■クルマについてる「謎の角(ツノ)」何のため?
クルマの屋根には、サメのヒレにも見えるような謎の突起物が装着されています。
この突起物となる角(ツノ)は、どのような役割を果たしているのでしょうか。
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謎のツノの正体は「シャークアンテナ/シャークフィンアンテナ」もしくは「ドルフィンアンテナ」と呼ばれているもので、ラジオを受信する機能を持っています。
実は、シャークフィンアンテナは電波周波数に応じたアンテナやブース(アンプ)・電源等を一元集約し、コンパクト化を実現した優れものです。
AM/FM、SXM(衛星ラジオ放送)、TELEMA(テレマティクスサービス)、DAB(1セグ)、GPS(地図ロケ用)アンテナが仕向け毎にシャークフィンアンテナひとつで受信できます。
かつてのクルマのアンテナといえば、ピラー付近に装着されている細くて伸縮可能な「ロッドアンテナ」が主流のものでした。
しかしロッドアンテナは不要時にはアンテナを引っ込める必要があったうえに、長いために洗車機や駐車場の天井に引っかかるなどトラブルもあったようです。
シャークフィンアンテナはそれに比べて取り回し性がよく、ロッドアンテナより低いため引っかかることがなく、収縮の手間も省けます。
このように、シャークフィンアンテナは性能・機能面で多くのメリットがあるようです。
シャークフィンアンテナがどのように優れているのか、スバル広報部の担当者は次のように話しています。
「シャークフィンアンテナは、空力の抵抗が小さいため、車体安定や/走行安定性、風切り音に優れています。
走行中に車体後方が左右にスライドするのを抑制する効果もあり、飛行機の垂直尾翼と同じような役割を果たしています。
また、ルーフに搭載されるので電波受信性が向上しています。
車内外で発生する電気的ノイズ、山間部やビル街など複雑に変化する電波環境下でも安定した受信が可能です。
とくに敷地の広大なアメリカやカナダでは、衛星ラジオ放送(SXM)が広く利用されており、その電波の受信部を別に組み込む必要があるため、ルーフ上へ搭載されるシャークフィンアンテナが使われています」
シャークフィンアンテナはロッドアンテナのように上げたり下げたり、曲げたりでの摩耗や、電動モータの寿命などの負荷もかからない為、耐久性にも有利とされています。
さらに、将来的にはアンテナの複合化が期待できるようです。
たとえば、実績のあるGPSや、携帯電話網を利用したテレマティクスサービス、車間通信及び路車間通信(V2X)を利用した運転支援等の装備が一般化した場合に、双方向で情報をやり取りするアンテナとしての役割を担うことを嘱望されています。
実際に、ラジオの受信以外の役割でシャークフィンアンテナが利用されているケースはあります。
なお日産「アリア」では、ラジオの受信用のアンテナのほか、もうひとつ衛星からのGPS信号の受信に利用するためのアンテナが取り付けられています。
ほかにも、以前のレクサス「IS」では、緊急時連絡に利用できる「G-LINK」の通信アンテナとしても利用されていたようです。
■かなり高性能な「ツノ」だけど…課題はあるらしい
シャークフィンアンテナは、クルマの中でも最新のアンテナとして流通しています。
現在主流となっているシャークフィンアンテナですが、これについてスバルの担当者は次のように話します。
「アメリカXM(=衛星ラジオ放送)アンテナ(⇒現在はSXMアンテナ)に対応するにはルーフ上へのアンテナ設置が必須であることからも、昨今ではシャークフィンアンテナが主流となっています。
スバルでは、2014年の初代『レヴォーグ』から採用し、その後ほとんどのスバル車で採用しています。
開発当初は、『ルーフにクツが乗っているみたいでカッコ悪い』など、デザイン面で難色を示されましたが、現在の状況を鑑みると市場では受け入れられているのだと思います」
機能面の高さからニーズが高く、現在市場で出回っているクルマの多くで採用されているシャークフィンアンテナですが、一方で課題点もあるようです。
前出のスバル担当者は、次のように述べています。
「ロッドアンテナに対しては、シャークフィンアンテナはコスト面では不利でコスト削減が課題です。
たとえば見た目で仕向けや対象車両がわかりにくいので、特別に識別シールを貼付し、仕分け管理が必要なため、その分開発コストがかかります」
他にも、車両ごとにルーフパネルの曲率が違うため、シール部を専用設計し、漏水や隙間対応も必要になっており、こうした開発面での改善にコストがかかることが懸念となっているようです。
また、汎用品の取り付けや、利用者が自分で交換するのにはリスクが伴います。
しかし、課題となる部分は残されているものの、性能やニーズを鑑みると、この先もシャークフィンアンテナが台頭していくと考えられるでしょう。
※ ※ ※
クルマについている謎のツノの正体は「シャークフィンアンテナ」で、内部構造は複雑になっており、安定した受信ができるようになっています。
空気の抵抗を小さくするメリットもあるほか、将来的にアンテナの複合化も期待されており、今後もより需要が高まっていくと考えられます。
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