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どうしちゃったのマツダよ!! 入魂のCX-60が硬すぎる……エンジニアの「狙い」は消費者に届くのか

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どうしちゃったのマツダよ!! 入魂のCX-60が硬すぎる……エンジニアの「狙い」は消費者に届くのか

 なにかと話題のマツダのCX-60。縦置き直6エンジンにFRレイアウト、それだけでも注目度は抜群の存在だ。しかし試乗レポートなどでは賛否両論。マツダらしい尖ったクルマ作りはすばらしいのだが、実際のところはどうなのよ!?

 もちろん開発陣がこだわりにこだわったクルマなのは分かる。けれどそれを評価するのは自動車評論家でもなければレーシングドライバーでもない。一般の消費者に正しい思いは伝わるのか!?

どうしちゃったのマツダよ!! 入魂のCX-60が硬すぎる……エンジニアの「狙い」は消費者に届くのか

 ということで愛車はロードスターNR-A、さらに新型シビックタイプRも買っちゃったイケイケな伊藤梓氏が徹底チェックしました!! マツダは好きだけど評価はキッチリとしていまっせ!!

文/伊藤 梓、写真/MAZDA

■直6縦置きFR……クルマ好き垂涎のマツダ CX-60を味わう

2022年9月15日、マツダ CX-60が待望の発売開始となった。まずはe-SKYACTIV D搭載モデルからの登場となる

 ことクルマの走りや美しいデザインにおいては、並々ならぬ情熱を注ぐのがマツダという会社だ。その信念は、クルマがどんな形になっても変わらない。

 新しく登場したミドルサイズのSUVであるCX-60もその例に漏れないようだ。直6エンジンを縦置きにして、後輪駆動をベースにした、クルマ好きなら垂涎のモデル……。はたして、その性能は一体どんなものなのだろう。実際に試乗しながらその性能を探ってみることにした。

 CX-60のサイズは、全長4740×全幅1890×全高1685mmで、CX-5とCX-8の間に位置する。実際に目の当たりにすると、その実寸より迫力があると感じた。その大きな要因は、幅の広さとノーズの長さだろう。

 これまでのマツダ車は、SUVでもノーズが前方に伸びた流麗な表情が多かったが、CX-60はフロントをスパッと切ったように平らなフォルムになっている。

 その先端から「直6エンジンが詰まっていますよ」と言わんばかりに長ーいノーズが伸びていて、ボンネットもかなり高い位置にある。このボリューミーなフロントフェイスがCX-60をより迫力ある印象にしているのだろう。

 そして、ひと目で気に入ったのは、インテリア。ドアを開けた途端に上質な空間が広がっている。

 メーター類やステアリング、液晶パネルなどのデザインはいたってシンプル。しかし、高級な家具のように、それらを形づくるラインが洗練されていて、その表皮にも上質なファブリックや革が与えられている。シートのステッチも、やりすぎず上品にまとまっているところが好印象だ。

 「このインテリアが嫌いだという人を見つけるのは難しいだろう」と思うくらい、これまでのマツダ車の中でもトップクラスの美しいインテリアになっている。

■e-SKYACTIV Dで高効率と運転の楽しさを両立!

今回は3.3L直6ディーゼルターボエンジン+モーターのマイルドハイブリッドモデルに試乗。マツダが大排気量を選択したのは燃焼効率を向上させ、環境性能を上げるという狙いもある

 さて、CX-60について、誰もが気になっているのは、エンジンだろう。CX-60には、4つのパワートレインのバリエーションがある。

 ラインナップされているのは、2.5L直4ガソリンエンジン(188ps/250Nm)、3.3L直6ディーゼルターボエンジン(231ps/500Nm)、3.3L直6ディーゼルターボエンジン(254ps/550Nm)+モーター(16.3ps/153Nm)のマイルドハイブリッドモデル、PHEV(パワートレインの詳細は不明)。

 今回、試乗したのは、ディーゼルのマイルドハイブリッドモデルだ。

 他メーカーは、環境性能を考慮してエンジンをダウンサイジングしているなか、「どうしてマツダは新しく直6エンジンを作ったの?」と思う人もいるかもしれない。

 実は、マツダ車にクリーンディーゼルモデルが増えてきた際、エンジニアから「排気量を大きくした方が燃焼効率を向上でき、環境性能も上がる」と聞いた覚えがある。

 つまり、この直6エンジンは、単にスポーティで高級なモデルを産むためだけに作られた訳ではなく、排気量を大きくすることによって、環境性能も向上させる狙いがあるのだ。

 3.3Lディーゼルエンジンを搭載したマイルドハイブリッドモデルの最大トルクは550Nmだが、本来ならもっとトルクを大きくすることもできるそうだ。あえてそうしなかったのは、気持ちよくCX-60を運転できる分はきちんとパワーを与えて、その余剰分を燃焼効率アップのために注力したからだという。

 また、燃焼室の空間を2つに分けた2段Egg燃焼室と多段噴射を組み合わせることで、噴霧された燃料と空気がきれいに混ざり合って、より効率の良い燃焼を実現した。さらに、重量は増すものの、ピストンを低熱膨張の少ない鉄にすることによって、機械抵抗を少なくし、エンジンがスムーズに回転するようになった。

 これらによって、WLTCモードの燃費は、ディーゼルエンジン単体のモデルでは18.3~19.8km/L、今回の試乗車のマイルドハイブリッドでは21.0~21.1km/Lと、ミドルサイズのSUVでもトップクラスの燃費性能となっている。燃料代が高騰している今、軽油というところも嬉しいポイントだ。

 クルマの電動化が進むなか「エンジンは、まだ効率を上げられるから可能性がある」と言っていたマツダが、本当に高効率と運転の楽しさを両立させたエンジンを作り上げたことには、感嘆せざるを得ない。

■音も楽しめるディーゼルエンジンの魅力

車内に静寂性を求める昨今にあって、あえてエンジン音を聴かせるというのが新鮮。まさに「サウンド」と呼びたくなる心地よさだった

 机上の性能は確かだろうと思いつつ、「じゃあ、実際に走ってみるとどうなのだろう」と運転してみると、走り出しからエンジンの気持ちよさをしっかり体感することができた。

 一般道では、低回転からでも滑らかにパワーが溢れてきて、ゆとりのある上質な運転ができるし、高速道路の合流などでパワーが欲しい時にアクセルペダルを踏み込むと、瞬間的に大トルクを放出してくれるので、どんなシーンでも気持ちよく走れると感じた。

 直6エンジンは、一般的にバランスの良いエンジンとして知られているが、スルスルとスムーズに回っていることがドライバーにも自然と伝わってくる。

 そして、個人的に良いなと思ったのは、ディーゼルエンジンの音だ。低速のときにはクルクルと猫が喉を鳴らすような音が聞こえてきて、ペダルを踏み足していくとその操作に寄り沿うように音の迫力も増していく。

 それがうるさく感じず、むしろ心地よく感じるのは、人間の感覚にぴったり合っているからなのだろう。近年は、とにかくキャビンの中を静かにしようと、エンジン音が感じられないモデルが多いが、あえて「聞かせる」ことが満足感につながる体験は新鮮だった。

 低速ではモーターのアシストが介入しているはずだが、ドライバーがそれを意識する瞬間はほとんどない。直6のフィーリングに余計な雑味が入らないから、エンジンを純粋に楽しむことができる。

 少し気になったのは、発進などでギクシャクする時があること。CX-60には、新開発のトルコンレス8速ATが搭載されていて、MTのようなダイレクト感を売りにしている。確かに小気味よくシフトアップするし、変速のタイミングも自分でMTを操作する時の感覚によく似ている。

 ただ、アクセルペダルを成り行きで操作していると、低速でのトランスミッションの変速タイミングを見誤って、軽いシフトショックが出ることがあるので、ドライバーにはある程度の運転の心得が必要になりそうだ。

 ステアリングは、コーナリング中でも直進中でも据わりが良く、重厚なクルマの雰囲気にマッチしている。しかし、ハンドルの操作感が重いため、私のような女性ドライバーは長時間運転する際に少し苦労するかもしれない。

 CX-60の車両重量は、1910~1940kgと重いため、ハンドルを切るたびに、ボディがのっしのっしと動いているのが伝わってくる。それでも、スムーズにコーナーをクリアできるのは、サスペンションまわりの設計とロードスターにも採用されているKPCによるものが大きいのだろう。

■意外に「じゃじゃ馬」な理由はサスペンションにあり?

リアのサスペンションにピロボールを採用しており、荒れた路面では多少突き上げを感じた。総走行距離が増えてサスが馴染むまでは上下のバウンスを大きく感じるかもしれない

 ここまでは好印象なCX-60だったが、路面が少し荒れた場所に踏み入れた際、思ったよりもクルマが突き上げることに驚いた。デコボコした路面を走るたびに、後席に乗っている担当編集者がバックミラー越しに上下に跳ねている様子がありありと見受けられる。

 この要因のひとつとしては、リアのサスペンションにピロボールを採用したことにあるようだ。最初は「SUVをピロボールにするの!?」と驚いたが、マツダが理想とする車両の運動性能を得るために必要な決断だったという(このあたりがマツダらしい)。

 また、人が前後に傾くピッチ方向の動きは不快に感じやすいため、ピッチセンターを後方化することで、ピッチングを上下のバウンス運動に変換したそうだ。それらの要素が重なって、より跳ねを感じる動きにつながったのかもしれない。

 CX-60は、その上質で重厚な雰囲気から、CX-8のようなしっとりとした乗り味を想像していたので、この乗り心地には少々面食らってしまった。ただ、乗り心地の悪さが気になったのは、総走行距離が約2500kmの個体。

 総走行距離が約4000kmのCX-60に乗り換えると、この跳ねるような動きは収まり、よりイメージに近い乗り心地になっていた。エンジニアによると、「走行距離によってピロボールの馴染み具合が変化し、それが乗り心地に影響するのはありえる」とのことだった。

 納車直後は、この硬さに驚く人もいるかもしれないが、走行距離を重ねることで、ある程度は改善されるようなので、長い目で足回りを育ててみることをおすすめする。

■期待通りの「業物」だが一抹の不安も……

 CX-60は、マツダの美と走りの追求を体現した、まるで業物のようなモデルだ。その道に長けた人が見れば、見た目の美しさだけではなく、素晴らしいパワートレインや随所に光る技術によって、唯一無二のSUVと評価するはずだ。

 しかし、何も知らない一般の人たちはどうなのだろう。

 確かに、その価格帯に合った美しさや上質感のある設えは納得の出来だと思うが、少し触れてみると、距離を重ねないと小慣れない乗り心地やスペックを熟知していないとなかなか魅力を感じづらいパワートレインなど、その切れ味の鋭さに一歩引いてしまう気さえする。

 これまでのマツダ車は、誰もが買えるモデルでも、そのドライビング体験は、他社を退けるほど満足感の得られるものだった。CX-60は逆に、その高級さと定められたレイアウトが先行して、少し自分の首を締めてしまっているような節がある。

 これから、CX-60に続いてラージ商品群が増えるにつれて熟成が進み、マツダ車らしく誰の肌にもしっくりと馴染むモデルになりますようにと、いちマツダファンとして祈るばかりだ。

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  • 大概、エンジニアのねらいは大衆ウケしない。

    それに、もうマツダ車の顔がみんな同じでダメ。
  • 3千キロくらいでいい感じの硬さになるみたいな記事を見たけど、3万キロも走ったらガッタガタになりそう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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