オートマチックでスーパースポーツバイクを……ヤマハの初代「TMAX」(2001年新登場)が目指したものは、いまも不変です。見た目はスクーター、いわゆる「ビグスク」です。しかし中身が違います。
一般的なスクーターはエンジン、ミッション、スイングアームが一体になった、駆動系全体を凝縮したユニットスイング方式を採用しているため、シート下に荷物スペース、広いフットスペースを造りやすい反面、重たいものが後方に集中するので重量バランスやバネ下重量の増加など、スポーツバイクに仕立てるにはネガもあります。
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それが「TMAX」では、スポーツバイク同様のレイアウトでエンジン、CVTミッションをフレームに搭載、長いスイングアームで後輪を支持しています。これらにより走りのポテンシャルが爆上がりし、追い越し車線を悠々と走る2気筒エンジンのスムーズさとパワーが、スクーター大好きなヨーロッパのライダーを魅了。ヤマハの稼ぎ頭になる国もあるほどです。
2008年からは、アルミ鋳造フレームを採用することで「TMAX」の商品性はさらに高まります。ご覧のとおり、エンジンもフレームも外観からは見えません。しかし「TMAX」にとっては見えないソコが魂であり、現行モデルでもしっかり受け継がれています。
ということで、「TMAX560 TECH MAX(テックマックス)」(2023年型)の紹介です。直列2気筒エンジンとCVTミッションはライダーの足元からお尻の下にかけてフレームに搭載されています。あたかも水平対向エンジンのように、クランクには後方に突き出したピストンとコンロッドのような動きをするカウンターバランサーを備えるのも「TMAX」の特徴です。また、静粛性に優れたベルトドライブも継続採用されています。
テックマックスの特長は装備の充実です。スイッチ操作で高さ調整可能な電動スクリーン、グリップヒーター、シートヒーター、クルーズコントロール、そして圧側減衰圧が調整可能なリアサスペンションなどがベースモデル「TMAX560」との違いで、価格(消費税10%込み)は160万500円也。
排気量561ccのバイクとしては高価に感じますが、大型ツアラー同等の装備と唯一無ニの存在であることを考えると納得かもしれません。
現行モデルのトピックスは7インチのTFTカラーモニターと、そのインターフェイスの良さでしょう。効率的に配置されたスイッチ類、なかでもジョイスティックタイプのスイッチを使い多くの設定をこなすことが出来ます。1日乗っていたらかなり使いこなせるようになりました。
しかも夜間、透過照明のついたスイッチ類がミスタッチを確実に減らしてくれるのです。これらの装備は「TMAX」を求める人のライフスタイルを想像すれば明らかで、彼らが乗る車にも大型のTFTモニターがダッシュパネルに備わり、スマホと連動などは当たりまえ、そんなライフスタイルを考慮した装備は、さすが世界の「TMAX」です。
跨がると、先端を細身に絞り込んだシート形状により足つき感は上々です。数値的には800mmなので低くはなっていませんが、跨がった印象は確実に良くなっています。
価格を考えるとヒルホールドコントロールや、IMUを搭載して停止時、傾斜があれば自動でブレーキを保持してくれるような仕掛けがあるとさらに嬉しいし、あるいは、ゴツめのレバーで操作するパーキングブレーキが電動スイッチで“シュンッ”と掛かれば完璧でしょう。
「MT-09」などと同様に「スピン・フォージド」という製法で造られたホイールを採用しています。アルミ鋳造でありながら回転塑性加工により、薄く、強度と靱性を持つ美しいホイールです。前後15インチでその多くがブレーキディスクに隠れますが、スポーツ性アピールに抜かりなし。
スムーズなエンジンの吹き上がりと厚いトルクを感じさせるエンジン、それはアクセルを捻るだけのATバイクでありながら、乗り手との一体感を高めてくれるもの。市街地では一開けでダッシュし素早く巡航速度へ。高速道路でも本線への加速は快感レベル。追い越し加速のダッシュも「TMAX」オーナーに許される至福の時間です。
そのハンドリングはスーパースポーツと言うよりスポーツツアラー寄りに感じましたが、遠くのワインディングを走りに行きたくなる仕立てです。
カーブではラインをトレースしやすい安定感、狙ったラインを外さない信頼感に満ち、前後のバランス良く作動するブレーキ力と合わせて全体のチューニングが見事。贅沢を言えば、もっとサスペンションの動きに上質感を望みたいところ。
シートに装備された3段階の調整式バックレスト(腰当て)は、ライダーの着座位置を正しく整えるアイテムです。快適パーツかと思ったら、じつはこれがハンドリングを左右するライディングパーツでした。そんなところも「TMAX」です。
電動スクリーンは上方にセットするとやや背中を押される巻き込みがありますが、これはライダーをゲリラ豪雨の雨粒から護る盾であり、パッセンジャーへの風を低減するもの。この装備は後部シートの方への思いやりだと理解しましょう。
今回、ガーミンのアプリを使ってTFTモニターをナビ画面にして走るコトは出来ませんでしたが、いまやそうしたスマホ連動機能もモビリティの当たり前。世界で1人勝ちな「TMAX」シリーズの最新版、その存在をまたもや強く感じた試乗でした。
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みんなのコメント
どんな味付けのミッションになってるのかな。
最低回転数を一定値に維持するモードがあると楽しいと思うんだけどなぁ。