■GR「GT3コンセプト」/レクサス「スーパーカー」
2024年10月中旬にGRの「GT3コンセプト」/レクサスの「スーパーカー」と思われるモデルのテスト走行が目撃されました。
【画像】 超カッコイイ! これが斬新「和製スーパーカー」です(85枚)
現在、開発中と噂されてきたこのモデルですが、まもなく登場するのでしょうか。
2022年の東京オートサロンで初公開された「GR GT3コンセプト」の量産仕様と思われるテスト車両(兄弟車レクサスのスポーツカー?)が、新車開発の聖地・ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)に表れた事が様々な自動車メディアを通じて話題となっています。
なかには「2026年から参戦?」、「コイツがレクサスLFAの後継モデル?」と言った話も出ていますが、実際はどうなのでしょうか。 推測だけでなく要望も含めて分析していきたいと思います
その前に、世界の主要自動車メーカーの多くが参入するFIA-GT3車両について簡単に解説していきましょう。
元々GT3カテゴリーは、コスト削減やジェントルマンドライバー(=アマチュアドライバー)の参加を促すことを目的に2005年に創設されました。
マシンは量産スポーツカーをベースに自動車メーカー、もしくはそれに準ずるワークスガレージが開発を行なっています。
ちなみにGT3マシンは自動車メーカー自らのワークス活動は禁止、あくまでも供給元なのです。
そんなGT3マシンですが、車両に関しての明確なレギュレーションは存在しません。
エンジンは何気筒でもOK、排気量や過給機の有無も自由です。ただ、駆動方式は2WDのみ。
これだけでは出力などマシンの性能差が出そうですが、そこはBOP(バランス・オブ・パフォーマンス)と言うシステムを導入して性能調整を行ない、均衡を保っています。
性能調整は発売前にFIAが選んだ複数のレーシングドライバーがテストを実施。性能差がある場合はウエイトとリスリクター、ターボ車両であればブースト圧の制限などで調整。
その後、FIAのホモロゲ―ションを受けた後、一般ユーザー(=プライベーター)に販売が行なわれます。車両価格は公にされていませんが、一般的には4000万円前後のようです。
購入後の改造のNGでウイングやスポイラーは調整のみ。サスペンションも数種類あるスプリングと減衰力調整式ダンパー、調整式スタビライザーによるセット変更程度しかできません(例外はブレーキパッドやタイヤのような消耗品)。
パーツの交換ができない→セッティングの幅が限られる=テストする時間がかからない→結果的にコストが抑えられると言う考えによるものです。
ただ、発売したらそのままではなく、しかるべきタイミングでメーカー自ら更なる性能アップが施された「EVO」モデルを発売。
常に最新モデルを買わないと戦闘力がと思う人もいるでしょうが、多くのGT3マシンは旧モデルを最新モデルに進化させる「アップデートキット」が用意されています。
仮にGT3マシンの中古車を購入しても、十分な性能を持たせることができるわけです。
話をGR GT3コンセプトに戻します。
コーポレートとしてはレクサス「RC F」がベースのGT3が実戦投入済みですが、限定的なカスタマーへの供給、実際のパフォーマンスはライバルに対して劣る部分もあるのは否めません。
この辺りは「量産車をベースにレーシングカーを作る」と言う難しさを露呈した結果と言えるのかもしれません。
その反省を活かし、GR GT3コンセプトの発表の場で、豊田章男社長(当時)からの指示は「勝てるクルマを作れ」の一言のみ。
それに対して、GRカンパニーの佐藤プレジデント(当時)は「GT3と本格的に向き合う」、「ユーザーに選んでいただけるクルマする」、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりを更に推進」と語りました。
要するに「GRヤリス」と同じく「レースに勝つため、普段お客さまが乗るクルマとはどうあるべきか?」と言う発想で開発を行なう考え方の水平展開で、GT3と量産車は並行して開発が行なわれているはずです。
ちなみにテスト車両の姿は国内外のサーキットで幾度となく目撃されています。
直近だと富士スピードウェイやベルギーのスパ・フランコルシャンサーキット(TGR-WECチームが2024年のル・マン24時間耐久レースの直前テストのタイミング)などですが、ニュルでの目撃は今回が初めてとなります。
■噂の「GR GT3」「LFA 2」はどんな形で登場するのか?
ちなみにGT3マシンは量産車が存在して初めて成り立つモデルです。
となると、当然「量産モデルがどうなるのか?」も気になるでしょう。
ニュルで撮影されたテストカーは、これまで他のサーキットで撮影されたモデルとはちょっと違うようです。
ロングノーズショートデッキ、フロントミドシップのFRレイアウトと言うパッケージはもちろん、全体的なプロポーションも大きく変わりませんが、フロント周りはバンパー開口部やエアロパーツが控えめな形状になっています。
サイドを見ると大径のホイール(恐らくBBS鍛造)はセンターロックではなく通常のモノが装着。
リアは小型化されたリアウイングや4本出しのテールパイプやナンバープレート取り付けなどが考慮されたリアバンパーを装着されています。
その辺りから推測すると、これはGT3マシンではなくプロダクションモデルでしょう。
GR GT3コンセプト発表の1か月前、2021年12月に開催された「BEV戦略に関する説明会」でお披露目された数多くのモデルの中の1台に「レクサス・エレクトリックスポーツ」がありました。見た目を含めてGR GT3コンセプトと兄弟関係なのは公然の秘密。
ただ、このテスト車両を見る限りパワートレインは電動ではなく内燃機関です。
そう考えると、GR GT3コンセプトのロードバージョンはGR版とレクサス版の両方が存在するのでしょうか。
車体全体を覆っている偽装シートの柄が見かたによって「L」にも「G」にも見えるのは気のせいではないような気がします。
ちなみに内燃機関はどんなユニットなのでしょうか。
実は2020年のニュル24時間に参戦予定だった「LC」の先行開発モデルのリリースには「新開発V8ツインターボ搭載」とありました。
ただ、このユニットはその後も世に出ていません。そう考えると、このユニットもしくはその発展形と予想できます。
ちなみにレクサスRC F GT3は自然吸気の5.4リッターV型8気筒を搭載していまが、これと同等、いやそれ以上のパフォーマンスを求めるなら、排気量は4リッター以上と考えるのが順当でしょう。
先日、TGRのある関係者が一部のモータースポーツメディアに対して「2026年にヨーロッパでレースをする事になる」と語ったようですが、それはWEC(世界耐久選手権)もしくはニュル24時間耐久レースでしょう。
となると、ロードバージョンはそれよりも早く登場しないとダメと言うことになります。
そのタイミングから逆算すると、このテストカーがニュル訪れた理由は、恐らく「卒業試験」と考えられます。
果たして合格だったのか。それとも再試験だったのか。気になるところです。
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