ホンダのタイプRは市販モデルの中でも特別な存在だ。タイプRは走りに磨きをかけたモデルで多くのホンダ車ファンを魅了している。一生に一度はタイプRに乗ってみたい、と考えている人も少なくない。
今回は唯一現行モデルで「タイプR」を設定しているシビックタイプRの中古車事情について紹介ししていきたい。
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数あるシビックタイプRでどのモデルがお薦めなのかを萩原文博氏が相場、タマ数などをもとに考察していく。
文:萩原文博/写真:HONDA、ベストカー編集部
初代はスーパーホットハッチ
【画像ギャラリー】初代、2代目、3代目シビックタイプR
中古市場でのタマ数、相場から考えて購入ターゲットとなるのは初代(写真左)、2代目(写真右)、3代目(写真中央)となる
ホンダの「タイプR」のルーツは1992年11月に発表したNSXタイプRに遡る。そのプレスリリースには「タイプR」とは運動性能をより際立たせたピュアスポーツモデルと書かれている。
その概要としては高い走行性能や旋回性能を実現させるため車両重量の軽量化、専用チューンを施されたエンジン、トランスミッション、サスペンションを採用することと書かれている。
赤いホンダのエンブレムがタイプRであることの証。アフターではいろいろな車種に装着されているがホンダ純正で装着されるのはタイプRと名乗るクルマだけ
このNSXタイプRで導入された哲学をベースにダイナミックな走りと優れたコントロール性を徹底追求して開発されたのが1997年8月に登場した初代シビックタイプR(EK9型)だ。
シビックの3ドアSiRをベースにリッター当たり116psという1.6L直列4気筒自然吸気エンジン当時最高峰のパワーを達成。ハードなサスペンションセッティング、徹底した軽量化などによって爽快な加速性能と次元の高いコントローラブルなハンドリングを実現。
これまでのホットハッチとは一線を画した優れた高性能は当時の若者のハートをわしづかみにし本格的にタイプR伝説が始まった瞬間だった。
ホットハッチのなかでも別格の性能と存在感を持っていた初代シビックタイプR。タイトなワインディングではハイパワーFRを凌駕する速さを見せた
2代目はイギリスから逆輸入
2001年に登場した2代目シビックタイプRはイギリスで生産され日本に輸出されるバイリンガルモデルだった。ストイックなアスリート的な初代に比べると、ややラグジュアリー感も増して、搭載するエンジンは最高出力215psを発生する2L 直列4気筒i-VTECエンジンを搭載し高出力と高い環境性能を両立したモデルだった。
歴代シビックタイプRのなかでは地味だが走りのポテンシャルは高かった。ただし販売台数が少なかったこともあり必然的に中古市場でもタマ数が少ない
3代目はサーキットスペシャル!?
胃袋が上下に動くような硬い乗り心地は通常で使うには苦行に近いものがあるが、その締め上げられたアシによりサーキットでは水を得た魚状態
そして2007年に3代目となるシビックタイプRが登場。これまでのシビックタイプRは3ドアハッチバックだったが、この3代目はシリーズ初の4ドアセダンがベースとなったのがトピックスだった。
2代目がややラグジュアリー色が強まったことの反動からか、この3代目はサーキット専用車か!と思うほど鍛え挙げられスパルタンなモデルに仕立てられている。
2L直列4気筒エンジンをはじめ、18インチタイヤ、専用シート、エアロパーツなど専用開発されたパーツばかりで、3代目シビックタイプRはベース車の運動性能を際立たせて、走る楽しさを徹底追求したレーシングテイストを味わえるスポーツモデルに相応しいモデルとなった。
2009年にシビックタイプRユーロが登場するものの、先代のタイプRと比べるとやや中途半端な感じが拭えなかった。
シビックタイプRユーロは2009年にイギリスから輸入するかたちで販売。フロントセクションはフィットをベースとしていて、マイルドな乗り味が特徴だった
4代目、5代目は世界最速のFFがターゲット
ニュルブルクリンクの7分50秒のタイムにちなんで750台限定で販売された4代目。428万円ながら購入希望者が殺到し、プレ値がついていたほど
そして2015年に2代目と同様にイギリスで生産されるシビックタイプRが限定750台で国内販売された。
新開発の2L直4VTECターボエンジンは最高出力310psを発生し、このモデルからルノーメガーヌとのドイツニュルブルクリンク北コースにおけるFF車最速バトルが始まった。
そして、3代目シビックタイプRの登場から10年が経過した2017年7月、シビックタイプRがカタログモデルとして登場。
初代から4代目、そしてタイプRユーロは、既存のシビックをベースに専用チューニングが施されてきたが、現行の5代目はタイプRとして専用開発された
この5代目となるモデルはこれまでのベース車のチューンアップではなく、開発当初より理想のタイプR像を追求しゼロから開発されたモデル。
搭載されるエンジンは先代と同じ2L直4VTECターボで、最高出力は320psにパワーアップ。高剛性化したボディなどによりニュルブルクリンク北コースで先代モデルのタイムを7秒近く更新し、高い運動性能を示した。
現行タイプRに搭載される2L、直4ターボは320ps/40.8kgmのスペックにまで進化。公道を走れるレーシングマシンといった感じだが乗り心地は悪くない
神格化されはじめた初代
初代(EK9)
販売期間:1997~2000年
全長4180×全幅1695×全高1360mm、1595cc、直4DOHC、185ps/16.3kgm
デビュー時価格:199万8000円
1997~2000年に販売され若者にも大人気となった初代シビックタイプRは、デビュー時に199万8000円だったが、それよりも高い中古車も少なくない
駆け足でシビックタイプRの歴史と各モデルの説明をしてきたが、なかでもNSXタイプRが示した「タイプR」の方向性を具現化しているのはシビックタイプRにおいて初代から3代目とではないかと考えられる。
その理由として挙げたいのは究極の自然吸気エンジンを搭載しているからだ。その中でも日本国内で製造された初代と3代目は現在の流通している中古車の台数から見ても、その人気の高さが伺える。
そこで、今回はシビックタイプRの初代と3代目に絞って中古車事情について紹介する。
販売終了から約18年が経過した初代シビックタイプRだが、現在中古車の流通台数はこの3カ月の間多少増減はあるものの約60台で安定している。
赤いレカロシート、チタン製シフトノブはタイプRの専用装備だった。MOMO製の3本スポークステアリングはエアバックありとなしの両方設定
中古車の平均走行距離は約12万kmで安定しているものの、平均価格は3カ月前が約148万円で、今月は約163万円と値上がり基調となっている。
所有しているユーザーからは多くの純正パーツが廃盤となって手に入らないと悲鳴が上がっているなかでも初代シビックタイプRの中古車は高い人気に支えられて値上がりしているのだ。
中古車の価格帯は約87万~約300万円と幅が広く、走行距離の多さや修復歴の有無よりコンディションの良し悪しが、ダイレクトに価格に反映されているようだ。
ボディカラーは圧倒的にグランプリホワイトが多く、黒は10台、黄色はわずか3台。タイプRといえばイメージカラーは白だが、中古車ではレアな黒や黄色が高額となっているのは興味深い。
白いエンケイ製のアルミホイールもNSXタイプRからのアイデンティティ。ルーフスポイラーは標準装備となっていた
適正価格になってきた3代目
3代目(FD2)
販売期間:2007~2010年
全長4540×全幅1770×全高1430mm、1998cc、直4DOHC、225ps/21.9kgm
デビュー時価格:283万5000円
歴代シビックタイプRで唯一のセダンボディのタイプR。フロントスポイラー、リアスポイラー、サイドスカートなどエアロを標準装着
続いては2007年に登場した3代目シビックタイプRのデータを見てみよう。現在中古車の流通台数は約110台だが、3カ月前は150台あったので、わずか3カ月で約1/3が市場から姿を消している。
その影響からか中古車の平均走行距離は約6.8万kmから約7.4万kmに延び、平均相場は約202万円から約185万円へと値落ちしている。これは走行距離が少ない高価格の中古車が売れてしまったということを表しているのだ。
価格帯を見てみると、約88.9万~約319.8万円とこちらも価格帯は幅広くなっている。しかし初代とは異なり、3代目は250万円を超える物件は走行距離が5万km以下という好条件となっているし、中には走行距離1.7万kmのホンダディーラーが扱う認定中古車も見つけることができる。
2L直4DOHCは225ps/21.9kgmのハイスペックで、極上のNAチューニングが施され高回転まで一気に突き抜けるようなフィールが最高
3代目もボディカラーは圧倒的にホワイトが多いが、こちらはブルーや赤といったレアカラーの価格は安くなっている。価格を抑えてコンディションの良いクルマを狙うのならばホワイトを外すのがいいだろう。
初代と3代目のシビックタイプRの中古車事情を見たが、平均価格の差がわずか20万円し関わらず、価格帯もかなりクロスオーバーしている。
初代シビックタイプRはネオクラシックカーの域に入っておりプレミアム価格となっている。いっぽうの3代目はまだそういった神格化は起きておらず、適正価格となってきたのかもしれない。
どちらが買いというのはかなり難しいが、タイプRらしい胸のすくような加速とどこまでも回っていきそうな回転フィーリングを味わいたいならば3代目をオススメしたい。
街中では閉口するほど硬い乗り心地もサーキットを走らせると絶妙なフィーリング。まさにサーキットに特化したコンペティションセダンだった
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