クルマを購入せずに利用する方法はいろいろ登場している。残価設定型ローンやカーリースが定着しないと言われた日本でも、近年は利用者が大幅に増えている。
そんななか、トヨタは定額サービスが一般的になってきたことを受けて、サブスクリプションサービスのKINTO(キント)を2019年に開始。
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新車、中古車で追従するメーカーも増え、注目を集めている新サービスだが、気になるのはお得なのか? という点ではないだろうか。
本企画では、サブスクリプションサービスの先鞭をつけたトヨタのKINTOについて、その損得勘定とどんな人が得するのかについて、渡辺陽一郎氏が考察する。
文/渡辺陽一郎、写真:TOYOTA、LEXUS、HONDA、平野学、池之平昌信
【画像ギャラリー】KINTOに追加された注目のニューフェイスと人気ランキング
販売店はKINTOと距離を置いている!?
2020年7月1日から上の6車種でKINTO ONEの全国でサービスを開始。現在は対象車種が大幅に増えて選択肢が増えている
最近は定額制でクルマを利用できるサブスクリプションサービスが話題になっている。
特にトヨタの「KINTO」は、TVのCMも活発に放映して宣伝にも力を入れている。株式会社KINTOは、2019年2月に設立されて定額制サービスを開始した。
発足当初は、トヨタの5車種と、レクサスを対象とした「KINTO・SELECT」を設定して、2019年7月にはアクアも加えた。12月には16車種を追加して、主要なトヨタ車でKINTOを利用可能になった。
2020年4月には、従来の3年プランのほかに、5年/7年プランも加えている。契約期間中に、別のプランに乗り替えられる「のりかえGO」のサービスも始めた。
KINTOの累計申込実績は、2020年3月時点で3150件とされている。トヨタ車は2019年に国内で約155万台、1か月平均でも約13万台を販売しているから、3000件少々の累計申込実績はきわめて少ない。
レクサス車のKINTO ONE対象車は5車種。最も高額なのがLX570で、月額19万8000円(税込み)となっている
販売店でKINTOについて尋ねると、次のように返答された。
「KINTOにトヨタの販売店で申し込むことは可能ですが、基本的にはお客様とKINTOの契約になります。販売店が車種やグレードの選択などに関して、詳しくアドバイスすることは基本的にありません。そのために私が担当するお客様で、KINTOの利用を開始した方もおりません。今のところ加入者は少ないでしょう」
KINTOは若者を引き付けるのが使命
トヨタの販売店を通じてクルマを購入すると、その後の付き合いもあるから、途中でKINTOに乗り替えることは考えにくい。
そして今は、新車需要の70~80%が、今まで使っていた愛車を下取りに出して新車を買う乗り替えに基づく。
そうなるとKINTOの利用者は、クルマを何台か乗り継いできたベテランではなく、初めて所有する人達が中心だろう。そこでKINTOのCMも、若年層に向けた訴求を行っているが、今はこの世代がクルマをあまり買わない。
言い換えれば、クルマを買わない若い人達を引き付けるのがKINTOの使命だ。そのように考えると、累計申込実績が急速に増えないのは当然だろう。
販売絶好調のライズは、若者からも人気が高く、2020年10月現在でKINTO ONEの人気ランキングで2位となっていて、月額3万9820円~
KINTOは任意保険を含んでいるのが特徴
今はクルマのサブスクリプションサービスが増えつつあるが、KINTOの一番のメリットは、月額料金の中に任意保険料まで含んでいることだ。
定額サービスやカーリースの場合、車両の使用料、税金、自賠責保険料、メンテナンス費用などを含むのは当然だが、任意保険料までカバーするのは珍しい。任意保険は保険料が概して高額で、特に若いユーザーでは高騰するためだ。
KINTOが標準付帯している任意保険は、全年齢を補償するコースで、車両保険(免責は5万円)まで含まれる。対人と対物賠償は無制限、人身傷害補償は1名に付き5000万円だ。
例えば契約者の未成年の子供が友人とドライブに出かけ、その友人が交代して運転している時に、運転ミスによる自損事故を発生させたとする。この状況でも車両保険が支払われるのだ。保険料が最も高額な加入方法になる。
デビュー以来快進撃を続けているハリアーは月額6万1600円からとなっていて、今後KINTO ONEでの伸びが期待されている
保険料の高い若者にはメリットが大きい
ヤリスクロス2WD・1.5Gで年齢条件などに基づく割引きのない任意保険に加入すると、車両保険まで加えれば、1年間の任意保険料は約30万円に達する。3年間なら90万円だ。
ヤリスクロス2WD・1.5Gで3年間の残価設定ローンを利用すると(実質年率6.8%)、返済額の合計は約129万円になる。
そこに購入時に納める税金と自賠責保険料が約11万円、そのほかの諸費用が約10万円、メンテナンスパックが約7万円という具合に加えると、合計約157万円だ。そこに3年間の任意保険料となる90万円を加えると、総額では247万円に達する。
2020年8月にデビューして、KINTO ONEに加わるや否や人気ナンバーワンとなっているのがヤリスクロス。月額4万4550円からとお手頃価格も魅力
いっぽう、KINTOでヤリスクロス2WD・1.5Gを契約すると、毎月の支払い額は全年齢補償の任意保険料まで含めて4万4550円だ。
3年間(36か月)であれば160万3800円だから、残価設定ローンを使って全年齢補償の任意保険に加入した場合に比べると80万円以上も安い。KINTOは若いユーザーにとって、利用価値の高いサービスに作り込んでいる。
また数回にわたって任意保険を使い、等級の下がった(つまり任意保険料が高額になる)ユーザーにとっても、KINTOはメリットが大きい。
KINTOであれば、ユーザー自身が加入してきた任意保険とは無関係だから、前述の定額料金で利用できる。
若者のクルマ離れが危惧されるなか、その若者の憧れの存在となっているアルファードは、月額7万2600円から利用できる
保険の等級によっては支払総額が高くなるケースも
その半面、KINTOで保険を使わない無事故の期間が長くなっても、自分の等級は高められない。自分自身で任意保険に加入すれば、無事故の実績が評価されて等級が高まり、任意保険料は下がっていくがKINTOは対象外だ。
若い時だけKINTOでクルマを使い、その後はクルマを所有しないなら保険料は割高にならないが、長期間で捉えるとKINTOが割安とは限らない。
無事故の期間が続いて任意保険が20等級まで高まり、運転者も本人と配偶者のみに限定した場合、ヤリスクロス2WD・1.5Gの1年間の任意保険料は、安いコースになると約3万円、3年間で9万円程度まで抑えられる。
そこに3年間の残価設定ローンに費やす税金なども含めた157万円を加えると166万円だ。KINTOを使う160万3800円に近付く。
ホンダは中古車でホンダマンスリーオーナーという名称のサブスクリプションサービスを展開していて、エリアを拡大中
さらに現金で購入して3年後に手放す場合、残価設定ローンの残価率から判断すると、車両価格が202万円のヤリスクロス2WD・1.5Gなら3年後に105万円で売却できる。人気車とあってリセールバリューも高い。
そうなると3年間に価値が下がる金額は97万円だ。そこに税金、自賠責保険料、諸費用、メンテナンスパックなどの28万円と、先に挙げた任意保険料の9万円を加えれば総額134万円になる。KINTOの160万3800円に比べると約26万円安い。
以上のように現金購入に勝る安さはないが、KINTOも力を入れるサービスとあって相当に割安だ。定額制だから月々の出費にも変動がなく、予算を設定しやすい。
サブスクリプションの利用はする際は損得勘定の吟味が必要
WRCのホモロゲ取得のためのコンペティションカーのGRヤリスもKINTO ONEの対象となっているのは意外。月額7万9200円から利用可能
KINTOからもわかるとおり、サブスクリプションサービスを選ぶ時に注意したいのは、任意保険料を含むか否かで損得勘定が大きく変わることだ。
今は中古車も含めて、各メーカーがサブスクリプションサービスに参入しているが、任意保険の加入まで含めて出費の総額を比べることが大切になる。
KINTOはトヨタが力を入れるだけに、GRヤリスも対象に含まれる。多く利用される車種は、ヤリスクロス、ライズ、ハリアーなどの人気車が多い。「任意保険料などが高いから、クルマを持ちにくい」と考える推奨度の高いユーザーを中心に、利用者を少しずつ増やしていくだろう。
今後の見通しとして気掛かりなのは、料金の変動だ。
KINTOの任意保険は、トヨタと自動運転技術開発などで業務提携を結ぶ東京海上日動火災が受け持つ。KINTOの任意保険も業務提携の一環と考えられるが、それにしても、全年齢補償の任意保険に加入する割に利用料金が格段に安い。
今後の保険金支出次第では、損失が生じて、KINTOの料金に影響を与える可能性もある。
現時点の割安感が今後も継続するとは限らないので、KINTOを利用する時には、その度に残価設定ローンや現金購入と出費を比べる必要がある。ほかのサブスクリプションサービスも同様だ。
新たにKINTO ONEの対象となったランドクルーザープラド。長く乗るなら、サブスクよりも購入がお得。3~5年で乗り替えるなら、サブスクのメリットも出てくる
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みんなのコメント
ただ、それで良いのか?
これ、何種類も乗れると思ってた。一台を何年か乗るのね。マイカーリースと大差ないよね。