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日産が開発中の全固体電池の進捗状況を公表。実用化のメドはいつか

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日産が開発中の全固体電池の進捗状況を公表。実用化のメドはいつか

 日産自動車は4月8日、全固体電池の積層ラミネートセルの試作設備を公開するとともに主要技術の一部を披露した。

 全固体電池=ソリッドステート・バッテリー(以下SSB)は世界中で研究開発が続けられており、自動車メーカー、電池メーカー、化学品メーカー、電池関連のスタートアップ(新興企業)、さらには大学や政府系の研究機関なども参画しているが、その開発過程はめったに披露されない。

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 そんな中で日産は「未解決の課題がある」ことも含めて、実用化の見通しを語った。

 日産は2028年度でのSSB実用化を目指している。SSBの形状は、リーフなどの電動車に現在使われている薄型のラミネートセルになるという。LiB(リチウムイオン2次電池)の形状は円筒形、角形、ラミネート型の3タイプに大別される。

 実は、形状の決定は「どのように車載するか」、「電池をどのように使うか」という部分に大きくかかわるため、非常に重要だ。LiBは内部で正極(+)と負極(-)の間をイオンが行き来する。活動が活発になると電池内部の温度が上昇し、極材がわずかに膨らむ。

 この「膨らみ」を許容する設計が電池には求められる。円筒形または角形の場合は、セル外観は膨らまず、内部で膨らみが起きる。それに影響されないよう、あらかじめ外形寸法が設計されている。

 日産のラミネート型は、形状そのものがわずかに膨らむが、ラミネートを納める電池パックは、その分も見込んだ設計になっている。また、ラミネート型は電気を取り出すタブを大きくできるメリットがあるほか、極材と電解質が平らに配置されるため熱発生が偏らない点でも有利。

 日産はリーフ+で27枚重ねのモジュールを実用化した。ラミネート型の体積変化を見込みながら冷却も十分に行えるモジュール設計について10年の経験を積んだ結果だ。

 SSBは温度耐性が高いため、さらに電池をぎっしり積むことができる。温度耐性が高いという点は、急速充電に向いている特質にもなる。

 それと、SSBのメリットは、液体電解質(電解液)を使わず粒子を固めた電解質を使うため、極材として使う活物質の選択肢が広がる。日産は硫化物系固体電解質を使用する予定で、課題は「硫化水素ガスの発生を防ぐこと」だという。一方、極材に使う活物質については明らかにしていない。

 日産は米・UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)およびNASA(米航空宇宙局)と連携しAI(人工知能)を使った極材開発を行っている、と説明していた。

 電解液を使う場合と違ってSSBは、固体電解質同士または電解質と極材との界面(接する部分)での反応が複雑になる。液体の中に極材を沈める現在のLiBは、液体が浸透することで多くの接触面積を得られるが、SSBではこの「イオンの通り道」を確保する必要がある。

 とはいえ、電解液を使わないことがSSBのメリットであり、日産は負極で発生する尖った金属リチウムの析出(デンドライト)の発生が少ないなどの特徴を持った極材および電解質への添加物をNASAと共同研究している。

 日産は2028年度の市販車搭載を目指しているが、まだ「解決すべき課題は多い」という。従来、SSBについては一般メディアが「明日にでも実用化できる」ような報道を行い、その性能についても過大評価されてきた。今回の日産の発表は、SSBの現状を正確に伝えたといえる。

 実際、現時点では車載用SSBは実用化されていない。電池ベンチャーが「開発に成功した」と発表した案件は、回路内に使う極小容量のものである。

 今後の日産のSSB開発スケジュールを予想すると、2028年度での実用化なら、実使用での安全性や充放電特性を確認し、市販仕様への詰めを行う実証実験に最低でも2年はかかる。従来は5年といわれたが、シミュレーション精度が向上した現在なら3年を切ることも不可能ではない。

 ただし、最終仕様を詰めながら生産設備を整え、量産試作を行うという作業も必要だ。

 実証実験とほぼ並行でこれらのプロセスを行えたとしても、開発完了から市販までは3年を見る必要がある。

 ということは、遅くとも2025年度内には最初に搭載するSSBの開発が終わっていなければならない。あと3年で固体電解質と相性のいい活物質を見定め、ラミネートセルでの動作を確認し、実車に搭載して試験をすみやかにに開始する、というスピード感が求められる。

 車載状態での利用を考えると、たとえば欧州で登場し始めた500V級以上の高電圧による急速充電との相性や、その充電を可能にするための充電制御プログラムの開発も必要だ。

 それと、電池にとって重要な温度管理の問題がある。日産は初期型リーフの電池について、電池セルがどの程度劣化しているかのデータを蓄積している。その結果、電池の劣化は「セル全体の一部」で発生していることが確認された。どのセルが劣化するかの検証はいままさに行われている。

 劣化セルとセル温度の関係、温度上昇を防ぐための電池冷却技術などLiBで得られた知見はSSBにも生かされるだろう。

 最後の問題が製造コストだ。LiBでもコストダウンの工夫は必須だが、SSBの場合はそれ以上の努力が必要になるかもしれない。

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みんなのコメント

3件
  • 「日産は初期型リーフの電池について、電池セルがどの程度劣化しているかのデータを蓄積している。」このアドバンテージは大きい。 後発組はこれからだから。 リーフの2010年型から2年後に充放電プログラムを改良したときのアナウンスも、おっかなびっくりから市場データの取得で自信がついてきたと言っていた。
    一昨年バッテリーを新品に交換した時に日産に取り外したバッテリーの譲渡契約にサインした。
    人柱の一人としては、日本の未来が掛かるEVのデータに寄与できたのかもしれない。
    この12年の日産の運用実績は事故もなく、素晴らしい成功と言えるだろう。そのノウハウで全固体電池のロードマップ通りの上市に期待します。
  • バッテリーが劣化したら交換できるといいですね。
    もちろん数十万程度で。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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