転がり抵抗性能が良いだけでなく、ウエット性能も良いタイヤが増えた
気象庁は2024年6月21日、近畿、東海、関東甲信地方が「梅雨入りしたとみられる」と発表しました。
【画像】「滑らんなぁ…」雨に強い低燃費タイヤが増えた理由を写真でチェック(20枚)
これは平年よりも14日ほど遅い梅雨入りとなっています。
クルマを運転するドライバーにとってこの時期の運転は、いつも以上に注意しなければいけません。雨の日の運転は視界が悪くなり、また路面が滑りやすく制動距離も伸びることから、事故が増えてしまいがちです。
首都高ドライバーズサイトによると、雨の日は晴天時と比べて1時間あたりの死傷事故件数が約4倍、また道路脇の壁などへの施設接触事故は約7倍発生しているといいます。
また阪神高速のドライバーズサイトを見てみると、雨天時、濡れている路面の場合の事故率は、路面が乾燥している時と比較し直線で5倍、カーブでは約21倍になるというデータもあります。
タイヤには溝があり、この溝が路面に溜まった雨水をかき出し、路面とタイヤを密着させることでグリップ力を保ちます。タイヤがすり減って溝が浅くなると、この排水性能が低くなるため、高速で走行中にタイヤと路面の間に水膜ができることでクルマが浮いたような状態になり、ハンドルやブレーキが効かなくなる「ハイドロプレーニング現象」が起きやすくなります。
タイヤには残り溝の深さ1.6mmを示す「スリップサイン」があり、1か所でもスリップサインが出ると整備不良で使用が禁止されます。日ごろから愛車のタイヤ溝のチェックをして、溝が減っていたらスリップサインが出る前に、新しいタイヤに交換することをおすすめします。
近年、街のタイヤショップなどで購入される乗用車用サマータイヤのほとんどが「低燃費タイヤ」だといわれますが、近年登場した低燃費タイヤには、転がり抵抗性能が良いだけでなく、ウエット性能も良いという商品が多数登場しています。
交換用として販売されている乗用車用のサマータイヤには、「A-c」「AAA-b」などの表示があります。
タイヤショップなどで交換用として販売されている乗用車用のサマータイヤには、「A-c」「AAA-b」などの表示があります。
これはタイヤ・グレーディング制度(ラベリング制度)といって、「転がり抵抗性能」「ウエットグリップ性能」のふたつを等級分けして表示するものです。転がり抵抗性能はAAA/AA/A/B/Cのアルファベット大文字5段階、ウエットグリップ性能はa/b/c/dのアルファベット小文字4種類で表されます。
このうち、転がり抵抗性能がAAA/AA/Aで、かつウエットグリップ性能がa/b/c/dの場合、「低燃費タイヤ(=エコタイヤ)」とされます。
一般的に、タイヤというものは「転がり抵抗性能を良くするとウエットグリップ性能が下がり、ウエットグリップ性能を上げると転がり抵抗性能が悪くなる」という相反関係にあります。
その性能を消費者がひと目でわかりやすくするために設けられたのがこの制度なのです。
最近では転がり抵抗性能が「A」以上なのに、ウエットグリップが最高の「a」を獲得しているエコタイヤが数多く登場しています。それを可能にしている技術とはなんなのでしょうか。
キーワードは「シリカ」
タイヤの主成分はゴムです。
ゴムの3大特性として「やわらかい」「大きく変形する」「変形しても元に戻る」ということが挙げられます。
ゴムの分子は、絡まった長い鎖のような状態ですが、ゴムの分子同士がくっついていないと元に戻れず、簡単に破断されてしまいます。輪ゴムがすぐ切れるのと同じ理屈です。
そこでゴムを加熱し、硫黄でゴムの分子同士をくっつけることを「加硫」といい、タイヤの製造でも加硫がおこなわれています。
またゴムはそのままだと非常に弱いため、補強材を入れる必要があります。補強するための材料が「カーボンブラック」です。これは1912年にアメリカのタイヤメーカー、グッドリッチが使ったのが最初といわれています。このカーボンブラックをゴムに配合すると強度は20倍ほど上がり、さらに紫外線にも強くなるといいます。タイヤが黒いのは、このカーボンブラックを配合しているためです。
このカーボンブラックは、ゴム(油)と馴染みやすいといいます。鉛筆で書いた文字(カーボン)を、消しゴムで消すことができるのはこの理屈です。
近年、カーボンブラックに代わる補強材として注目されたのが「シリカ」です。レースタイヤとしては1980年代から使われていたようですが、乗用車用としては1992年に登場したミシュラン「MXGS」に使われたのが最初といわれています。
シリカは、カーボンブラックと似た構造を持つ、ケイ素と酸素で構成された物質(=二酸化ケイ素、SiO2)で「ホワイトカーボン」とも呼ばれています。身近なものとしては、シリコンゴムや歯磨き粉、乾燥剤、珪藻土バスマットなどにも使われています。
カーボンブラックをシリカに置き換えると、ゴムの変形回復が早いという特徴があり、タイヤが転がりやすくなるといいます。タイヤメーカーによると、カーボンブラックのみ配合のゴムに比べ、シリカ配合ゴムは、路面との接触面積は1.23倍、タンジェントデルタ(エネルギーロス)は約27%減、という数値になるそうです。
結果、ゴムにシリカの配合量を増やせば増やすほどウエットブレーキ性能も良くなり、ころがり抵抗も減っていきます。さらにシリカを配合したゴムは、低温でも硬くなりにくいという特性も持っています。
なぜ“雨にも強いエコタイヤ”が増えてきたのか
ただ難しいのは、カーボンブラックは油と馴染みやすい(親油性)のに対し、シリカは親水性だということです。
ゴムは油なので、ゴムにシリカをそのまま混ぜても「水と油」なので結合しません。またシリカ同士が強く引き合うため、塊(ダマ)になりやすい性質があります。
そこで必要となるのが、シリカとゴムを結びつける「シランカップリング剤」です。
この化合物は、材料を混合中に化学反応させることでシリカとゴムを結合させ、また、ダマになりやすいシリカに分散剤を加えて混合することで、ゴムのなかに均一にシリカが分散(高分散)されます。
こうした混合(ミキシング)のノウハウが、新たなタイヤの性能向上に直結していると、タイヤメーカーの技術者は説明します。「同じ材料を同じ分量使っていても、混合する時間、温度のコントロールによって、でき上がったゴムに差が出ます」といいます。
ゴムを混合すると、発熱して温度が上昇します。その温度を冷却しながら適切な値に制御、十分に反応が進むまで混合するという、高度な混合制御技術が必要になってくるそうです。
タイヤメーカーそれぞれが、この混合技術を研究し、日々開発していることが、最近ウエットグリップが良くエコ性能も高いタイヤが増えてきた理由です。
※ ※ ※
シリカを配合したゴムは、転がり抵抗が少なくウエットグリップが向上するため、タイヤにとってメリットばかりのように感じてしまうが、じつは弱点もあります。
それは、シリカが多く配合されたトレッドゴムの導電性が低いということです。ブラックカーボンのみ配合のタイヤの場合は、タイヤから地面に電気を放出できたのですが、シリカ配合ゴムの場合、電気を通しにくいことから、クルマにたまった静電気を逃がすのが難しいという欠点があります。
静電気を逃せなくなると、電磁波ノイズによりクルマの電子機器への悪影響があります。ラジオにノイズが入るだけでなく、各センサー類にも影響が出る可能性も出てきます。さらに可燃物への引火なども考えられるのです。
その対策として、シリカを配合したタイヤのトレッド部には、電気を地面に逃がすアース(=導電スリット)を作っているため、生産性が悪くなり、製造コストもかかってしまうといいます。
転がり抵抗が少なくウエットグリップの良いタイヤは販売価格が高いこともありますが、その性能を見極める指標が「タイヤ・グレーディング」です。数多くある低燃費タイヤのなかから、自分のクルマや予算に合った商品を選びましょう。
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みんなのコメント
全てのトレッドパターンタイヤ履いて
走行会して来いや