アウディ「A4」のハイパフォーマンス・バージョン「S4」のアヴァントに、今尾直樹が試乗した。
心が踊るアヴァント
ビートル復活の可能性は大! フォルクスワーゲン・デザインの変わる部分、変わらない部分とは?
野太くて乾いたエグゾースト・ノートを箱根山中に轟かせながらアウディ「S4アヴァント」を駆っていると、フォルクスワーゲンの「ゴルフR」みたいだ……と、思った。全長4750mmもあるワゴンなのに、それより500mm近く、正確には475mm、ということはちょうど1割短くて、200kgも軽いスーパー・ホットハッチみたいに軽快で、なによりサウンドに心が躍る。いいクルマだなぁ~と思う。
アウディでいえば、「S3」みたい、ということになるけれど、筆者の記憶のなかのS3よりもS4は排気音がもうちょっとワイルドで、ゴルフRに近いように思う。あくまで記憶のなかの印象に過ぎないけれど。
ご存じのように、アウディの“S”は、スタンダードの“A”のスポーツ版で、パワーと価格はAのおよそ2倍、という高性能モデルである。その上に“RS”、ということは「レーシング・スポーツ」をあらわす超高性能モデルが存在し、こちらはAのおよそ3倍というモンスターだ。
具体的に見てみよう。A4 アヴァントの日本市場のベーシック・モデルは1.4リッター直列4気筒ガソリンターボを搭載する150psのモデルで、485万円。これをスタンダードとすると、S4 アヴァントは3.0リッターV型6気筒ガソリンターボで、354psの891万円。RS4は2.9リッターV型6気筒ターボで、450psを絞り出して、1218万円。う~む。RS4の場合、パワーは3倍だけど、価格は3倍しないから、グッとお買い得に思えてくる……。
差はあれど、筆者がここで訴えたいのは、アウディS4アヴァントのすばらしさである。SUVシフトのいま、スポーツ・ワゴンを選ぼうという趣味人はさほど多くないかもしれない。そして、そういう趣味人も、どうせスポーツ・ワゴンを選ぶのだったら、メルセデスAMGの「C63ステーションワゴン」、476psの1296万円にしよう、とか思われるかもしれない。あ、つい、メルセデスAMGとか書いてしまって、話をややこしくしてしまった。
C63ステーションワゴンには4マチックがないので、忘れていただきたい。C43 4マチック・ステーションワゴン、390psで1006万円というのは? と、つい書いてしまったが、これも忘れていただきたい。筆者が試乗していないからだけれど、ちょっと気になる存在です。
ナチュラルで健康的なスポーティさ
話をS4アヴァントに絞る。実は現行RS4アヴァントにも乗ったことがないのですけれど、RS4アヴァントは2.9リッターV型6気筒ガソリンターボで、450ps、最高速280km/h、0~100km/h加速4.1秒というモンスターである。でありながら、A4ベースだから、日常使うのに適度なサイズといってよい。だから、ついスポーツ・ワゴンというとS4ではなくてRS4をチョイスすることになるのではあるまいか。
もちろん、RS4にはRS4の、“ステロイドの打ちすぎ”という魅力はある。でも、S4のナチュラルで健康的なスポーティさというのも、たいへん好ましい。
全長4750×全幅1840×全高1410mm、ホイールベース2825mmの、いまも筆者は街で現行A4を見かけるとA6と間違えちゃうようなルックスの、ちょっと前だったらアッパーミドル・クラスのワゴンが、ゴルフ・クラスの軽快さをナチュラルに持っている秘密は、新開発の3.0リッターV型6気筒ガソリンターボにある、と筆者は思う。
ボア×ストローク=84.5×89mmのロング・ストローク型で、90度のVバンク角を持つところは先代S4用の3.0リッターV6と同じながら、「Bサイクル」と呼ぶ、アウディ独自の燃焼方式を採用している。ミラー・サイクルの一種のBサイクルは高出力と低燃費を狙ったもので、可変バルブ・タイミング機構と11.2という高めの圧縮比を組み合わせ、先代S4で用いられていたスーパーチャージャーではなくて、ターボチャージャーをVバンクのあいだにおさめている。排気経路からタービンに至る距離を縮めることで、ターボのレスポンスを向上させているのだ。
でもって、先代よりもプラス21psの最高出力354ps、最大トルクは60Nmプラスの500Nmを発揮する。しかも、500Nmもの最大トルクは1370rpmの低回転から4500rpmまでの幅広い範囲で生み出す。車重1710kgのS4アヴァントを、ゴルフRのごとく軽快に感じさせるのは、この大トルクによるものだろう。
トルクコンバーター型オートマティックの「ティプトロニック」は、先代S4の7速から8速へと、ギアが1枚増えた。その分、低速ギアは加速重視の設定になっていて、これも軽快さに貢献している。7速、8速の高速ギアは燃費を稼ぐために高めにしてある。8速トップでの100km/h巡航は1500rpm程度に過ぎず、このときの室内はものすごく静かである。
55km/h以上での走行時にドライバーがアクセル・ペダルから足を離すと、自動的にクラッチが切り離されてニュートラル状態になる「フリーホイーリングモード」も備えている。
乗り心地は、走行モードシステム「アウディドライブセレクト」のAUTOモードを選んでいれば、快適だ。試乗車のタイヤは、標準の245/40の18インチではなくて、オプションの19インチを履いているのに、ゴツゴツ感もなければ、バネ下が重い感じもない。245/35ZR19という超扁平のピレリPゼロが幻のごとくである。
オプションのレザー・パッケージが選ばれていたこともあって、肌触りのしっとりとしたファイン・ナッパ・レザーがシート表皮に使われていたりすることも上質感に大いにつながっている。ダッシュボードやセンター・コンソール周辺に使われたカーボンも、フラット・ボトムのステアリングホイールも、高級スポーツカーっぽい。ダイヤモンド・スティッチは、最近のベントレーを思わせもする。
エンジンをまわせば、ちょっと大きなゴルフRで、乗り心地の上質さは、ちょっと小さなベントレー。たぶん、フォルクスワーゲン・グループは、グループ全体でノウハウを共有しているのだと筆者は推察する。
快適性と野性味が同居
高速での直進安定性は、すばらしい。法律さえ許せば、トップ・スピードのまま突っ走れる。もちろん、法律が許さないから日本ではダメですけれど、高速スタビリティを誇る一方、山道ではオン・ザ・レール感覚で曲がる。
前55:後45という重量配分は、安定性とハンドリングの両立を図ってのことだろう。新エンジンの単体重量が14kg軽くなっていることも、フロントが重過ぎないことに貢献している。
クワトロ・システムの前後トルク配分は、通常40:60と、やや後輪駆動寄りで、前後アクスルのトラクションが優るほうに駆動力をより振り分けて推進力を確保する。コーナリング時に内輪に軽くブレーキをかけて曲がりやすくするトルク・ベクタリングを標準装備し、ドライバーにはそれとは感知できぬまま、素直に曲がっていく。
試乗車はオプションの「スポーツディファレンシャル」を装備していた。リア・ディファレンシャルの左右に設けられた多板クラッチが、走行状況に応じて左右後輪のトルクを制御する。リアの外輪を増速することでより曲がりやすくしている。
S4アヴァントは500Nmの3.0リッターV6ターボとこれら電子制御技術によって、軽快さを実現しているわけである。「ドライブセレクト」をダイナミック・モードに切り替えると、エグゾースト・ノートが一段大きくなり、ヴォオオオオオオオッと吠える。快適性と野生味が同居している。
ご存じの方はご存じのように、現行S4アヴァントは国内で2016年の秋に発表されたモデルで、メディアが取り上げるクルマとしての旬はとっくに過ぎている。現行5代目A4シリーズは昨年5月に本国でマイナーチェンジ を受けて、S4ともども、後期型に移行しているからなおさらである。
とはいえ、後期型の変更点はLEDのヘッドライトとか、コネクテッドだとか、あるいは多くのエンジンがマイルド・ハイブリッド化されたことなどであって、S4にマイルド・ハイブリッドのディーゼルがくわわったことはニュースだけれど、ガソリンの3リッターV6ターボにはとくに変更がない。完全無欠のワゴンだから当然である、と、筆者は思う。
とはいえ、S4アヴァントをゴルフRみたい、と表現してよかったのか? 筆者はもう3日も逡巡している。891万円のアウディS4アヴァントを584万900円のゴルフRみたいだと思った、というのではS4アヴァントを褒めたことにならないのではないか。2.0リッターの直列4気筒ターボ+4WDで、310ps、400Nmというスーパー・ホットハッチ! ゴルフRはお値打ちだ!! と主張しているに等しい。
筆者の結論としては、どっちもスゴイ、ということですけれど、S4アヴァントはボディが大きい分だけ、ゴルフRより、あるいはゴルフRヴァリアントよりも荷物が運べるに違いない。
ゴルフRヴァリアントの荷室は通常605リッターで、最大1620リッター。対するアウディS4アヴァンのそれは、通常505リッターで、最大1510リッター……あ、れ……、S4 アヴァントのほうが小さい⁉︎
おほん。ま、モノを運ぶためのワゴンではない、ということである、アウディS4は。それだけオシャレ物件なのだ。
それにしても、試乗した日はあいにくの小雨模様で、濡れた路面には白い花びらがいっぱい落ちていた。たぶん、ものすごく滑りやすかった。そんな路面でも、S4のクワトロ・システムはまるでドライ路面と変わらぬ安心感があった。
家族5人が乗れて、荷物も積める。雨の日も安心で、高速走行が得意で、速くてスポーティで、山道も楽しい。しかも、これ見よがしではない。アウディS4アヴァントは、もしかしてちょっと忘れられかけている、完全無欠のスポーツ・ワゴンである。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
そもそもプラットフォームの違いを知っての。
MQBとMLBすら知らないんじゃない笑