佐藤凛太郎が、2024年のマカオGPにTGM Grand Prixから参戦することになった。彼の父は、元F1ドライバーで2度のインディ500勝者、そして2001年のマカオGPを制した佐藤琢磨だ。
「(父の存在は)自分はプレッシャーには感じていません。確かに自分は佐藤琢磨の息子ですが、そこは気にせず、“自分は自分”と信じて頑張っています」
■カペタを見て憧れたマカオに挑戦……フォーミュラ・リージョナル日本王者の小川颯太「夢が現実になった」
そう語る佐藤。2005年生まれの彼は、FIAカート世界選手権での経験を経て今季から日本で4輪レースに本格デビュー。PONOS RACINGからFIA F4に参戦しており、ランキング8番手につけている。また、ホンダ・レーシングスクール鈴鹿(HRS)のフォーミュラクラスも受講しており、11月に行なわれるスカラシップ最終選考会に進む4名に選出。つまり、今後ホンダ育成ドライバーとしてレースを戦う可能性もある、期待のドライバーだ。
父の時代とは違い、今年のマカオGPはF3車両ではなくフォーミュラ・リージョナル車両(FIA F4車両とFIA F3車両の中間に位置付けられる)で争われるが、伝統のマカオでの“親子制覇”がかかった挑戦となる。佐藤は参戦に際して次のように語った。
「今回、すごく大きな機会を下さったTGMさんに感謝しています」
「もちろん、マカオは父が勝っていたので知っていましたが、カートに乗っている頃はまだ自分には関係ないものだと思っていました。そんな中でF4に参戦している今シーズンにお声かけいただき、びっくりしています。頑張って上位を目指したいです」
「ストリートコースは初めてなので楽しみな部分はありますが、当然ぶつけられないので、集中していきたいです」
現在F4に参戦する佐藤にとって、フォーミュラ・リージョナルはステップアップとなる。簡単な挑戦にならないことはチームも認識しているが、佐藤はカートの世界戦で培った経験を活かして結果を出したいと意気込んだ。
「僕はレースを始めたのが少し遅かったのですが、カートの世界戦に出るようになってから、レースのバトルという点が勉強になりました。今回のマカオも知っている方々がいるかもしれないので、彼らのドライビングを知っていることを活かして、前に行ければと思っています」
「F4からリージョナルは一回りクルマが大きくなり、パワーも違うので、最初は慣れるところから始まると思います。ただ、世界戦で鍛えられた新しいトラックへの対応という点も活かしつつ、シミュレータなどで引き続きトレーニングしていきます。もちろん勝ちを目指しますが、上位に入れるように頑張ります」
■アグレッシブさは父顔負け?
また、父である琢磨は『No Attack, No Chance(攻めなければチャンスはない)』を信条に、そのアグレッシブさを持ち味に世界の舞台で活躍してきた。今回の取材で興味深かったのは、息子である凛太郎にもその片鱗が感じられた点だ。
TGM Grand Prixの池田代表は佐藤を起用した理由について、「お父様の存在もなくはないですが、彼自身の速さに惹かれたというのが一番の大きな理由です」として、こう話していた。
「アグレッシブなんですよ、これが。言い方を悪く言えばちょっと危ないんですけど……(苦笑)。でも速いドライバーって、そういう要素を兼ね備えているんですよね。これは最初のテストをした時から見受けられましたね」
「最初から踏んでいけるという感覚、センサーは、全員が持っているものではありません。そこに光るものというか、原石を感じましたね」
佐藤は既に日本のフォーミュラ・リージョナル車両でのテストを済ませているが(マカオGPで使用される車両とは異なる)、どうやら富士スピードウェイでのテストではクラッシュがあったようだ。ただそのスピードは関係者から評価されているようで、それはHRSにおいても同様だ。
また佐藤本人へのインタビューの終盤に、「初めての市街地レースで、恐怖心はないのか」と尋ねたところ、彼は最近、アグレッシブに走ることにより怖さよりも“楽しさ”を覚えるようになったと明かした。
「昔は怖かったですが、最近は怖いのが分からなくて、楽しくなってきてしまって……(笑)」
「勝ちたいという気持ちもあってか、怖さは減ってきました。アグレッシブな運転を見ていると、楽しそうに思えてきて、やっていくうちに実際に楽しくなってきました」
日本を代表するレーシングドライバーの息子とあって、佐藤は今後も“2世ドライバー”として注目を浴びることは間違いないだろう。ただ「重圧に感じていない」と語るコメントの通り、彼は周囲の心配をよそにのびのびとレースを戦い、成長を続けていきそう……そんな予感もする。
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