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【特集 比べるワゴン─ジャーマンプレミアム編 (1)】オーセンティックだからこそ、浸りつくしたい「ワゴン」の世界

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【特集 比べるワゴン─ジャーマンプレミアム編 (1)】オーセンティックだからこそ、浸りつくしたい「ワゴン」の世界

ジャーマンプレミアムのセグメントを牽引してきたメルセデス・ベンツのEクラスとBMWの5シリーズ。中でもそれぞれのワゴンモデルは各ブランドの個性際立つ存在として今なお注目を集めている。そんな本特集のメインに相応しい2台を連れて彼らの妙味を感じてきた。(MotorMagazine 2024年10月号より再構成/文:島下泰久/写真:永元秀和)

試乗モデル概説:BMW 523d xDriveツーリング Mスポーツ
2023年7月に登場したセダンに続き、24年2月にデビューしたのが「ツーリング」です。セダン同様にトラディショナルなデザインを踏襲しつつ、コンセプトを一新、風格を伴った存在感とあでやかさ、エレガントさを兼ね備えています。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

5シリーズ ツーリングにおいて初となる48Vマイルド・ハイブリッド・システムを、ディーゼル・エンジン搭載モデルに採用。ワゴン初のBEV「i5ツーリング」も用意されました。

通常570~最大1700Lの容量はEクラスに及ばず。ただしスクエアな形状で使い勝手は良好です。ダンパー付きのトランク床を上げると、床下収納が出現、先代よりも小さくなった印象だが使い勝手はEクラスよりも上と言っていいでしょう。

【BMW 523d xDrive ツーリング Mスポーツ 主要諸元】
●エンジン:直6DOHCディーゼルツインターボ+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:145kW(197ps)/4000rpm
●最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1500-2750rpm
●WLTCモード燃費:15.7km/L
●CO2排出量:164g/km
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:5kW(7ps)/6000rpm
●モーター最大トルク:25Nm(2.5kgm)/500rpm
●全長:5060mm
●全幅:1900mm
●全高:1515mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:1940kg
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:8速AT
●ブレーキ フロント:Vディスク・リア:Vディスク
●タイヤサイズ フロント・リア:245/45R19
●価格:960万円

試乗モデル概説:メルセデス・ベンツE300 ステーションワゴン エクスクルーシブ
新型Eクラス ステーションワゴンは2024年1月に登場しました。今回試乗した(E300ステーションワゴン エクスクルーシブ)は、3月に遅れて登場した最上位グレードです。

新たなエクステリアデザインは、メルセデスの伝統と先進性を融合したもの。Eクラスの伝統を受け継ぎながら、前衛的なトレンドセッターとの間をつなぐ架け橋のような存在となっています。

トランク容量は通常615~最大1830L。リアシートはかなりフラットに倒れるので車中泊もできるでしょう。床下収納は底深で容量も大きいのでしすが、トノカバーの収納がないほか、トランク床は紐で引っ掛けて固定する簡素なものです。

インターフェイスのデジタライズも一気に成熟。助手席側のディスプレイもさることながら、ドライバーメーターの3D表示は圧巻です。メーターに奥行きが感じられ、運転において重要度の高い数式表示の視認性にも驚かされます。

【メルセデス・ベンツ E300 ステーションワゴン エクスクルーシブ 主要諸元】
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1997cc
●最高出力:190kW(258ps)/5800rpm
●最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-3200rpm
●WLTCモード燃費:13.6km/L
●CO2排出量:171g/km
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:17kW(23ps)/1500-2500rpm
●モーター最大トルク:205Nm(20.9kgm)/0-750rpm
●全長:4960mm
●全幅:1880mm
●全高:1480mm
●ホイールベース:2960mm
●車両重量:1950kg
●駆動方式:FR
●トランスミッション:9速AT
●ブレーキ フロント:Vディスク・リア:Vディスク
●タイヤサイズ フロント・リア:225/55R18
●価格:1139万円

エアサスペンション搭載の追加モデル
2024年6月号の第二特集「きっとあなたも好きになる、ワゴンの世界」で私は、今こそワゴンを選ぶのが粋じゃないかという話を書いた。スタイルを感じさせるクルマを選ぶならば、ワゴンは間違いなく今、選択肢に入れるべき存在だという話である。

特集自体がワゴン、しかもドイツ生まれのそれだという今回、プレミアムワゴンという括りの下に連れ出したのは、この2台。

24年春デビューのメルセデス・ベンツE300ステーションワゴン エクスクルーシブ(以下、E300ワゴン)、そして導入されたばかりのBMW 523d xドライブ ツーリング Mスポーツ(以下、523dツーリング)だ。

その6月号では、まだ5シリーズは先代モデルだったが、今回は新型のお出ましである。対するEクラスも、記事内で触れたエアサスペンション搭載の追加モデルということで、最新のラインナップが揃った。改めて2台の実力を比較し、魅力をあぶり出してみたい。

ツーリングはディーゼルとBEVを用意
新型5シリーズ ツーリングは、セダンと同じく主力にBEVのi5を据えた大胆なラインナップで登場した。しかもセダンには設定される2L 直4ガソリンターボの523iはなく、内燃エンジン搭載車は2L直4ディーゼルツインターボの523d一択となる。

正直、ツーリングに限らずPHEVは日本にも導入するべきだと私は考えている。

セダンの導入時に「2030年にグローバル販売の50%をBEVとして、電動化で世界をリードするというBMWとしてのコミットメントを先取りする」という趣旨の発言があったが、本国にはiの設定があるのだし、なにより待っているユーザーが数多くいるのだから、そこを無視する理由はないはずだ。

大胆と言えば見た目もそう。これもセダンと同じく、端正とすら言えた先代から一気にスポーティに振られたデザインは議論を呼ぶに違いない。

しかしながらBMWはそれこそクリス・バングル時代のように定期的にこういうことを仕掛けてくるメーカーである。それが今後、どんな風に収れんしていくのか、あるいは自分の目が慣れていくのかは興味深い。 

実際この新しいツーリングについて、私はすでに結構ワルくないなという気がしてきた。伸ばされたフロントオーバーハングには、このぐらいのリアのボリュームが釣り合う。

それを鈍重に見せないようにリアウインドウをさらに倒してクーペっぽさを強めていることも含めて、バランスは好ましい。もちろん、その分サイズが大きくなり過ぎたのは事実。全長5mオーバーは、確実にユーザーを選んでしまうはずだ。

一方、このスタイリングと引き換えに残念な変更が施されてしまった。伝統だったテールゲートとは独立してリアウインドウが開く機構が廃止されたのだ。テールゲートが寝かされたことで、ヒンジを収めるスペースが厳しかったのは想像できるが、5シリーズ ツーリングを選ぶ理由のひとつが失われたようで寂しい。そう感じる人はきっと多いのでは。

本命のエアサス装着車が登場
メルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴンは、登場当初のラインナップに加えて、このE300ワゴン、そしてE220dオールテレインが加わって、豊富なバリエーションが揃ったところだ。

さらにこの両車は、これまでセダンE350eのE350eスポーツ エディション スターでしか選択できなかったエアマティックサスペンションの装着が嬉しいポイント。しかもE300ワゴンは、現行Eクラスで唯一、ノーズ先端にスターマークを配したフロントデザインが与えられている。

柔らかな曲面で構成されたエクステリアは、5シリーズと並べると、コレは本当にライバル比較なのかと思うほど、キャラクターの違いが鮮明だ。ショートオーバーハング、ロングノーズという古典的プロポーションの端正なフォルムは落ち着き、威厳を感じさせる。

もっとも当初は、ブラックアウトされたグリル、そしてスターマークを使ったテールランプなどに拒否反応もあったわけだが、今やそうした声もだいぶ小さくなったように感じられる。見慣れてしまうと、気にするほどでもない。いや、気にならな過ぎるほどと言っていいかもしれない。

後席用クライメートコントロールを「唯一」装備
両車ともインテリアは基本的にセダンと共通だ。いずれもハイテク感と上質な仕立てが絶妙に組み合わされた空間となっている。

5シリーズは床下にバッテリーのための空間があるぶん、前席では着座位置が少し高めに感じるが、後席ではそれほどでもない。頭上には拳ひとつ分の、そして膝前にも1・5個分の余裕がある。シート自体も座面が大きく包まれ感があって快適だ。

これはマストな装備だと思ったのはセレクトパッケージに含まれるパノラマガラスサンルーフである。間にフレームの挟まらない大面積の1枚物なので、後席からの眺めはまさにパノラマ。この開放感は堪らないものがある。

対するEクラスの後席は、乗降性を意識したのか座面の左右端がラウンドした形状になっていて、座面のサイズ自体もやや小振りだ。足元も十分な広さはあるが、5シリーズよりはわずかにタイトに感じられる。

価格を少しでも抑えるために、標準装備が絞られている新型Eクラス。

後席独立のクライメートコントロールが標準で備わるのはステーションワゴンでは、実はこのE300ワゴンだけとなる(残すはE220dオールテレインにオプション設定のみ)。あるいは、それだけでも選択理由になるという人がいるのではないだろうか。

なお、523dツーリングも4ゾーンオートマチックエアコンディショナーはオプション。その他のモデルは標準装備である。

後席の快適性か?ワゴンとしてのゆとりか??
続いては大事な荷室を見てみたい。

開口部周辺、とくにヒンジ周りの処理は5シリーズの方がすっきりしていて見栄えは断然良い。開口部も大きめで、荷物の積み込みはしやすそうだ。

ただし、前述のとおりリアウインドウの独立開閉機構はなくなってしまい、また、トノカバーもテールゲート連動で収納されるものではなくなった。

注目は荷室の大きさだ。比較すると5シリーズは奥行きが短く、幅は若干広そう。高さはほぼ同じである。公表されている容量は5シリーズの通常570~最大1700Lに対して、Eクラスが通常615~最大1830Lだ。

この数字、そして後席の着座感から見えてくるのは、5シリーズの方が後席の広さにより多くのスペースを割り振っているということだ。

逆に言えば、Eクラスは「ワゴンは積載性こそ大事」という理念で開発されているのだろう。これは良い悪いではなく、考え方の違いが表れたポイントである。

ディーゼルエンジンはきわめて静か。乗り心地は上質
では走らせたらどうなのか。今回は街中、そして高速道路を中心に乗り換えながら試した。

523dツーリングは、まずなにより静粛性の高さが印象的だ。最高出力197ps、最大トルク400Nmを発生する2L直4ディーゼルツインターボエンジンは振動、騒音がきわめて小さく、ベタな言い方をすればディーゼルとは気づかない人もいそうなほど。

そのうえで車体側の遮音、さらには風切り音、ロードノイズなどの処理も行き届いているようで、室内は常に静かに保たれる。

乗り心地も上質の一言。サスペンションは終始しっとりとした感触で、しかも速度を上げれば姿勢はフラット感が増してくる。

新型では、523dツーリングはリアサスペンションがエアスプリングではなくなっているのだが、そうとは思わせない絶妙なフィーリングを味わうことができる。

一方で気になったのは小回り性だ。切り始めのステアリングホイールの反応は良いのだが、その先が思ったより入っていかない感じ。

実際、最小回転半径は5.8mと、Eクラスの5.4mより大きいのである。試乗車は後輪操舵も含むインテグレーテッドアクティブステアリング付き。もう少し、これを活かしても良いのではないだろうか。

これぞEクラスというふんわり感を堪能できる
E300ワゴンのエンジンは、2L直4ガソリンターボエンジンで最高出力258ps、最大トルク400Nmを発生し、これにさらにISG(インテグレーテッド スターター ジェネレーター)の17 ps、205Nmが加わる。

ちなみに523dツーリングにもマイルドハイブリッドシステムが備わるが、こちらは7ps、25Nmというスペックに留まる。

9速ATのメリット、吹け上がりの軽やかさもあり、走りっぷりはより力強くスポーティだ。エンジン音はこちらもよく抑えられていて、まるで自分から遠い位置に積まれているかのように思える。

エアマティックサスペンションを備えるシャシは、これぞEクラスという印象のふんわり感を堪能させてくれる。

比較的低速で路面の継ぎ目を通過する時などには思いのほかガツンと強めの入力があり、質の低い振動を伴うこともあるのは事実だが、速度が上がってくると、そのストローク感は絶妙。思わずペースが上がってしまい、そしてもっと遠くに行きたくなる乗り味と言える。

ワゴンだからこそ「無難」に妥協はしたくない
2台をじっくり乗り較べての率直な印象として、今回とくに印象的だったのは523dツーリングの走りである。中でもその静粛性、骨太感は見事なものだ。

しかしながら速度を上げた時のE300ワゴンのクルーザーにでも乗っているかのような気持ち良さも捨て難い。もしもこの2台で悩みはじめたら、ちょっと困ったことになりそうだなと、嬉しくも悩ましい気持ちになった。

走りだけの話ではない。デザインやパッケージング、使い勝手や運転支援装備の考え方なども、両車の違いは想像以上に大きい。結局のところ、それは優劣ではなくスタイルの違いという話になる。

冒頭で改めてワゴンを選ぶ価値について書いたが、ワゴンにはスタイルのあるクルマを求める、要するに無難な選択などしたくないという人を導く何かが宿っている。

とくにドイツ生まれのモデルたちは、カチッとした作り込みと練りに練られた実用性で、そんなワゴンならではの世界に存分に浸らせてくれるはず。

いずれも強く主張する、まさに譲れないスタイルを持つ最新のプレミアムワゴン2台に触れて、改めてそんな風に思わされたのである。

[ アルバム : 特集 比べるワゴン─ジャーマンプレミアム編 (1) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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