2022年11月10日(木)~13日(日)に愛知県と岐阜県で開催されるFIA世界ラリー選手権(WRC)「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」。ここに自動車ジャーナリストである国沢光宏氏が参戦を表明。普段は全日本ラリーにハイエース(なぜ?)で参戦する国沢氏が、そろそろ参戦車両を決めるべく活動開始。国産車か? 輸入車か?? 世界最高峰のラリーに出場するためには、どのような装備といくらくらいかかるのか、もろもろ紹介しつつ、実体験を交えてきっちりレポートしてくれました!
文、写真/国沢光宏、ルノー
え!? e-POWERじゃなくて!!? 日産 ジュークハイブリッド電撃発表!! 日本導入はあるか?
■大激戦区の欧州ハッチバック市場で活躍中!!
二度も中止となったWRCの日本開催について、「二度あることは三度ある」と考えるか「三度目の正直」と考えるかは、その人次第だと思っている。私は常に前向きなので後者を信じてます。ということから今年の『ラリージャパン2022』に出場すべく準備を始めた。最初に解決しなくちゃならないのが「どんな車両に乗るか」。WRCとなるとATのWRX S4やハイエースは出走できない(笑)。
今や『Rカテゴリー』と呼ばれるFIAのホモロゲーションを取った安全燃料タンク装備の車両じゃないとダメなのだった。日本車だとヤリスWRカーか86R3くらいしか走れないということ。
WRCに出場している車両を調べていたら、ここにきてルノー・クリオがいいリザルトを残しており人気急上昇中! 競技の場合、速い&強いクルマって宣伝しなくても売れるから興味深いです。
欧州で開催されるラリーではお馴染みといってもいい「ルノークリオ」のラリー仕様。日本版ルーテシアの実力やいかに!!(C)DPPI ALPINE RACING
クルマ好きなら御存知のとおり、クリオは日産ノートの兄弟車である。
日産ノート、ルノーが開発した『CFM-B』プラットフォームを使う。乗るなら日本に近いクルマでしょう、ということでカタログを見たら、これがなかなか魅力的! 『ラリー5』という一番ベーシックなモデルなら、WRCに出場可能な安全装備やドグミッション、サスペンション、ブレーキまで付く新車で4万5000ユーロ(約600万円)。
もちろん安全燃料タンクだって標準装備。60万円ほどの舗装ラリー用キットとホイールを買うだけで出場できる。ラリージャパンに3回出場すれば1回あたり200万円。3回のSS距離を1000kmと想定すると、エンジンやミッションなどのOHも不要だという。燃料はリッター1000円近いFIA燃料じゃなく普通のハイオクでOK。ということで最有力候補です。
ところがクリオというクルマ、乗ったことがない。そこでクリオの日本仕様である『ルーテシア』に試乗してみることにした。ちなみにクリオという車名は他のメーカーが(商標権を)持っているから使えないというだけで、まったく同じクルマです。さらにクリオを調べてみると、2021年はコンパクトカー激戦区である欧州市場でVWゴルフの20万5000台に肉薄する19万6000台も売っている。人気車ですね。
■燃費も走りも快適性もいいじゃないですか!
試乗車は『インテンス』という256万9000円のグレード。装備を見ると予想外に充実しており、アダプティブクルーズコントロールを含むADASや、LEDヘッドライト、リアカメラまで標準装備。スマートフォンと連携できる液晶画面が付いているので、ナビやオーディオは無くてもイケる(リアにBOSEのウーファーまで付く!)。同じ装備内容のノートと同等の価格だったりして。
ルノー・ルーテシア(5代目クリオ)。現行型の日本での発売は2020年11月
では乗ってみましょう。
カードキーをポケットに入れておくとルーテシアに近づいただけでロック解除。プッシュボタンでエンジン始動し、Dレンジをセレクトして走り出す。ミッションは7速デュアルクラッチ。日本車だとCVTが普通ながら、欧州の皆さんに聞くと「ぬるぬる滑る感覚に馴染めない」という。限りなくマニュアルに近い走行感覚のデュアルクラッチがいいんだと思う。
実際、流れのいい道を走っているとダイレクトなデュアルクラッチは気持ちいい。そもそも1300cc直噴ターボ4気筒エンジンがパワフルだったりして! 最高出力の131馬力こそリッター100馬力レベルながら、最大トルクがターボなし2400ccと同等の240Nmもある。アクセル踏むとグイグイ加速していく。ちなみにラリーカーもこのエンジンベース。180馬力/300Nmというスペックだ。
ルノールーテシア主要スペック
意外なことに、流れのいい道だと予想以上に燃費がいい! 東京から富士スピードウエイまで往復して18.1km/L。WLTCモード燃費を見たら市街地モードこそイマイチながら、高速道路は19.8km/hとけっこう走る。クルマを移動の道具として考えるのか趣味の相棒だと考えるのかでクルマの選択基準は変わってくると思うけれど、休日に乗るならやっぱし純エンジン車だな、と思う。
欧州車のため、足回りは日本車だとスポーツモデルのような設定。同じプラットフォーム使うノートとは乗り味がまったく違うほど。真っ直ぐな道を走っていてもスポーティながら、曲がった道に行くと気持ちよ~く曲がってくれて楽しい。それでいて石畳の多いフランスのクルマとあり、乗り心地だって悪くない。ブレーキは日本車の感覚だと踏みすぎになるほどカチっとしてます。
快適性も良好。フランス車だからしてシートの座り心地についちゃハズレ無し。アダプティブクルコンを使えば、渋滞でCVTより頻繁に変速するディアルクラッチATだって気にならない。ラリー車のベースモデルの味見のつもりだったけれど、なかなかいいクルマです。
ということで真剣にクリオの購入を検討中だ。考えてみたら私の憧れのドライビングスタイルはルノー使いで知られる暴れん坊ジャン・ラニョッティ。モナコGPでペースカードライバーを担当した際、F1に追突して横転させたり、映画『TAXI』の影武者をやるなど、引退後も話題豊富でした。ルーテシアのラリー車でラニョッティに思いをはせながらラリージャパンを走れたら最高でしょうね!
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