内燃エンジン車から電気自動車への分水嶺
執筆:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
【画像】新フラグシップSUV BMW iX 欧州で競合となる純EVモデルと比較 全133枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
筆者はBMW iXを運転できる日を待ちわびていた。オリジナルが発表されたのは、2018年のパリ・モーターショー。ビジョン iネクストというコンセプトカーだった。
iXは、BMWとしてはi3とiX3に続く3番目の純EV。個性的なデザインをまとう大型SUVの導入が、内燃エンジン車から電気自動車へ移行する、いわゆる分水嶺になると考えているようだ。
この開発教訓を踏まえて、まもなく登場する3シリーズ・クラスのi4や、5シリーズと7シリーズに相当する純EVモデルが展開される。BMWの節目を迎えることになる。
iXは、新次元のリラックスしたドライビング体験を提供することが目指されている。同時に、330psを発揮するxドライブ40から、600馬力以上と噂されるM 60に至るまで、BMWとして動力性能の幅も重視されている。
モデル名はiXで、数字が続かないことに違和感を覚えるかもしれない。これはBMWが純EVに設定したサブブランド、iのSUVとして、フラッグシップ・モデルに据えられることを意味するという。
コンセプトカーのビジョン iネクストがまとっていた前衛的なボディラインは、量産化に伴い大人しくなった印象を受ける。それでも、過去に例を見ないほど新鮮なBMWであることは、否定できない。
全体的なプロポーションは、SUVのX5に近い。ボディ表面は遥かに滑らかに仕上げられ、凹凸は最小限。エッジも丸みを帯びている。
未来的デザインにクラス最高水準のCd値
BMWの顔ともいえるキドニーグリルは巨大だが、パネル状になっており、空気を吸い込むことはなくなった。多くのセンサーが背後に埋め込まれ、運転支援システムの目のような役割を担う。
横にスリムなヘッドライトは最新式のLED。オプションでレーザーライトを指定することもできる。BMWのSUVとしては初めて、ドアのガラス部分はフレームレスに。ドアハンドルも電子システムを採用し、出っ張りはなくなっている。
ポリゴンのように面が切り替わるフェンダーラインは、コンセプトカーから受け継がれた処理。印象的なサイドビューを作る要素の1つだ。
リア周りは、ボディサイドまで回り込んだテールゲートが特徴。ワイドな見た目を強調するため、LEDのテールライトがゲート幅一杯に伸びている。未来的といって良い。
試乗車が履いていたホイールは22インチ。スポーティな275/40という扁平タイヤが組まれ、凛々しい佇まいを生んでいる。銘柄はブリヂストン・アレンザだった。
iXのボディサイスは全長4953mm、全幅1967mm、全高1695mmというもの。現行のX5と比較すると15mm長く、37mm狭く、53mm低い。ホイールベースは28mm長い。
滑らかなボディデザインに加えて、ボンネットは固定式で隙間はタイト。アンダーボディもフラットで、ホイールも空力特性に配慮されている。その結果、標準の20インチ・ホイールを履くiXの場合、空気抵抗を示すCd値は0.25でクラス最高水準だという。
システム総合で523psと77.8kg-m
iXの骨格をなすのはCLARプラットフォームの改良版。軽量なインナーボディ、カーボンファイバー・ケージ構造と組み合わされている。コンポジット素材のボディパネルを支え、従来のBMWより高剛性を実現させた。
駆動用モーターは前後に1基づつ搭載し、固定レシオのトランスミッションを介して四輪を駆動。エフィシエンシーとスポーツという2段階のドライブモードが用意され、前後の駆動力の割合を変更できる。
試乗車のグレードはxドライブ50で、車重は2510kg。ガソリンエンジンを搭載するX5 xドライブ40iと比べると、475kgも重い。
フロントモーターは最高出力257ps、最大トルク37.1kg-mを発揮し、リアモーターは313psと40.7kg-mで少し強力。システム総合での最高出力は523ps、最大トルクは77.8kg-mとなる。
EVシステムは電圧380Vで動作する。駆動用リチウムイオン・バッテリーの容量は105.2kWhと巨大。フロアとセンタートンネル内に分割して組み込まれ、航続距離は548kmから630kmを実現した。
試乗では、普通に運転して480km以上は余裕で走れることを確かめている。
インテリアデザインも、新しい方向性が展開されている。運転席のドアを開くと、サイドシルやピラーなど、インナーボディを構成する黒のカーボン素地が透けて見える。軽量化に努めたプロセスを強調するように。
その奥へ目を向けると、6角形のステアリングホイールが目立つ。メーターパネルとインフォテインメント・システム用のモニターは緩くカーブを描く一体型で、ダッシュボード上に浮くように取り付けられている。
広い車内で快適性と洗練性に重点
インフォテインメント・システムはタッチモニターのほか、音声認識機能と従来的なロータリー・コントローラーでも操作できる。試乗車の場合、コントローラーはクリスタルガラス製だった。オプションでジェスチャー・コントロールにも対応する。
iドライブ・システムは第8世代の最新バージョン。iXが初採用となった。メニューを掘り下げる必要がなくなった、常時表示されるエアコン用メニューが特長の1つだ。
車内空間はX5よりホイールベースが長く、リアシート側も広々。フロアはフラットだが持ち上げられており、CLARプラットフォームを採用する従来のBMWモデルより、足の位置は上に来る。ボディは大柄だが、3列シートは選べない。
荷室容量は充電システムなどに空間が食われ、500Lと平均以下。アウディeトロンより160L、X5より150Lほど小さい。リアシートを折り畳めば1750Lへ拡大できる。
インテリアには、リサイクル素材を積極的に採用。シートカバーは、ポリエステルから作られたマイクロファイバー生地が用いられている。試乗車には透過率を変更できるオプションの巨大なグラスルーフが装備され、車内はとても明るかった。
iXのドライビング体験は、想像通りX5と明確に異なる。加えて、他ブランドの純EV SUVとも違うものだった。
重点が置かれているのは、快適性と洗練性。どちらもiXの強みといえる水準にある。パフォーマンス重視のiXも前述の通り控えているが、xドライブ50の優れたバランスは、より多くのユーザーにフィットするだろう。
この続きは後編にて。
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