2005年秋、2代目メルセデス・ベンツCLKクーペは、シャープさを増した内外装、新世代エンジン、高い安全性能を身につけて大きく進化している。現在(2020年1月)はEクラスクーペへと受け継がれている、その個性の根源を日本でのテストドライブで振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年1月号より)
GTとしての性能にさらに磨き
最近のメルセデスは、マイナーチェンジをすると、ことごとく素晴らしい乗り味を手に入れている。Cクラス、Eクラスと続き、このCLKクラスもまたその例に漏れないものだった。
【くるま問答】アイドリングストップ機能はよいことばかりではない。OFFスイッチはいつ使う?
今回の改良は内外装や装備を中心としたものだが、注目はSLKクラスやEクラスに搭載されて好評の3.5RV6DOHC24バルブエンジンを新たに搭載したことであろう。CLK350にはもちろん、カブリオレボディも用意される。
インプレッションに入る前に、改良のおさらいをしておこう。まず、フロントマスクがよりシャープな印象になった。これはバンパーデザインの変更に伴って先端を延伸し、中央にエッジを効かせたため。グリルデザインもバー数を変更するなど、より精悍に見せる工夫がなされた。外観ではその他、アルミホイールデザインを一新。リアコンビネーションランプのデザインを変えるのも、最近のメルセデスのマイチェン流儀である。
最近のマイチェン流儀といえば、安全装備の拡大も挙げられる。すなわち、追突など後方からの衝撃に際して頚椎損傷を低減するネックプロ・アクティヴ・ヘッドレストや、バイキセノンライトに組み合わされるアクティブライトシステムとコーナリングライトなどがそれだ。
そろそろ本題に移ろう。DOHC化なった新世代のV6ユニットだが、他モデルと同様に、7速ATの7Gトロニックが組み合わされる。試乗したクーペモデルはアバンギャルド仕様だ。17インチの5スポークアルミホイールを履き、インテリアトリムはブラックアッシュウッドとなる。同じくカブリオレはエレガンス仕様となり、17インチではあるが9本スポークタイプのエレガントなアルミホイールが与えられ、インテリアトリムもダークアッシュウッドで雰囲気を変えている。要するに、クーペはハードに、カブリオレはソフトに、とテイストを2極化した。クーペにはAMGスポーツパッケージさえ用意される。
新開発のV6と7Gトロニックの相性は相変わらず素晴らしい。低速から湧き出る豊かなトルクをよどみなく後輪に伝え、スムーズかつ力強い加速を実現している。ただ、ラフなペダル操作をすると、Cクラスのボディサイズにこのエンジンは十分過ぎて、ギクシャクした動きも出る。右足に抑制さえ効けば、かっちりとしたボディを弾性あるものに感じさせる最近のメルセデス流ボディチューニングの恩恵で、パワーの過多感を上手く抑え、クルマ全体が忽然となって動くという乗り味になる。
もちろん、得意科目であったGT性能にも磨きがかかった。相変わらずの直進性能と、さきほどの忽然とした一体感、そして意のままの加速力が加わって、GTとして使うパーソナルクーペとしては無敵である。スポーツ性こそBMWあたりに劣るものの、それ以外の性能面では文句なしに、そしていまなお一番。頃合のサイズも使い勝手に優れる。
とまあ、もっと評価されてもいいCLKクラスだが、やはりその強気な価格設定が、ツウ好みのメルセデスという印象を与えるようだ。何せ、同じエンジンを積むSLKよりも、クーペですら高額。カブリオレで比較すると約150万円のプラスαなのだ。メルセデスのクーペを買うぐらい余裕のある人には座席数など関係なく、となればハードルーフオープンで買い得なSLKに目がいってしまうのも無理はない。
ただし、メルセデスらしい深みのある乗り味が欲しければ、CLKクラスを選ばなければならない。のど越しがビロードのようなヴィンテージワインの味わい。一方のSLKは、当たり年で旨いがあっさりとした味わいのボージョレだろう。もちろん、どちらを好むかは人それぞれだが、長く付き合うならばCLKだと思う。何年後に飲んでも、上手に付き合ってさえいれば、旨いと感じるはずだからだ。(文:西川淳/Motor Magazine 2006年1月号より)
メルセデス・ベンツCLK350アバンギャルド(2006年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4660×1740×1415mm
●ホイールベース:2715mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:272ps/6000rpm
●最大トルク:350Nm/2400-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:798万円
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