日産 ノートに上級モデルとして加わったノートオーラは、全幅の拡大を含めたエクステリアの変更、インテリアの質感向上に加え、2モーターハイブリッドであるe-POWERの駆動用モーターのパワーアップをはじめとした機能、性能もノートに対し大きく向上しており、小さな高級車の資質を感じさせるモデルだ。
日本車において小さな高級車というジャンルで大きな成功を収めたモデルは残念ながら浮かばないが、本稿ではノートオーラの登場をきっかけに、小さな高級車に挑戦した日本車を振り返ってみたい。
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文/永田恵一
写真/NISSAN、TOYOTA、MAZDA、編集部
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日産 ローレルスピリット
日産 初代ローレルスピリット(販売期間:1982年~1986年/全長4050×全幅1620×全高1390mm)
1982年に初代モデルが登場したローレルスピリットは、当時のサニーの兄弟車で、1986年登場の2代目モデルも含め、当時のローレルを思わせるエクステリアの細部、インテリアカラーやボディカラーを設定することなどにより、ローレルの弟分的なイメージを持つモデルだった。
しかし、ローレルスピリットの中身はサニーとそう変わらないものだったのに加え、当時は日産のディーラー網が5チャンネル制を敷いていたため、ローレルスピリット自体が「サニーと同等のモデルは各チャンネルに必要」という、いわばメーカーの都合により産まれたモデルだったのも否めず、2世代限りで絶版となった。
トヨタ プログレ&ブレビス
トヨタ プログレ(販売期間:1998年~2007年/全長4500×全幅1700×全高1435mm)
1998年に登場したプログレは、トヨタが長年温めていた「小さな高級車」というコンセプトに挑戦したモデルである。
プラットホームや直6エンジンといった基本コンポーネンツは、当時の2代目アリストやアルテッツァと共通ながら、ボディサイズは1700mmという全幅など5ナンバーサイズに収められた。
さらに、塗装やインテリアの本木目パネルといった各部のクオリティは、セルシオ級のものを備えるなど、クルマ自体は小さな高級車として申し分ない完成度を備えていた。
また、2001年には3代目セルシオを思わせるエクステリアを持つ兄弟車のブレビスも加わった。こちらはダッシュボードをはじめプログレとは異なるインテリアとなるのに加え、ドライビングポジションをペダルの位置でも調整できるという珍しい機能も設定。
だが、プログレはクセのあるスタイルや、プログレ/310万円~、ブレビス/337万円~と、(今考えると高くはないのだが)当時のユーザーには「同じ価格ならボディの大きいマークII三兄弟やクラウンのほうがいい」と考える人が多かったせいなのか、販売は伸び悩み、初代モデル限りで姿を消した。
筆者個人はボディサイズが大きいクルマを好まないこともあり、その意味ではプログレ&ブレビスはピッタリなセダンのため、未だに「自分のものにしてみたい」と思うときがある。
マツダ ベリーサ
マツダ ベリーサ(販売期間:2004年~2016年/全長3975×全幅1695×全高1530mm)
2004年登場のベリーサは、2代目デミオをベースに、小さな高級車の要素を盛り込んだモデルである。
具体的な要素としては、アテンザのフレームを使ったことによるシートの大型化、静粛性や乗り心地といった快適性の向上、ハーフレザーシートやウッド調&レザーステアリングなどから構成されるレザーパッケージ、HDDミュージックサーバーのオプション設定といった充実した装備内容が挙げられる。
ベース車は1.5Lエンジンを搭載し、150万円台中盤とコンセプトを考えると高くなく、オプション装備の価格も意外に安かった。
そのため今になると売れなかった明確な理由は浮かばないのだが、やはりデミオに比べると高く、デミオで充分と感じる人が多かった、当時の日本人にはコンセプトが理解されなかった、受け入れられなかったというあたりなのか、販売は伸び悩んだ。
ベリーサは2016年までの12年間という長きに渡って販売されたものの、初代モデル限りで歴史を閉じた。
トヨタ ブレイド
トヨタ ブレイド(販売期間:2006年~2012年/全長4260×全幅1760×全高1515mm)
2006年登場のブレイドは、一足先に登場したVWゴルフなどをターゲットにした初代オーリスをベースに、全体的に上級志向とした日本専用車で、その意味ではノートとノートオーラの関係に近いところもあるモデルだった。
エクステリア以外に上級志向となっている具体的な点としては、インテリアのメーターフードや助手席側のアッパーボックスをスエード調とするなどし、質感を向上。
エンジンは1.5Lと1.8Lの直4エンジンのオーリスに対し、ブレイドは2.4L直4と3.5L・V6(後者はブレイドマスター)を搭載し、リアサスペンションもFF車はトーションビームとなるオーリスに対し、ブレイドはダブルウィッシュボーンとしていた。
乗れば面白みこそ薄いものの、よくまとまっていたブレイドながら期待ほどは売れず姿を消した。ブレイドがあまり売れなかった理由としては、2.4Lが該当する当時の250万円前後のトヨタ車には、2代目プリウスという上り調子だった強敵がいたのに加え、ブレイドの扱いディーラーがよりによってプリウスと同じトヨタ店とトヨペット店だったことも大きかったように感じる。
トヨタ iQ
トヨタ iQ(販売期間:2008年~2016年/全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mm)
2008年にスマートフォーツーのようなシティコミューターとして登場したiQは、シティコミューターの要素に加えマイクロプレミアムカーというコンセプトも盛り込んだモデルだった。
iQは全長3mに満たないボディに4人を乗せるため、上方に配置したステアリングギアボックスやフラット化された燃料タンクの採用、エアコンの小型化などの新技術を盛り込んだ意欲作だったが、販売は振るわず、初代モデル限りとなった。
その理由としては、前述した新技術を盛り込んだため、ボディサイズはマイクロカーでも価格を下げられなかったという事情もあるにせよ、そもそもプレミアムカーとして売ろうとしたことが大きかったように感じる。
また、140万円するとなると、同じ価格で買えるヴィッツ(現在のヤリス)や軽自動車を選ぶユーザーが圧倒的に多かったに違いない。
そうしたことを考えると、iQにはアストンマーチンに供給され、内外装を中心に遮音材の追加などの手を加えられたシグネットこそが本来の形だったのかもしれない。
ホンダ N-BOXスラッシュ
ホンダ N-BOXスラッシュ(販売期間:2014年~2020年/全長3395mm×全幅1475mm×全高1670mm)
2014年に登場したN-BOXスラッシュは、先代N-BOXの全高を100mm下げ、ボディ後半はクーペルックとした、スペシャリティ+高級という要素も盛り込んだ軽ハイトワゴンである。
エクステリア以外のスペシャリティな要素としては、アメリカのカジュアルレストランをイメージしたダイナーや落ち着いた雰囲気のセッションといったインテリアカラーなどが挙げられる。
高級の要素としては、電動パーキングブレーキの採用、オプションのサウンドマッピングシステム(サブウーファー付のオーディオ)を装着すると、静粛性向上のため遮音材が追加されるといった具合だった。
初代N-BOXからそれほど変わっていないようにも見えるが、乗ってみると全体的な質感の高さに加え、サウンドマッピングシステムも絶品と、「高級軽自動車」という言葉が相応しく、筆者は真剣に欲しくなった記憶がある。
N-BOXスラッシュも期待ほどは売れず、絶版となるのだが、その理由としてはコンセプトが理解されなかったことと、同じような価格で買える初代N-BOXを選ぶユーザーが圧倒的に多かったというのが大きかったのではないだろうか。
それでもN-BOXスラッシュのコンセプトは、多少なりとも現行型2代目N-ONEに受け継がれているところがあるように感じるのは救いかもしれない。
◆ ◆ ◆
今のところ日本車の「小さな高級車」に大きな成功を収めたモデルがないのは、ここまで書いてきたようにコンセプトに対する理解など、クルマ自体よりも巡り合わせのようなものがうまくいかなかったことの方が大きいように思う。
その意味ではノートオーラは、約300万円と絶対的にちょっと高い印象は否めないが、ノート同士で見れば価格差以上の内容の充実が感じられるだけに、日本車の小さな高級車としては初の成功例となる可能性は充分あるのではないだろうか。
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サニーの兄弟車やコンパクトカー、軽自動車が高級車であるはずがない。