着カー
GQ JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村