(※前編は「関連記事」を参照ください)高速道路の最高速が120km/hに引き上げられる区間が増えてきた昨今、軽自動車やコンパクトカーは、120km/hでの走行に余裕があるのか!? 特に条件の厳しそうなハイト系を中心に、今の国内で売れているクルマたちの高速性能をテストした!!
※本稿は2022年6月のものです
文/鈴木直也、写真/ベストカー編集部、撮影/西尾タクト
初出:『ベストカー』2022年7月10日号
利用するなら必読・要注意! 高速道路120km/h区間 軽&コンパクトカーは安全・余裕で走れるか?(後編)
■80→100→120km/h 余裕の動力性能を発揮するのはどのクルマだ!?【追い越し加速テスト】
走行車線で前を走る大型トラックに追いついたという想定で、最左車線から右車線に移りながら120km/hまで加速をした。100km/hを越えると加速性能に如実に差が現われた
追い越し加速にどのくらいの余裕があるか? 80→100km/hと80→120km/hの加速タイムを計測した。
この速度域、平均的なB/Cセグのクルマだと100km/hまでで3秒台、120km/hまで引っ張ると5~6秒台が相場。
基準車として持っていったノートX(日産)は、それぞれ3.5秒と6.7秒というタイムを記録している。
この水準だと加速している実感があるし、サクッと前のクルマをパスして元の車線に戻れる。要するに、ストレスなく新東名を走れるのだ。
この基準に最も近かったのはソリオ(スズキ)。
テスト車のグレードはハイブリッドMZだから1.2L直4で91ps/12kgmというスペック。そこにISG(スタータージェネレータ)を組み合わせたマイルドハイブリッド機構。
このパワートレーンが100km/hまで4.8秒、120km/hまで9秒ちょっとと健闘。加速テストだから当然アクセル全開だが、4気筒ゆえトップエンドまでストレスなく回り、CVT特有の「ワーン」と連続したエンジンノイズも許容範囲だ。
対するライバルのルーミー(トヨタ)は、1L3気筒で69ps/9.4kgmと劣勢なうえ、車重もソリオより80kgほど重い。結果、100km/hまで6秒前後、120km/hまで12秒弱と、明らかに後れを取った。
タイム差そのものは2秒程度なのだが、体感的な差はかなり大きかった。全体に非力だから流れに乗ろうとするとしばしば全開加速を強いられ、その時のエンジン音や吹き上がりフィールもソリオと比べると劣勢。
なんというか、ぎりぎりサイズのエンジンが必死に仕事をしている感じで、思わず「ゴメン、100km/hまで落とすわ」と、いたわりたくなる。
効率的にみても、このサイズのボディにこのエンジンはややアンバランスで、次ページの別表のとおり燃費も全セクションでソリオに負けている。
東名120km/h時代に対応するには、ターボモデルを選ぶのが賢明だと思う。
残る軽自動車部門では、N-BOX(ホンダ)の完成度の高さにあらためて感銘を受けた。
NA仕様だから660ccで58ps/6.6kgmと絶対的なパワーは小さいが、体感的にはさほどストレスもなく120km/h巡行をこなす。
加速タイムは100km/hまで7.3秒、120km/hまで15.3秒と、さすがに100km/hを超えると加速がかなり鈍るものの、N/V性能はむしろルーミーより上手にコントロールされていて快適。
「200km先の浜松いなさまでどっちで行く?」と問われたら、正直いってルーミーよりこっちを選びたくなる。
ラストのeKクロススペース(三菱)は、120km/h区間テスト時の燃費が8.7km/Lと大幅に悪化。100km/h以上での加速に時間を要し、苦しさを感じた。
80→100→120km/h追い越し加速タイム
■加減速が燃費に悪影響【120km/h走行の燃費テスト】
都内~御殿場市内の往路、復路の燃費に比べ、120km/hテスト中の燃費はガクッと悪化
テストは各車1台ずつ新東名高速の新御殿場インターから西進し御殿場JCTの先で最高速が120km/hとなる区間を走行。
長泉沼津インターで折り返して再び新御殿場─インターまでを走行した。
TEST2の追い越し加速は、左車線を走る大型トラックに追いついた場面を想定し、右車線に移動しながらアクセルを全開にして制限速度の120km/hまで加速するという方法で実施。
条件を一定にするため、追い越し加速テストを実施した区間は各車同一ポイントで、2回ずつ実施した。
この間の燃費を車載燃費計により確認したのだが、eKクロススペースの8.7km/Lというのがグンを抜いて悪かったのが印象的だった。
他車は軒並み15km/L前後なので、60%程度の燃費である。
eKに関しては、都内~御殿場までの往路、復路の燃費を見ると往路=14.4km/L、復路=16.7km/Lで、他車と比べて80%程度なので、120km/L走行で極端に燃費が悪化することがわかる。
たしかに追い越し加速テストでは100km/hから上の加速に特に時間を要しており、負担が大きかったということは実際に乗っていても感じた。
同じ軽自動車で、NAエンジンのN-BOXよりもタイムが悪いし、実際、110km/hあたりからの伸びは悪く、車速の上昇はジワジワ。
空気抵抗の影響を大きく受けている印象なのだが、全面投影面積はN-BOXも同程度。
eKはターボでトルクは10.2kgmと大きく、N-BOXより動力性能には余裕があるハズで、それが燃費にも効いてくるというのが理屈のはずなのだが……。
テストした全車、やはり120km/hへの加減速が燃費を引き下げる結果となったのは間違いない。
燃費テスト
■快適性は100km/hと120km/hでどれだけ変わる!?【室内騒音】
100km/h超の空気抵抗に挑む!! 100km/h以上では風切り音が急激に大きくなってくる
騒音計をドライバーの耳元、さらに後席乗員の耳元付近において室内騒音を計測。
これも、路面や周囲の条件によって数値に変化が出てしまうので、各車計測区間を同一として、また並走する他車がいないなど、条件差が出ないように実施した。
全体的に100km/hに対し120km/hになると騒音は大きくなるのだが、特にノート以外の各車では「バタバタバタ」といった風切り音が100km/hを越えると急に大きくなるのがハッキリとわかった。
ノートは車高が低いだけではなく、細部まで空力性能に気を遣った車体造形なのだろう、速度を上げていっても風切り音を感じることはほとんどなかったし、実際、室内騒音の数値にも変化はなかった。
騒音計で示される数値とは別に、ルーミーはエンジンの「ガーガー」という音が耳につき、体感的には音の大きな車室環境という印象であった。
100km/h、120km/h走行時の室内騒音
■鈴木直也が総括!! 120km/h時代の日本の軽&コンパクトカーは安全・余裕で走れるのか!?
ひと口にハイトワゴン系軽自動車&コンパクトカーと言っても、それぞれ乗り比べると100km/hを超える速度域で明確な差を感じる
1963年に名神高速が開通して以来、日本の高速道路は半世紀以上にわたって最高速度100km/hの制限が続いてきた。
バブル期には高性能車がブームになって100km/hに不満を感じたコトもあったが、やがて低成長時代になるとユーザーの関心は性能から燃費にシフト。
とくに国内市場をメインとする車種では、費用対効果や燃費効率重視のクルマ作りが定着していった。
このあたりから、日本車は欧米市場を目指すグローバル車種と、国内およびアジア市場中心のドメスティック車種に分化したように思う。
例えば、同じトヨタのBセグハッチでも、ヤリスはグローバル組だがパッソはドメスティック組。似たようなエンジン、足回りを使いつつも、ドライバビリティや操安性、あるいは乗り心地などのテイストに明らかな違いがある。
これは優劣の問題ではなく、市場環境に違いがあればクルマもそれに適応するのが道理でしょ、というハナシなんだけど、今回のテストで感じた問題点は、新東名の120km/h化がその市場環境に明らかに一石を投じた、ということなのである。
100km/h制限時代に完全適応しちゃったドメスティック組が、スピードレンジがグローバル基準に近づいた結果、限界を露呈しているように思えるのだ。
たとえば、高速道路で前方に障害物を発見し、ステアリング操作でそれを回避した経験を持つドライバーは少なくないと思う。「100km/h程度のスピードなら、オレは軽く避けられる」、そう思ってる人もいるかもしれない。
しかし、速度が100km/hと120km/hでは、リスクに格段の違いがある。
●120km/hで実際高速道路を走ると実感する!!
本来は、障害物を緊急回避する際の指標となる「高速レーンチェンジ」はテストコースで実施すべきものだが、日常よくあるハッとした瞬間の回避操舵ですら、120km/hは侮れない。
この速度域のスタビリティ性能に関しては4台ともけっして褒められるレベルではなく、あえて順位づけをすれば、ソリオ→eKスペース→N-BOX→ルーミーの順でシャシーの踏ん張りが覚つかなくなる。
なかでも、ルーミーはいかなる基準をもってしても落第。このクラスのベストセラーカーであることは承知しているが、新東名120km/h区間にはお薦めできないクルマと言わざるを得ない。
動力性能に関しては、そんなに心配はない。今回のテストでもそれなりの優劣はあったが、ドライバーが快適と感じる速度に差があるだけのハナシ。非力なクルマで無理な追い越しをかけて、追越車線を占拠するようなことをしなければ、安全性という観点からも問題はない。
しかし、突然のリスクを回避するシャシー性能に関しては、もっと基準を高く持たないとダメ。これが、新東名120km/h化がドメスティック組に突きつけた課題だと思いますね。
■各車 総合評価
・ホンダ N-BOX(総合評価:92点)…58ps/6.6kgmの軽NAとは思えぬ動力性能。操安性、乗り心地ともに大きな問題点を感じることはなく、総合的に高く評価できる。
・三菱 eKクロススペース(総合評価:80点)…しっかりとした操縦性で120km/h走行でも安定した走りで安心感が高いのだが、100km/h超での動力性能、燃費性能が悪いのが減点対象だ。
・スズキ ソリオ(総合評価:88点)…堅実なトータルバランスを感じさせてくれたソリオ。100km/hを越えた速度域での加速は軽自動車とは比較にならないほどの余裕だ。
・トヨタ ルーミー(総合評価:45点)…操縦安定性、乗り心地など、高速域での走行性能では他社に比べてワンランク低いことは否めない。また、動力性能もNAでは厳しい。
・日産 ノート 総合評価:90点…他車たちとは一線を画す操縦安定性と乗り心地。動力性能も120km/hまではモーターパワーでスッと一気に加速し、ストレスを感じない。
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みんなのコメント
いくらエアバッグがフル搭載され、ESP等の走行アシストが付いていても軽自動車は高速走行は不安定でクラッシュしたらまず人命が危険である。
こればかりはどうしようもない事実。
コンパクトカーはとても安全と言える。
トレッドも広く、リッターカーの余裕とボディのクラッシャブルゾーンの存在が安心である。