■世界最高峰のレースでEVの限界突破を図る
自動車レースの最高峰にそびえ立つのは「フォーミュラ1」(以下、F1)ですが、モーターだけで走るフォーミュラマシンで世界最強を競う「フォーミュラe」の知名度もますます高まっています。
ついに日本上陸し、国内初の本格的な「市街地レース」までも実現させたフォーミュラeですが、そこで日本メーカーのチームが戦いを挑んでいます。「ニッサンフォーミュラEチーム」です。
【画像】超カッコいい!? これが「日本代表マシン」日産チームの「e-4ORCE 04」を見る
フォーミュラeは、今シーズンで10シーズン目。F1との一番の違いは、バッテリーや、シャシー、ボディ、フロントサスペンションなどが「全チーム同じ」ということ。
チームが「最速」を賭けてしのぎを削るのは、パワートレイン(モーターやギアなど動力部分)で以下にエネルギーを効率的に強力に速さへ変えられるのか、あるいは回生エネルギーを効率的に活用できるのかということです。あるいは空力パーツも勝負への大きなファクターとなってきます。
そのワンメイクのフォーミュラeマシンは進化を続け、今年からは「第3世代」つまり3代目が投入されました。
パワートレインの最大出力はリア350kW・フロント250kWの計600kWで、470馬力を発揮します。EVの強みである電力効率も強化され、レース中に使われるエネルギーのうち「半分が回生エネルギー」という恐ろしいエコっぷりです。
それでいて重量は、市販EVよりもずっと軽い760kg。しかし最高時速は322km/hを超え、0-100km/h加速はわずか2.5秒。スーパーカーどころか、F1マシンにもひけをとらないスペックへ成長しています。
日産は、そんな最先端の「EV技術戦争」へ殴りこみをかけて、はや6年目。16回の表彰台と2勝を積み上げ、今年は第3世代マシンでさらに飛躍を目指します。3月28日には、2030年まで長期参戦を行うとの発表もありました。
なぜそこまでフォーミュラeへの気合が入っているのでしょうか。今回の東京大会の現場であり、まさにマシンが組み上げられるガレージで、その理由が説明されました。
「日産はリーフの開発をはじめ、電動化技術のエキスパートとなってきました。そこで培った技術をレースのパフォーマンスに活かし、EVのエキサイティングさを人々に伝えたいと思っています。
もちろん、レースで得た知見を市販車へフィードバックする期待もあります。エネルギーをマネジメントするソフトウェアや回生システムなど、EVの各技術のイノベーションの拠点として、レース部門は大きな可能性を持っています」
市販車との「二人三脚」を象徴するのが、バッテリー充電のソケットが、日産「アリア」と同じものを採用していること。限界突破を期すことでしか勝利をつかめない「極限の最前線」が、市販車をさらに進化させる場にもなっていることが、日産の強みだといいます。
ガレージで組み立てられているマシンは、特別カラーリングのカウルや空力パーツである「東京バージョン」。もともとのデザインも、赤を基調に、桜の花枝を後部のパワートレインカバーにまとった「日本らしさ」を前面に出したマシンですが、今回はさらに、フロントノーズやフロントウィングを白地に「WEラブ東京」というロゴを冠したデザインとなっています。
日産のマシンで「凱旋レース」に挑むのは、サッシャ・フェネストラズ(フランス)とオリバー・ローランド(イギリス)の2選手。サッシャ選手は日本でもおなじみで、2019年に全日本F3のチャンピオンに輝いたほか、SUPER GTにも複数年参戦。2022年にはスーパーフォーミュラでもランキング2位を獲得しています。オリバー選手は2017年にF2でシャルル・ルクレール選手(現:F1・フェラーリ)らに次ぐランキング3位となったあと、フォーミュラeにステップアップしています。
記者会見でサッシャ・フェネストラズ選手は「東京で戦うのはやっぱり特別な思いがある。鈴鹿や富士でも楽しかったし、今回のホームレースでも、予選からいい位置につけて、決勝でも最良の結果としたい」と思いを語っていました。
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