コロナ禍や半導体不足に揺れた2021年の自動車業界。しかし専門家の間では今年発売された国産ニューモデルはどれも実力派揃いで、近年稀に見る「豊作」の1年だったと言われています。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)には日産ノートシリーズが輝きましたが、他にも見どころのあるニューモデルがたくさん生まれた2021年、COTY選考委員でもあるカルモマガジンのレギュラー執筆陣にそれぞれのベスト5をチョイスしてもらいました。この記事では岡崎五朗さんのベスト5をお届けします。
日本車は質的にも量的にも間違いなく世界の頂点に立ち始めた
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2021年は日本車の当たり年だった。ノートシリーズ、アウトランダー、GR86&BRZ、ランドクルーザー、MIRAI、シビック、ヴェゼルなど、世界に向けて「どうだ!」と言いたくなるような素晴らしい商品が次から次へと登場してきたのだ。ここに来て日本車は質的にも量的にも間違いなく世界の頂点に立ち始めている。
こんなふうに書くと、「日本車は前から世界一だったんじゃないの?」と思う人もいるだろう。たしかに信頼性、耐久性、燃費などは日本車の独壇場だった。しかし、直進安定性やコーナリング時の安心感、インテリアの質感などなど、数値では表せない領域は決して誉められるものではなかった。とくに2008年のリーマンショック後に企画開発されたクルマたちはなりふり構わぬコスト削減対策の犠牲になり、乗ってみるとガッカリさせられることが多かった。VWゴルフ(2013年)、ボルボXC60(2017年)、ボルボXC40(2018年)と、輸入車が立て続けに日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した背景には日本車の劣化があったというわけだ。
そんな状況からようやく抜け出してきた最新の日本車のなかから、僕が選んだベスト5を紹介していこう。
第5位「ホンダシビック」ゴルフと互角以上!トータル性能の高さに驚いた
第5位はホンダシビック。いやはや驚きましたよ。何に驚いたかというと、トータル性能の高さに。ハッチバックしかないとか、値段が高いとか、ハイブリッドやタイプRが用意されていないとか、いろいろ言われているけれど、実際に見て、触れて、走らせてみると、しみじみといいクルマであることが伝わってくる。
1.5Lターボエンジンやプラットフォーム(車体の基本骨格)は先代からのキャリーオーバーだが、どちらも大幅に改良が加えられ、より速く、より快適に、より気持ちよく、より自由自在なドライブフィールを実現している。質感を高めたインテリアを含め、同じく2021年にデビューした8代目ゴルフに勝るとも劣らない実力の持ち主になった。
ゴルフがモデル末期に差し掛かった頃に、ようやくゴルフに追いつくのがいままでの日本車のパターンだったが、発売された瞬間から同レベル、もしくは上に行っていると思わせることそのものが、日本車が第2ステージに入ったことをはっきりと物語っている。なお、2022年には待望のハイブリッドとタイプRが発売される予定だ。
第4位「スバルBRZ&GR86」より速く、より快適に、より扱いやすく。ポルシェ911のようなモデルチェンジ
第4位はスバルBRZ&GR86。先代のデビューから9年。生まれ変わったBRZ&86は、課題だったインテリアの質感が高められ、どこか垢抜けないイメージがあったエクステリアデザインにも改良の手が加えられた。一見すると先代とよく似ているものの、面の張りやピラーの角度、位置などが見直されたことにより、スポーツカーらしい色気とモダンさ、1クラス上のクルマになったかのような質感を獲得。基本イメージを踏襲しつつ、長年にわたって常に進化を続けてきたポルシェ911のようなモデルチェンジである。
エンジンは従来の2L水平対向4気筒から排気量を増し2.4Lに。ボディはスバルが誇るフルインナーフレーム構造の採用によって剛性を大きく引き上げた。これにより、動力性能とコーナリング性能だけでなく、乗り心地やタウンユースでの扱いやすさも向上した。基本的な方向性は変えず、しかしモデルチェンジごとにより速く、より快適に、より扱いやすくなるというのも911のモデルチェンジによく似ている。
興味深いのは、先代よりも、BRZと86の個性が明確に分かれてきたことだ。外観もフロント周りを中心に個性分けをしているが、乗って感じる違いはそれ以上。BRZはキビキビ感よりも正確性を重視したハンドリングに仕上がっているが、86は明らかにクイック。このあたりはどちらがいいとか悪いとかではなく、乗る人の好み次第だ。BRZ&86の購入を考えている人には、少々手間はかかるが両車を乗り比べてから購入することをオススメしたい。いずれにしても、これほど魅力的なスポーツカーが約300万円で買えるというのは嬉しいことだ。
第3位「トヨタランドクルーザー」世界一のクルマと思えば破格に安い
第3位はランドクルーザー。タフネスさ、悪路走破性という領域で世界の頂点に立つ唯一無二の存在が大幅に進化したとなれば高く評価しないわけにはいかない。日本で乗るにはオーバークオリティの塊のようなクルマだが、とことんまで突き詰めた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」性能が醸しだす世界観には大きな魅力がある。それはたとえば、路上の段差を乗り越えたときの想像を絶する衝撃吸収能力であったり、車内に乗り込みドアを閉めた瞬間に伝わってくる「硬い殻で守られてる感」だったりする。
そういった、ランドクルーザーでしか味わえない個性に魅力を感じる人がいるからこそ、決して安いクルマではないのに最低でも2年待ちという長いウェイティングリストができているのだ。
セダンでもスポーツカーでも「世界一のクルマ」を購入しようと思ったら、目の飛び出るような出費を覚悟しなくてはならない。そう考えると、510万円~800万円という価格は破格に安い。
第2位「三菱アウトランダー」お世辞抜きで世界最高のPHEV
第2位はアウトランダー。新型になりガソリンエンジンは廃止され、全車PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)になった。実は、ノートとどちらを1位にしようか本気で悩んだ。PHEVとしての性能もさることながら、電子制御式4WDを駆使した驚異のハンドリング性能や、グンと高まった内外装の質感、コストパフォーマンスなど、新型アウトランダーはお世辞抜きで世界最高のPHEVである。自宅もしくはよく行く場所に充電環境があるなら文句なしに「買い」の1台だと思う。
ただし、この原稿を書いている時点で試乗できたのはサーキットだけ。一般道で試乗できていないのが1位にすることをためらわせた理由だ。一般道、さらに言えば雪道を走ればさらに評価は上がるだろうと予想しているが、断言するのは実際に試してからにしたい。
第1位「日産ノートシリーズ」第2世代e-POWERが生み出す優れた基本性能
1位として強力に推したいのがノートシリーズだ。その魅力はたくさんあるが、まずは第2世代e-POWERが生みだす力強くスムースなパワーフィールがある。これまでのe-POWERにもキラリと光るところはあったが、エンジンがかかった途端に煩く感じるとか、そもそもエンジンがかかる頻度が高いといった課題を抱えていた。
その点、ノートのe-POWERはバッテリー容量を増やすことでエンジンがかかる頻度を低減。加えて、ザラついた路面を走っているときに発生するゴーッというタイヤノイズに紛れてこっそりエンジンを始動しバッテリーに電力を蓄えるといった細かい制御を加えることで、EVに近いドライブフィールを実現した。当然、静粛性ではフィットやヤリスといったライバルを大きく引き離しているし、大きなバッテリーに蓄えた豊富な電力を使ってモーターを駆動するため動力性能も高い。とくにアクセルを踏み込んだ直後の遅れのない応答性はモーター駆動ならではの美点だ。
こうした優れた基本性能に加え、5ナンバーサイズのノート、3ナンバーサイズのオーラ、スポーティーなオーラNISMOなど、様々な個性を揃えているのも魅力だ。
参考:2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)の結果
COTY10ベスト
合計得票
トヨタ/SUBARU GR86/SUBARU BRZ
264
トヨタ MIRAI
104
トヨタ ランドクルーザー
45
日産 ノート/ノート オーラ/ノート オーラ NISMO/ノート AUTECH CROSSOVER
335
ホンダ ヴェゼル
227
三菱 アウトランダー
206
BMW 4シリーズ(クーペ/カブリオレ/グラン クーペ/M4クーペ)
19
シボレー コルベット
81
メルセデス・ベンツ Cクラス
51
フォルクスワーゲン ゴルフ/ゴルフ ヴァリアント
168
※記事の内容は2021年12月時点の情報で制作しています。
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