まもなく新型が上陸するホンダ「アコード」の日本市場における存在意義とはいかに? 現行モデルに試乗した大谷達也が考えた。
今乗っても悪くない
新感覚のホットハッチ──新型アバルト500eカブリオレ試乗記
2024年の春にはフルモデルチェンジを受けた新型が国内でも発売されるホンダ・アコード。でも、ややへそ曲がりな私は、このタイミングで敢えて現行型アコードに試乗して、アコードのこれまでの足跡と今後の行方について考えてみることにした。
現行型アコードの国内発売は2020年だったから、その直後に試乗したときの印象はいまでもよく覚えている。クーペライクな外観とは裏腹に、乗り心地はソフトで快適。しかも静粛性が高く、ハンドリングも正確だった。ただし、この時期はホンダのハイブリッドシステム「e:HEV」がやや未成熟で、坂道を登り続けるような状況ではエンジンがザワザワというノイズをたててやや騒がしかったことを記憶している。
つい先日ステアリングを握った現行型アコードの印象も、これと変わらない。ただし、今回は市街地のみの試乗だったので、エンジンノイズが高まる状況に遭遇することなく、クルマの全般的な印象は前回よりもむしろ良好で、2023年のいま、このまま販売しても十分に通用する商品力を有していると感じた。
そんなアコードの最大のライバルといえば、トヨタ「カムリ」だろう。間もなく国内生産が終了する現行型カムリがデビューしたのは2017年。でも、発売間もないカムリに試乗して、私はガッカリした。サスペンションの動き方がぎこちなくて、路面からのゴツゴツとした感触が、思いのほか明確に伝わってきたからだ。
その後、足まわりは少しずつしなやかになってゴツゴツ感も薄れていったが、アコードほど良質な乗り心地を体験したことはついになかった。したがって、エクステアリアデザインはなかなかエッジーで格好よかったけれど、クルマとしての洗練度はいまひとつというのが、私のカムリに対する評価だった。
それでも、セールスはカムリのほうが好調だった。たとえば2023年上期の国内販売(日本自動車販売協会連合会調べ)でいえば、カムリが月販800台ほどだったのに対し、アコードは200台前後だった模様。2022年のグローバルなセールスでも、年間50万台を切っていたアコードに対してカムリは70万台に迫る台数を販売したようだ。
もっとも、ここで私が申し上げたいのは「仕上がりのいいアコードよりもカムリのほうが売れていたなんて、けしからん!」ということではない。皆さんに注目いただきたいのは、カムリは今年12月の国内生産終了をもって販売も終了となる見通しであるのに対して、アコードは前述のとおり新型になってからも継続販売される点にある。つまり、売れているカムリの販売が打ち切られて、売れていないアコードの販売が続くという、なんとも奇妙な結果となったのだ。
ホンダをたまには褒めてあげたいこのことについて、私なりの考察を加えてみたい。
はっきりしているのは、アコードにしてもカムリにしても国内販売台数は決して多くなかったということ。いっぽうで、トヨタはクラウンのラインナップを大幅に強化し、その拡販に努力している。しかも、そこにはセダンもしっかりと用意されている。「だったら、カムリの販売は終わりにして、クラウンにより注力しよう」という判断が下されたとしても不思議ではない。カムリの生産が終了するのは、こうした事情によるものだったと推測される。
いっぽうのホンダにはクラウンに相当するモデルがない。アコードよりもひとつ下のクラスにはシビックがあるけれど、総合自動車メーカーとしての体裁を整えるなら、シビックよりもひとクラス上のセダンが欲しい。幸い、アコードは北米で売れていて基本的な開発費はそこの売り上げでまかなえるので、ちょっと苦しいけれどお膝元である日本での販売は継続しよう。そんな意気込みで、アコードの存続が決まったのではなかろうか。
もうひとつ、指摘したいことがある。一時期のホンダは、「レジェンド」、「NSX」、「S660」、「オデッセイ」の販売を立て続けに打ち切った。このうちオデッセイのみは中国生産製に切り替えて再発売が決まったけれど、このような判断が下された当初、ホンダに対して「闇雲に生産を打ち切るのはいかがなものか?」という非難の声が高まったことがある。
もちろん、自動車メーカーは利潤を追求する私企業だから、儲からない車種の販売が打ち切られるのは仕方ない側面もある。けれども、あまりに頻繁に発売中のモデルの販売を終了すると、やがて顧客からの信頼を失うことになりかねない。
「なんだ、自分が買ったクルマはメーカーに見捨てられたのか」 と、思う向きがあったとしても、不思議ではないからだ。
そんなホンダが、アコードだけは諦めることなく踏ん張った。その背景には、ホンダが「セダンはクルマの基本」と、考えていることが関係しているのではないかと私は推測している。
4人ないし5人の大人がしっかりと腰掛けられて、乗り心地が快適で高速移動も苦にならない。そして、いざとなればワインディングロードを元気に走ることも可能。そんなことができるクルマはセダン/ワゴンとSUVだけだろう。
でも、SUVには重心が高いという決定的な弱点がある。このため乗り心地とハンドリングを高い次元で両立させることがセダン以上に難しいというのが定説。しかも、SUVは全高が高いために空気抵抗が大きく、高速燃費は一般的にセダンには及ばない。市街地燃費にしても、車重がセダンより重い分、SUVのほうが不利だ。いいかえれば、セダンほど総合性能に優れたクルマはほかにないのである。
そんなセダンをできるだけ残したい……。数多くの自動車メーカーのなかにあってとりわけ技術志向が強いホンダに、そんな思いが芽生えたとしても不思議ではなかろう。
それにしても、販売中断が発表されるたびにホンダに対する非難の声が高まったのとは裏腹に、アコードの継続販売が決まっても、それを褒める声がほとんど聞こえないのは、なぜだろうか? F1撤退問題のときもそうだったが、ホンダはなにをやらかせば集中砲火を浴びるのに、いいことをしてもほとんど褒められないような気がする。
そんなホンダをたまには褒めてあげたいと、僭越ながら私はそう思っている。
文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
運転して見ればトヨタのセダンより良い所が多々ある事は直ぐにでも分かるが試乗もされてない。
ホンダの営業力の無さなのかホンダのイメージがセダンを選ばせてくれないのかは分からないけどね。
ドライバーズカーとしてのセダンならアコードは本当にいい選択だと思うよ。