現行モデルで魅力もあるのに販売にはつながらず……
機能や装備が優れていたり、価格が割安でも、売れ行きを伸ばせない車種がある。今回は5台をピックアップして紹介しよう。
【月販数十台のクルマも】売れない車種を販売し続ける理由とは?
■軽自動車なのにミッドシップスポーツ/ホンダS660
クルマ好きにはホンダS660が筆頭に挙げられるだろう。軽自動車でありながら、エンジンを座席の後部に搭載する本格的なミッドシップスポーツカーだ。重いエンジンがボディの中央にあるから、操舵に対する反応が機敏で良く曲がる。価格は約200万円に達するが、それだけの価値は十分にある。
従って発売直後は受注が伸びて納期が約10カ月まで遅延したが、今なら注文して2カ月ほどで納車される。生産台数が少ないために若干長いが、以前に比べると大幅に短縮された。1カ月の届け出台数は約250台だ。N-BOXは1カ月に約2万台だから(N-BOXスラッシュを含む)、S660はわずか1%少々になる。もう少し売れてもいいだろう。
■後輪駆動スポーツセダンで割安価格/トヨタ マークX
トヨタマークXはかつて高い人気を誇ったマークIIの後継車種だ。後輪駆動の4ドアセダンで、エンジンはV型6気筒の2.5リッターと3.5リッターを搭載する。今のV型6気筒にはハイブリッドが増えており、自然吸気のノーマルエンジンは貴重な存在になった。
ボディサイズは全長が4770mm、全幅が1795mmだから、後輪駆動のセダンでは比較的コンパクトだ。車両重量も1500kg前後に収まり、後輪駆動による優れた前後輪の重量配分と相まって峠道を軽快に運転できる。
しかも価格は250Gが291万6000円だから、V型6気筒エンジン搭載車では割安だ。今の1カ月当たりの売れ行きは300台前後だが、改良を加えればもう少し伸ばせる。
■輸入車でも貴重なV8エンジンのミドルスポーツ/レクサスRC F
最近は日本車、輸入車ともにV型8気筒エンジン搭載車が大幅に減った。レクサスの最上級車種になるLSも、V型6気筒3.5リッターのツインターボとハイブリッドを搭載する。ターボを装着すれば動力性能は高まるが、回転の上昇に伴って吹き上がりが鋭くなる官能性は、多気筒の大排気量エンジンに敵わない。
その意味で注目されるのがレクサスRC Fだ。全長が4705mm、全幅が1850mmのミドルサイズボディに、V型8気筒5Lエンジンを搭載する。ターボなどの過給器を装着せずに、最高出力は477馬力(7100rpm)、最大トルクは54kg-m(4800~5600rpm)を発生させる。
JC08モード燃費は8.2km/Lにとどまるが、高回転域へ引き寄せられるようなエンジンの回転感覚は、V型8気筒5リッターでなければ味わえない。
価格は標準仕様が982万4000円とあって、登録台数は少ない。それでも現時点でトヨタは新しいV8エンジンを開発していないから、生産終了になるのは時間の問題だ。買うなら今しかない。
■後席を含めて快適なコンパクトセダン/ホンダ グレイス
全長が4800mmを超えるLサイズセダンなら、車内は広くて当たり前だ。しかし5ナンバーサイズで、広くて快適なセダンは貴重だろう。そこに当てはまるのがホンダグレイスだ。プラットフォームはフィットと共通だから、空間効率も同程度だが、セダンでは注目の広さになる。
全長が4450mm、全幅は1695mmだから街中でも運転しやすく、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には握りコブシふたつ半の余裕がある。これがフィットと同じと聞けば「何だそんなモンか」と受け流すが、クラウンと同等となれば「そんなに広いの?」と感心される。
グレイスは頭上空間が狭めなのが欠点だが、走行性能に不満はない。乗り心地はフィットよりも快適で、5ナンバーセダンの中では優れた部類に入る。1カ月の登録台数は600台前後だから、よくいわれる「乗るといいクルマ」の代表だ。
■和風のコンパクトカー/日産キューブ
日産キューブは全長が4m以下のコンパクトカーだが、全高は1600mmを超えるから車内が広い。しかも内装は和風をモチーフにデザインされ、インパネなどは緩やかな曲線を描く。収納設備は少ないが、見栄えを重視した。
ガラスルーフにはSHOJI(障子)シェードが装着され、車内を柔らかい光で満たす。緊急自動ブレーキなどが備わらず、1カ月の登録台数は400台前後まで下がったが、いかにも日本的な小型車で、穏やかなリラックス感覚が漂う。
「心地好いから、ゆっくりと走り、時間をかけて目的地まで行きたい」と思わせる。キューブのような時代に合ったクルマを埋もれさせるから、今の日産はダメなのだ。
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