エクリプス クロスにディーゼルエンジン車がラインアップされた。クルマが電動化する流れの中で、何かと風当たりの強い内燃機関。その中でもディーゼルエンジンはイメージがよくない面がある。それでも三菱自動車がここに来てエクリプス クロスにディーゼルエンジンを採用した理由を探っていこう。
開発者もディーゼルを続けるかどうか迷った末の決断
エクリプス クロスに搭載された4N14型は従来からあるディーゼルエンジンだが、今回は尿素SCRシステムが採用されたのがポイントで、三菱としては今年2月に発売されたデリカD:5に続く2車種目となる「新4N14型」とも呼べるものだ。ここでのディーゼルエンジンの投入について、三菱の開発者はこう言う。
運転免許証番号、12桁の意味。最後の一桁であれがわかっちゃう!
「本当にこのままディーゼルエンジンの開発を続けるのか?という話もありましたが、やはり続けようという結論です。エクリプスクロスのディーゼルは、日本はもとより、とくにディーゼルへの風当たりが強い欧州でも受け入れられることを念頭に入れています。ただ実際には発売できたのがガソリン車でしたので、私たちとしてはようやくディーゼルも出たか、という感じです」。開発する上での迷いや多くの障壁を乗り越えて日の目を見たのだから思いもひとしおというところだろう。
ディーゼルエンジンで問題とされるのがPMとNOxの発生だ。PMは燃焼温度が低く、燃料過多の不完全燃焼時に発生し、NOxは燃焼温度が高く、完全燃焼に近い時ほど発生する。つまりトレードオフの関係になるのが難しいところ。PMについて従来の4N14型エンジンでは、コモンレール式燃料噴射やDPF触媒によって低減を図っていた。レスポンスの良いターボも軽油を燃え残さないという意味で有効だ。
NOxに関して新4N14型ディーゼルの特徴は、その浄化のために尿素SCRシステムを採用したことだ。従来型のNOxトラップ触媒では、NOxを還元するときに、排気温度を上げる制御する。燃焼でコントロールするということは、走りに影響が出ることがあるということだ。今回の尿素SCRシステムはNOx低減をエンジンと切り離すことができたので、走りに影響しないのがメリット。エンジン本体はドライバーの要求に対して忠実に応えてくれるということだ。さらに排出ガスを環流させるEGR領域も拡大してNOxを低減している。
「NOxのコントロールのしやすさでも尿素SCRが勝る」と開発者は言う。システムとして追加で尿素タンク、噴射するためのインジェクターも必要になりコスト面では高くなるが、NOxトラップ触媒で必要な貴金属は不要のため「圧倒的にコストが上がってしまうということもない」とも付け加えた。また、今回のディーゼル仕様車の想定ユーザーについても聞いてみた。
「街乗りで乗られる方に関しては、ガソリンの方がオススメにはなると思います。ただ、そこからちょっと遠いところまで出かけようというときには、ディーゼルエンジンの方がトルクフルで、走りに対する余裕があると思います。ドライバーにかかる負担が少なくて、遠くに移動する方にはいいでしょう。そういったところで棲み分けはできるのかなと思います。ただ、街中の扱いやすさは今のディーゼルエンジンも十分です」と自信をのぞかせた。
ひとつ気になるのは電動化への流れ。三菱はとくに電動化に力を入れているメーカーでもある。その辺はどうなのだろうか?
「方向として電動化だけに向かっているとは一概には言えないです。エンジン+電動化で燃費を上げたり、排ガスをクリーンにするというのももちろん、ベースのガソリンエンジンやディーゼルエンジンに磨きをかける部分もあります。電動化については、主なマーケットとしては、欧州や日本以外にアセアン地域がありますので、そうするとインフラが進んでいないところがあります。ですからまだまだ内燃機関も頑張らなければというところです。」
まとめると電動化への流れはあるものの、やはり地域によって動力機関の使い分けが必要ということだ。このようにディーゼルエンジンも必要とされるとは言え、欧州では2020年からユーロ6NORMという厳しい排出ガス規制が施行される。次回は、これに適合したメルセデス・ベンツAクラスのディーゼルモデル「A200d」のパワーユニットを見てみよう。
■文:飯嶋洋治(Webモーターマガジン)■写真:井上雅行/原田淳/三菱自動車
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