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新型ホンダ・ステップワゴンの取捨選択とは

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新型ホンダ・ステップワゴンの取捨選択とは

フルモデルチェンジしたホンダの新型「ステップワゴン」のテールゲートには、5代目で採用された「わくわくゲート」が廃止された。なぜか? 実車を見た今尾直樹が考えた。

奇想天外な「わくわくゲート」

最良の選択かもしれない──新型メルセデス・ベンツC220d試乗記

先頃、スタイリングが公開されたホンダの新型ステップワゴンは、5代目の目玉機構である「わくわくゲート」を採用しなかった。独創のホンダらしかったのに……と、惜しむ声が世間にはあるらしい。

わくわくゲートは、上ヒンジでタテに開くドアのなかに、ヨコに開くサブ・ドアがあるという、世にも複雑なリア・ゲートのことだ。現行5代目ステップワゴンの開発陣が、とあるショッピング・モールの駐車場で、後ろの壁との距離が狭くてリア・ゲートが開けられないミニバン・ユーザーや、高速道路のサービス・エリアで、3列目シートにお孫さんが乗り込むのを、クルマの外で待つ、おじいちゃん、おばあちゃんの姿を目撃したことから生まれたという。

リアにサブ・ドアがあれば、小さな荷物の出し入れや、ひとの乗り降りにも使えて、狭い駐車場で、あ、リア・ゲートが開かないではないか。仕方がない。ちょっと前に出そう。というような面倒が解消され、おじいちゃん、おばあちゃんが、外で、あー、暑い、もしくは、おー、寒い、と我慢を強いられることもなくなる。ホンダのミニバンはより使い勝手がよくなる!

そう考えた開発スタッフは、奇想天外なこのアイディアを実現するため、知恵を絞って安全性をクリアし、見事に世界初のサブ・ドア付きリア・ゲートの量産化に成功した。

歴代ステップワゴンのユニーク装備

それでも、売れなかった。♪風のなかのスバル~。

新型ステップワゴンのプロジェクトXは、競合に押されている現状を改善し、ホンダの国内営業の柱として育てていくことにあった。

開発責任者の蟻坂篤史氏は、現行(5代目)/歴代ステップワゴンのPDCAによって、「若干、プロダクト・アウトの傾向があった」という反省の弁を、昨年末に都内で開かれた事前説明会で述べている。

「PDCA」とは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act/Action(改善)の4段階を繰り返すことで継続的に改善する手法を、「プロダクト・アウト(product out)」とは、つくり手がいいと思ったものをつくるという考え方を、それぞれ意味するマーケティング用語である。老婆心ながら。って、筆者が知らなかったのですけれど。

プロダクト・アウトの対義語はマーケット・インで、顧客が望むものをつくる、という考え方だ。してみると、一概にはいえないにしても、トヨタはマーケット・イン、ホンダはプロダクト・アウトの会社だといえるだろう。

そのホンダのエンジニアが、「ユニーク装備に注力した反面、ミニバン基本価値が損なわれていた」と、PDCAで自己評価を下し、歴代ステップワゴンのユニーク装備の具体例として、わくわくゲートのほかに「フローリングフロア」「障子ルーフ」「ターボエンジン」等をあげたのだから、ホンダの危機感たるや、いかばかり。このままでは、オデッセイ同様、ステップワゴンの次期型の開発もままならなくなるかもしれない。

いずれの装備もホンダならではだった。しかし、売れなかった。♪風のなかのスバル~。

“素敵な暮らし”の定義

新型ステップワゴンのターゲット・ユーザーは、30~40代の子育て家族で、年収400~800万円とされた。彼らの特徴は、「小さい頃からミニバンがあって、ミニバンに慣れ親しんだ、ミニバン・ネイティブ」である、と蟻坂さんは定義している。

彼らはミニバンを「家族と一緒にいつでも・どこへでも、あらゆる用途に気兼ねなく使え、家族の幸せを表現するクルマ」、「自分と家族の様々な目的に対応でき、生活をより豊かにできるアイテム」だと考えている。ここで、“クルマ”を“アイテム”に置き換えていることに、われわれは注目しなければならない。

そして、新型ステップワゴンで掲げられた開発グランド・コンセプトの“素敵な暮らし”の中身について、われわれはいま一度検討する必要がある。

ミニバン・ネイティブのひとたちというのはおそらく、筆者の勝手な想像ですけれど、わくわくゲートなんてなくても、ミニバンのおかげで幸せな幼少期を送ったのだ。ショッピング・モールに家族で行って、リアのゲートから買ったものを積み込む際、あ、ゲートを開けるスペースがない、といってブツクサいいながら父親がクルマをちょっと前に出す。それを母親が、もうちょっと前、もうちょっと、とかいいながら後ろを見ている。もちろん母親がドライバーのケースもあるだろうし、子どもが見守っていたこともあるだろう。

あるいは、高速のサービス・エリアで、孫たちが乗り込むのをクルマの外で待っているおじいちゃん、おばあちゃんは、「寒っ」とかいいながら、孫たちが元気に3列目に着席する姿を見て喜んでいたのではあるまいか。

もしかしたら、わくわくゲートは、家族にとって、じつは楽しい時間をパスしてしまう装置であったのかもしれない。

もちろん、リア・ゲートの真ん中あたりにピラーを必要とするわくわくゲートは、いかにピラーの位置と形状を工夫しても、ピラーが必要なことに変わりはないから、後方視界が妨げられるし、後ろから見たときに冷蔵庫みたいでパッとしない、というようなことも、これまた筆者の想像ですけれど、あったかもしれない。

そもそも、ミニバンの購入意向者がわくわくゲートにたどり着く前に、スタイリングの面でトヨタ・ノア/ヴォクシーと日産セレナに負けていた。ミニバン・マーケットの主役は、いわゆるマイルド・ヤンキーと呼ばれるマインドの若者たちであり、彼らが求めているのは“オラオラ・デザイン”であって、冷蔵庫ではない。クルマが好きなわけでもない。必要だから買う、“素敵な暮らし”を実現するためのアイテムなのである。

わくわくゲートが廃止されたことを独創のホンダの終わりの始まりだ、と嘆いている人々に筆者は問いたい。

いま、子育て期の30~40代のミニバン・ネイティブが想い描く“素敵な暮らし”の中身をあなたはどう考えるのか? と。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)、Honda

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みんなのコメント

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  • そうですか。わたしはそれが良くて現行車を契約しました。
  • 現行型ユーザーです。
    確かに左右非対称のデザインはあまり好みではないです。
    しかし使ってみると非常に便利。
    MC後で復活ORオプションで選択出来る様になれば・・・。
    わくわくゲート搭載でリア扉中央の支柱が視界の邪魔になる問題は
    デジタルインナーミラーを活用すれば良いので。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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