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ベルギーGPの隔年開催決定……ここから見えてくる、F1の将来の姿

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ベルギーGPの隔年開催決定……ここから見えてくる、F1の将来の姿

 F1はスパ・フランコルシャンとF1ベルギーGPの開催契約を2031年まで延長することを発表した。しかし延長される6年の契約期間のうち、実際にベルギーGPが開催されるのは4年のみ。2028年と2030年は開催されないことになっており、この枠を使って、F1が目指していた欧州ラウンドのローテーション開催が現実のモノとなった。

 現在のF1は年間24戦開催。コンコルド協定では1年間の最大開催数は25戦と定められているが、現実的にはこの24戦が、年間に開催できる上限数と考えられている。しかし新規開催を希望する国や地域が相次いでおり、それらを受け入れるためにはなんとかして現状の開催数を削減し、スケジュールを空けなければならない。

■スパ・フランコルシャン、2031年までF1ベルギーGP開催契約を延長。しかし28年と30年は開催せず……欧州戦ローテーション開催への布石

 これらの新規開催を求める国や地域は、政府などの支援を受けている場合が多く、資金面でもかなり強力である。これに伴うように、既存のグランプリの開催権利料も高騰。政府などから資金的なバックアップをあまり手厚く受けられていないグランプリが権利を獲得・保持するのは、年々難しくなっている。特にヨーロッパでのグランプリは厳しい状況に置かれ、いつ開催権利を失っても不思議ではないという状況だ。

 ザントフールトでのオランダGPは、2026年を最後に契約終了となることが決まった。これにより、スパなど他の欧州のグランプリはいくらか安堵しただろうが、交渉する上ではF1側の立場ははるかに強かった。

 スパは最近積極的な投資を行い、老朽化した施設を改修。8000万ユーロ(約130億円)以上を費やして、新しいグランドスタンドの建設や、ファンのための設備のアップグレードなどを行なった。これによりレースのウィークエンドをより魅力的なエンターテインメントとすることを目指し、その姿勢はF1の首脳陣を感心させたという。しかし交渉は簡単ではなく、結局は毎年ではなくとも、F1開催カレンダーに留まることを決断した。

 スパにとってはもっと悪い結果になる可能性もあった。サウジアラビアは年2回の開催を希望していて、現在のF1への経済的な貢献を考えれば、それもあながち夢物語とも言えない状況である。そしてサウジでの2戦開催となれば、スパでの開催がなくなってしまう可能性は十分になる。もちろんそれは、熱心なモータースポーツファンにとっては痛手となっただろうが。

■イモラの将来は?

 スパの契約期間は、他のヨーロッパでのレースも隔年開催となり、ローテーションシステムに組み込まれるということを裏付けるモノである。となれば、この枠に入るのがどのグランプリになるのかだろうか?

 2026年からはスペインGPがマドリードで開催されることになる。しかしこの2026年に関しては、現在スペインGPを開催しているカタルニア・サーキットの開催契約も残っているため、スペインで2戦開催ということになるはずだ。となれば現行のグランプリを1戦減らすということにならざるを得ない。

 エミリア・ロマーニャGPを開催するイモラ・サーキットは、今季限りで開催契約が切れることになっている。またメキシコシティGPも今季までの契約となっているが、契約を更新できる可能性はこちらの方が高いと見られる。

 F1のステファノ・ドメニカリCEOは以前からイタリア国内で2レースを開催するのは難しいと主張してきた。モンツァでのイタリアGPは、昨年11月に2031年まで開催契約を延長済み。それを考えれば、イモラの将来が明るくはないということは明らかだった。

 イモラは、インフラやファンへのおもてなしという面で遅れを取っているサーキットのひとつであると言える。それを考えれば、スパとのローテーション開催候補となるには弱いのは間違いない。

■スパ隔年開催が2028年からになる理由

 スパが6年中4戦開催する契約を交わしたことは、実際にはローテーションシステムの施行まで2年の猶予が持たされたということにもなる。これはおそらく、現在F1新規開催を求める他のグランプリの準備が、2027年もしくは2028年まで整うことはないということを示唆している。

 新規開催を求める国や地域は、キディヤでのサウジアラビア2戦目のグランプリだけでなく、タイや韓国、ルワンダ、大阪など。ドメニカリCEOは35以上の国や地域と話をしていると明かしている。しかしいずれも、まだ計画の初期段階である。

 これらのうちどのグランプリの開催が実現するのかということを推測するのは時期尚早。しかもキディヤの巨大プロジェクトを除き、サーキット建設が着工された候補地はいまだにないのだ。すでにサーキットを持っている南アフリカやアルゼンチンなども開催に名乗りをあげているが、政治的な駆け引きを疑ってかかるのが賢明であろう。

 どのグランプリが新たに開催権を得るかは分からないが、それでもスパが隔年開催となったことで、F1は新たな市場に打って出るための”柔軟性”が、カレンダーに出来上がったということは間違いないだろう。

 2023年には、南アフリカGPの復活が叶わず、ベルギーGPの将来が救われたという事例があった。それを考えれば、前述のような新規開催グランプリが実現しなかった時に、イモラがその穴を埋める可能性はあるかもしれない。

 しかし代替開催の候補地としてイモラよりもはるかに強力なサーキットがある。それはトルコだ。

 イスタンブールパーク・サーキットは、コロナ禍でフライアウェイ戦がほとんど開催できなかった2020年に、トルコGPを開催した。急な開催決定だったにもかかわらず、サーキット側はそれに見事に対処してみせ、その翌年にもトルコGPが開催された。しかもトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は昨年、FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長とこの件について話し合っており、F1がトルコに戻ることを熱望していると言われている。サーキットの運営会社も、F1開催を復活させることを目指すと明言している。

 なおトルコの隣国であるアゼルバイジャンGPも、2026年限りで現行の開催契約が切れることになっている。しかしバクーとしては契約を延長することを目指している。

 今回明らかになったスパの隔年開催。このローテーションシステムにどのレースが加わるのかはわからずとも、24戦という限界を超えずに、より多くの世界都市に進出しようとするF1の画期的な第一歩と言うこともできるだろう。そしてF1を開催することの需要が世界中で高まっていることを考えると、これは最後ではないだろう。

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