ジャガーもついにSUVのメーカーになった。他メーカーの後発SUV製品と同じく、2016年以来、ジャガーのSUV攻勢も成功を収めている。Fペイス、Iペイス、Eペイス。最近は都心で見かけるジャガーのほとんどがペイス系に見える。長年、セダンやスポーツカーだけで勝負してきた老舗メーカーにとって、つくづくSUVはゲームチェンジャーである。
XEはそんなニュートレンドとともに生きるジャガーサルーンの末っ子だ。デビューは15年。ポジション的にはフォード傘下時代にあったXタイプを引き継ぐが、XEはインドのタタ・モータース資本に変わった新世代ジャガーの縦置きエンジンプラットフォーム(車台)で構築される。欧州Dセグメント。ということは、BMW 3シリーズ級のジャガーサルーンである。
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登場からは5年経つが、20年モデルで内外装のフェイスリフトや装備のアップデイトが施され、モデルラインアップも見直された。今回試乗したのは2リッター4気筒ディーゼル+4WDのSEである。
XEの仲間はどちらかというと
オールバーチャルの計器盤を正面に置く運転席に乗り込む。8速ATのコントローラーはイグニッションオンとともにせり上がるダイヤル式から、ガングリップタイプの電気式セレクターに変わった。スポーツカーのFタイプと同じものである。
走り出してもXEはスポーティだ。腰から下の挙動がピターッとしている。19インチのピレッリから伝わる乗り心地はそこそこ硬い。荒れた舗装路だとけっこう揺すられる。乗り心地はむしろ後席のほうがよかった。とはいえ、XEの本筋はドライバーズカーである。直径37cmのステアリングホイールを握っていると、重心感覚は低く、“地ベタ感”が高い。
ジャガーのAWDシステムは後輪駆動を基本にオンデマンドで前輪にトルクを振り分け、最大50:50になる。四駆の重さは感じない。車重は1760kgあるが、動き出しからトルクのあるディーゼルのおかげで身のこなしは軽い。ボディは75%がアルミでできている。アルミモノコックのボディというのは、車重を軽く感じさせるメリットがある。サルーンというイギリス流の表現よりも、ズバリ、スポーツセダンと呼びたくなる乗り味だ。直近で試乗したジャガーはEペイスだが、XEはそっちの仲間ではない。Fタイプの血筋を感じさせるセダンである。
トルクフルでマナーもいい!
エンジンは兄弟ブランドのランドローバーにも広く使われているD180。180馬力のパワーと430Nmのトルクを発生する2リッター4気筒ターボディーゼルで、マナーのよさは欧州クリーンディーゼルのなかでも最上級である。
100km/h時のエンジン回転数は8速トップで1400rpm。パドルでシフトダウンしていくと、4速3500rpmまで回転を上げたところでちょっと音質が変わるかな、というくらい静かだ。
チカラもある。とくに町なかでは快速だ。トルクの立ち上がりが早いから、混んだ流れのなかでも行きたいときに行ける。生活加速が速い。そのかわり、高速道路では町なかほど目覚ましくない。いつまでもあると思うなディーゼルのトルク、である。
ドライブモードはノーマル、エコ、ダイナミックとあるが、最近のトレンドに則って、それほど極端に性格が変わることはない。高速巡航中にノーマルからダイナミックに変えるとギヤが勝手に落ちたり、排気音がうるさくなったりといった余計なサービスもない。ただ、ダイナミックを選ぶと、リヤシートの人にもバレてしまう。計器パネルだけでなく、リヤドアの間接照明の色まで赤くなるのだ。
SUVでは味わえないこと
これだけSUVが台頭してくると、逆にこういうセダンの魅力が浮き彫りになる。その大きな要素は“低さ”だと思う。屋根が低くて、目線が低い。新型XEで初めて走り出したとき、ピターッとした低さが新鮮で気持ちよかった。ジャガーXEを“着ている”ようなクルマとの一体感はSUVジャガーでは味わえない。こういうことを言ってわかってもらえる好きにこそ、セダンはまだ存在意義を放っていると思う。ランドローバーが満を持して出すセダン、なんて、あったらソソられるでしょ。
ジャガー XEは、BMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラスよりもスポーティである。比べるまでもなく、3シリーズやCクラスを選ぶ人はおそらく指名買いだろう。スポーティーな4ドアセダンといえばアルファ ロメオのジュリアが浮上するが、XEはあのちょいわるセダンより真面目でちゃんとしている。
ただ個人的には、XEに乗るならガソリンエンジンがいい。1リッター当たりの燃費がよく、燃料単価もハイオクより2割安いディーゼルはたしかに魅力だ。車両価格もガソリンのP250シリーズよりお買い得感がある。だが、ピターッと低いXEのスポーティキャラには抜けのいいガソリンエンジンのほうが合っていると思う。
<写真=ダン・アオキ/編集部>
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