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F01型 BMW7シリーズは一見コンサバだが中身は革新的だった【ヒットの法則472】

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F01型 BMW7シリーズは一見コンサバだが中身は革新的だった【ヒットの法則472】

2008年、5代目F01型BMW7シリーズがデビューした。クリス・バングルの手による革新的なスタイルで話題となった4代目E65型からどう変わったのか。今回は国際試乗会の前に南フランスのテストコースで行われた先行試乗ドライブとワークショップの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

レクサスLSの登場で市場に変化が起こる中での進化
世界のラグジュアリーリムジンの市場は、長い間、ドイツの2大ブランドであるメルセデス・ベンツSクラスとBMW 7シリーズでほぼ独占されていた。もちろん、アウディA8が伸びてきたし、またジャガーやベントレーなどのブリテッシュ勢にもある程度の支持者はいたが、数の上ではそう大きなものではなかった。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

ところがアメリカで異変が起きた。レクサスだ。1989年に現れたトヨタの高級車ブランドであるレクサスLSは、既知の価値観を覆す「静けさ」で北米を中心に世界市場を席巻していった。昨年2007年のラグジュアリーリムジンの販売台数を見ると、メルセデス・ベンツSクラス:8万5000台、レクサスLS:7万4760台、BMW 7シリーズ:4万4400台、アウディA8:2万1300台となっている。

さて、これらリムジンの販売台数はアメリカの経済状況の悪化を受けて、今年2008年に入って伸び悩んでいる。こうした状況下で、BMWは7シリーズのフルモデルチェンジを行った。果たして、BMWは7シリーズに何を託しているのだろうか。

まずは、注目のデザインから話を始めよう。すでにご承知のように、旧7シリーズ(E65型)は、はっきり言って決して美しいとは言えない難解なデザインで市場にショックを与えた。しかし、この7シリーズは1977年にデビューした初代7シリーズ(E23型)、2代目(E32型)、そして3代目(E38型)と比較して、34万台ともっとも多く販売されたモデルでもある。それゆえに決して失敗作とは言えない。

こうした背景で登場したニュー7シリーズ(F01型)は、フロントに旧シリーズの面影を残すクルマとなっている。すなわち垂直に立ち上がった大きなキドニーグリルと、旧型を彷彿とさせるヘッドライトユニットを持っている。一方、批判が厳しく集中したリアエンドは大きく変化している。トランクの段付きは消え失せ、テールライトも厚みを増し、この部位はまるで日本車のような雰囲気を漂わせている。

またボディのプロフィールはプレスラインがドアハンドルの高さになり、また凹面と凸面を組み合わせた緊張感のあるものに変わっている。少なくともエクステリアデザインは、先代の名誉を挽回するものと思われる。

さて、今回の7シリーズでもっとも画期的な技術の一つが軽量化だ。それも適材適所に異なる素材を使ったコンセプトである。

まず軽量なアルミ材を比較的ストレスの少ないルーフ、ドア、そしてフェンダーやボンネットに使用する。ここですでに30kg以上の軽量化に成功している。続いて軽量スチール材を通常の骨格にあたる部分に、そして高張力鋼板はBピラーやサイドシルなどストレスが大きくかかる箇所に使用している。

さらにインテリアにも大きな変化がある。まずはトランスミッションのセレクトレバーは、タケノコのようにレバーが密集していたステリングコラムから、センターコンソールへと移動した。これは正しい。しかも操作は簡単で、間違ってリバースに入れるような失敗はなくなるだろう。

続く大きな変化はiDriveである。これまでスイッチの簡素化のシンボルのようであったコントロールダイヤルは小型化され、周辺には7個ものサブスイッチがレイアウトされている。開発担当によれば、日本を含む各国での実物を使った調査の結果、このシステムが選ばれたと説明された。しかしスイッチの簡素化という目標はどこへ行ってしまったのだろうか。

カーインフォテインメントに関しても、7シリーズは最高のものを用意している。まずは10.2インチという大きなモニターを用意した。インターネットへのアクセスが可能で、そうした時にこのモニターの有り難みを感じる。また道路速度標識確認システムやレーンキーピング、後方接近車ウォーニングなど、数々のドライバーアシストもオプションで用意される。

環境対策システムを満載、ハイブリッドは2010年登場か
この新しいボディに用意されるエンジンは、トップモデルの750iに4.4L V8ツインターボ、740iには3L直6ツインターボ、さらに730dには第3世代コモンレールディーゼルターボの3L直6の3種類だ。

またこれらのエンジンと組み合わされるトランスミッションは、すべて従来通りZF製電子制御6速オートマチックである。しかし、それは改良されており、シフトチェンジに要する時間は平均50%短縮された。

またニュー7シリーズにも環境対策システムである「エフィシエント・ダイナミクス」が搭載された。そのコアとなるシステムは、ブレーキエネルギー回生によるエネルギーマネージメントである。このシステムを通して十分な電力が溜まると、ジェネレーターはカットオフされて、加速時の負荷を軽減する。

また補機類におけるエネルギーの消費も抑えられている。たとえば燃料ポンプやステアリングサーボアシストのポンプは、効率アップのため細かく制御され、エアコンもオフの状態ではコンプレッサーがエンジンから切り離されて負荷を軽減している。さらに740iと730dにはアクティブ制御式のラジエターシャッターが設けられて、冷却気が不要な場合には積極的に閉じて空気抵抗を低減させる。

いまやビッグリムジンといえどもエコロジー的なアプローチなしには世の中の賛同を得られないのだ。ちなみにメルセデス・ベンツとの共同開発によるツーモードハイブリッドの7シリーズへの応用は早くても2010年以降だろう。

サルーンとして快適性とスポーツセダンとしての運動性能
BMWは7月初めのスタティスティックプレゼンテーションに続いて、夏休み直前の7月中旬に南仏にある自社のテストコースで、ダイナミックワークショップを開催した。まだテーピングが残されている20台ほどのプロトタイプを使ってのダイナミックデモンストレーションである。

最初に行われたのは今回の7シリーズ最大の売りである「ドライビング・ダイナミック・コントロール」の検証である。このシステムで「コンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツプラス」という4段階のステージをあらかじめ設定し、それを様々なコースで試すというものだ。

使われたテスト車両はすべてV8ツインターボを搭載した750iと750Liだったが、ダイナミック性能についての検証を前者で、そして主に乗り心地の検証を後者で行った。当然のことながら我々も自らステアリングを操って、技術講習における内容を体験することができた。

まず、高速レーンチェンジ、スラローム、そしてウエットハンドリングの3つのコースを750iで走るわけだが、すぐにはっきりわかったのは「コンフォート」と「スポーツプラス」の大きな差だけだった。一段階の設定の差はなかなか微妙である。

続いて750Liで同じコースに出て、「コンフォート」での検証を繰り返した。驚いたのはランフラットタイヤを装着しているにもかかわらず、小さな凸凹の多い路面でもほとんどショックが感じられず、よい乗り心地だったことだ。

また、ここではインテグラル・アクティブステアリングの効果も検証することができた。BMWによれば、コーナリング時に、フロントのアクティブステアリングとのネットワークにより、リアホイールを的確に動かし、クルマの挙動をスムーズにするということだ。同時に低速では逆位相の動きによって、回転直径は最大で70cmほど小さくなる。今回のテストでは、とくにロングホイールベース(+140mm)の750Liで、このシステムの効果を大いに実感した。

こうしたダイナミックワークショップで、新しい7シリーズの様々な顔が明らかになった。最大の成果はこのビッグサルーンは間違いなくゲスト接待用の送迎サルーンとして十分な快適性を提供すると同時に、パーソナルスポーツセダンとしての高い運動性能の2つを非常に高いレベルで持ち合わせていることがわかったことだ。実に奥行きの深いハイパーサルーンであると言える。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)



BMW 740i 主要諸元
●全長×全幅×全高:5072×1902×1479mm
●ホイールベース:3070mm
●車両重量:1935kg(EU)
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:326ps/5800rpm
●最大トルク:450Nm/1500-4500rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h
●0→100km/h加速:5.9秒
※欧州仕様

BMW 750Li 主要諸元
●全長×全幅×全高:5212×1902×1478mm
●ホイールベース:33210mm
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4395cc
●最高出力:407ps/5500-6400rpm
●最大トルク:600Nm/1750-4500rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h
●0→100km/h加速:5.2秒
※欧州仕様

BMW 730d 主要諸元
●全長×全幅×全高:5072×1902×1479mm
●ホイールベース:3070mm
●車両重量:1940kg(EU)
●エンジン:直6DOHCディーゼルターボ
●排気量:2993cc
●最高出力:245ps/4000rpm
●最大トルク:540Nm/1750-3000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●最高速:245km/h
●0→100km/h加速:7.2秒
※欧州仕様

[ アルバム : F01型BMW7シリーズ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • 確か、あまりヒットしていなかったと思う。Sクラスに負けた。
  • オーナーど似て鼻の穴が大きな
    あれ?鼻くそが見えるよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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