官能のパワーとV8サウンド。最後の5リッター自然吸気は絶品
ボア94mmの名機、トヨタUR系V8エンジンは、レクサスLC500が搭載する5リッターの2UR-GSE型を最後にその役目を終える気配が濃厚だ。
2UR型を自然吸気エンジンとして最初に味わったのは2007年にデビューしたISFだった。ISFはドイツのライバル(AMGやBMW・M)に勝るとも劣らないスペックと、官能的なフィールでユーザーを魅了した。中でも高回転域で高らかに響き渡るエグゾーストノートは、耳に心地よく響く官能的なナイスサウンドだった。
レクサス「カーボンニュートラル戦略」の象徴。LF-Zエレクトリファイドは、走りと造形の両面でプレミアム度を鮮明化
マニアックな5リッター・V8自然吸気エンジンが、世界で最も美しいクーペ、LCに積まれたのは2017年。477ps/7100rpm、540Nm/4800rpmのスペックと、世界最速の変速スピードを誇る10速ATの組み合わせは、印象的な造形にふさわしいパフォーマンスをもたらした。レクサスの「リボーン」を牽引したこのラグジュアリークーペには、3.5リッターV6とモーターを組み合わせたハイブリッド仕様の500hもラインアップされ、デビュー当初は個人的にハイブリッドのほうがLCのキャラクターにふさわしい、と思っていた。だが、V8の500にじっくりと乗って考えが変わった。
とびきり優雅で贅沢な走り。今のうちにこの魅力を味わおう!
2UR-GSE型V8は、同じレクサスのLFA用V10と並ぶ、日本が生んだ最高のマルチシリンダーNAユニットである。とにかく踏み込む瞬間がたまらなく気持ちがいい。いまとなっては驚くほどのパワースペックではないし、実際、思い切りアクセル踏み込んだところで速さはスーパースポーツの域には届かない。だが、それがかえっていい。エンジンフィールをじっくり楽しめるからだ。小気味いい10速ATもこのエンジンに合っている。
通常は豊かなトルクを感じながらゆったりとクルージングを楽しみ、状況に応じてV8の本領を堪能する。LC500には、とびきり贅沢で優雅なドライビングプレジャーがある。しかもエンジンサウンドが絶品。絶妙に調律された珠玉のV8サウンドは、それだけでも500を選ぶ価値がある。
LC500は、内燃機関の音と心地よさを、いまのうちに思い切り楽しんでおきたい……、そんなユーザーにぴったりのスペシャルモデルだ。クーペもいいが、4層構造のソフトトップを採用したコンバーチブルも魅力的である。
とはいえ正直にいうと、もう少し小さめのボディ、ISとの組み合わせがパワーフィール的にはベターだと思う。実際、北米市場ではIS500という2UR型を積んだ限定車が登場した。日本市場への導入を切に望む。たとえそれが最後の2UR型となったとしてもだ。
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