BMW X7 xDrive35d
BMW X7 xドライブ 35d
究極のアヴェンタドール「SVJ63 ロードスター」。細部に宿ったランボルギーニの哲学を詳らかにする! 【Playback GENROQ 2020】
色気を感じるハイエンドSUV
BMWラインナップ中、最上級SUVとなるX7がついに日本導入された。なにより驚くのは全長5m、全幅2m超えのボディサイズだが、BMWらしい走りのDNAはしっかりと宿っているのだろうか? 冬の気配が漂い始めた横浜で、その世界観を存分に味わってきた。
「X5とは一風異なるステータス性というか押しの強さがある」
ロールス・ロイスのパルテノングリルほどではないにせよ、BMW X7のキドニーグリルはインパクトに満ち溢れている。試乗する前は、こんなに大きなSUV(BMW的にはSAV、スポーツアクティビティビークル)なんて必要ないだろうなんて考えていたのだが、実車を目の前にして考えを改めることにした。X5とは一風異なるステータス性というか押しの強さがある。
ちなみに同じBMWグループのロールス・ロイスが造るカリナンとX7は全幅と全高がほぼ同じなのだが、中身はまったくの別物なのだという。ホントかな? でもそんなパーツレベルの話はどうでもいいことかもしれない。カリナンがド偉いクルマなのはもちろんだが、室内を覗き込むとX7もかなり凄いことになっている。今回試乗したX7は「デザイン・ピュア・エクセレンス」というプレミアムグレードだから、ということもあるのかもしれないが。
「2列目シートはショーファーとしてエグゼクティブを招くことができるレベル」
フロントマスクの巨大さが際立つX7だが、リヤボディにもたっぷりとした余裕が見て取れる。室内は3列シートで7人乗りが標準装備となるが、オプションで2列目コンフォートシートを選べば6人乗りになる。独立した2列目シートの間から3列目にアクセスできるようになるので、7人家族ではない限りこれは「お約束」の仕様となるはずだ。
X5でも3列シートがあるし、他の輸入SUVでも3列目は当然の装備になりつつあるが、大人がちゃんと使える広さを持ったモデルはそれほど多くはない。X5でギリギリ、X7なら堂々と「大人6人乗り」を謳えると思う。3列目シートを使用しても、リヤの荷室が最低限ではあるが確保されているのもいい。
一方の2列目は、これはショーファーとしてエグゼクティブを招くことができるレベルにある。試乗車にはオプション設定されている5ゾーンのエアコンやリヤシートエンターテイメントが付いており、車格に見合ったリヤシートの快適性が確保されていた。7シリーズのセダンに対するSAVという立ち位置を考えれば、このレベルの設えが当然のように求められるのである。
「2トントラック並の高さによりフロントウインドウ越しの景色は想像以上に広大だ」
「最前列」のドライバーズシートに腰かけてみると、ダッシュボードまわりの眺めは7とか8とか、数字の大きなBMWに共通するプレミアム感で満たされている。8シリーズに試乗したときには「ちょっと派手だなぁ」と感じたクリスタルガラスフィニッシュのシフトレバーも、車格に馴染んでいるように思う。
フロントウインドウ越しの景色は想像以上に広大だ。2トントラックと肩を並べる高さは、そのまま安心感につながるのだと確信できる。セダンは低さによってある程度のプライバシーが保たれるが、X7はその威厳によって周囲の視線を寄せ付けない。できるだけ広い道を走らなきゃ、といういつもは考えもしないことを念頭に置いて試乗を開始する。
ステアリング上にもセンターコンソールにも様々なスイッチが並んでいるが、各部の操作はここ10年くらいのBMWオーナーであれば直感的に行えるはずである。センタートンネルの幅が広いので、iドライブのコントローラーが若干遠く感じられるが、気になるのはそれくらいのものだろう。
「BMWモデルの中でも最高レベルの遮音が施されている」
最初に驚かされたのは、3.0リッター直6のディーゼルユニットが驚くほど静かなことと、あまりボディの大きさを感じないということだった。エンジンは、BMWの中でも最高レベルの遮音が施されているのだろう。それでも車重は2.4トンに収まっているので、見た目の大きさに対しては軽く感じられる。X5の100kg増しで収まっているといえば、雰囲気がつかめるだろうか。
X5と比べ室内は確実に広くて豪華。エアサスの乗り心地は容量がたっぷりとある感じで頼もしいが、決してふわふわとはしていない。だから割と道幅の狭い首都高速などで狙ったラインをトレースするのも容易だし、一般道で駐車車両を追い越すようなシチュエーションでも正確にコントロールできる。ドライブフィールがリニアだからこそ、車体が引き締まって感じられるのだろう。
ディーゼルユニットとの相性は文句なしで、低速域はもちろんだが高速域でもまったく不満はなかった。必要にして十分な動力性能がありながら、最新のWLTCモードで11.4km/リッターも走ってくれるのだから文句のつけようがない。
「走り、内装の設え、その存在感・・・まさにXシリーズの頂点に相応しい」
X7で街中から首都高まで普段使いのように試乗し、すっかり体に馴染んできたところで、敢えて狭い道に入ってみた。すると対向車がサッと避けてくれるのもありがたいのだが、Uターンする場合でも優秀なセンサーやカメラのおかげで首をぐるぐる回す必要もなかった。現代車は実寸以上に装備がモノを言うということなのだろう。
最新のBMWの試乗のシメはやはりADAS(先進運転支援システム)関係だろう。X7には当然のようにドライビング・アシスタント・プロフェッショナルが標準で装備されている。試乗した際の横浜ベイブリッジは朝の渋滞が始まりかけており、60km/h以下というハンズオフ・ドライブ(アシスト・プラス)の条件にぴったりだった。
ストップ&ゴーの渋滞を高みから見下ろしながら楽しむ「手放し」運転は、まだ自動運転へと進化する過程ではある。それでも今敢えて最新のBMWを手に入れたいと思うモチベーションにはなるだろう。
デビューしたばかりのX7だが、その完成度の高さは相当なレベルにあると言っていい。
REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
【SPECIFICATIONS】
BMW X7 xドライブ35d デザイン・ピュア・エクセレンス
ボディサイズ:全長5165 全幅2000 全高1835mm
ホイールベース:3105mm
車両重量:2440kg
エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2992cc
最高出力:195kW(265ps)/4000rpm
最大トルク:620Nm(63.2kgm)/2000-2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後5リンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/45R21
燃料消費率(WLTCモード):11.4km/L
車両本体価格:1229万円
※GENROQ 2020年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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