日本では、2025年までに販売比率の35%、2030年までに100%をピュアEVにするという目標を立てているボルボが、新型EV『C40リチャージ』を発表。2021年秋に導入するという。EVとして初めて日本に導入するのは、この『C40』になるとトップが明言している。
日本でも人気の高いボルボの新型モデルについて、そしてボルボという小さな自動車メーカーだからこそ打ち出した野心的な電動化戦略について考察していきたい。
徴兵制のある国のクルマはコレだ PHEV、EV、SUV、軽装甲車まで!!
文/工藤貴宏
写真/VOLVO
【画像ギャラリー】ピュアEVとして登場!ボルボ『C40』全方位写真集!!
■10年以内にすべてのボルボ車がEVに!? その真意はどこにある?
「2030年までにすべてのボルボ車をEVにする」
そんな宣言を打ち立てたのが、スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」だ。
それはすなわち、あと10年後には、エンジン付きの車両の生産をやめているということを意味する。そんな計画へ向かってボルボは今後数年のうちにいくつかの電気自動車を発売する予定。4年先の2025年までに世界販売の50%を電気自動車、残りをハイブリッドとするというなんとも野心的だ。
日本においては2025年にEV販売比率35%を目論んでいる。それはパーセンテージとしては全世界よりは低い数字だ。とはいえ、現時点における同社の日本でのEV比率が0%ということを考えれば、かなりチャレンジングといえるプランに変わりはない。
『Ⅽ40』はコンパクトなSUVとなる。完全EV化をこれからの10年で達成しようするボルボの決意表明が、完全ブランニューの『C40』に託された形だ
なぜボルボは早いタイミングでの完全EV化へ舵を切り、宣言したのか。
その根底にあるのが、地球温暖化を抑えるために二酸化炭素などの温室効果ガスを発生しない、いわゆるカーボンフリー社会の実現であることに間違いはない。
そもそも地球温暖化と二酸化炭素の因果関係は断定されているわけではないのだが、欧州ではその大きな流れができているのだ。グレタちゃんのように声高にそれを叫ぶ人もいて、もはやだれにも止められない勢いになっているのだ。それが自動車産業に覆いかぶさっているのは間違いない。
しかし、それだけではない。
ボルボという小さな自動車メーカーがマーケットで強い存在感を示していくためには、時代を先取りし、率先して何かを進めていく必要がある。同社にとってそれはこれまで、安全だった。3点式シートベルトを実用化して安全のためにその特許を無償公開、クルマの安全性能が大きく叫ばれる前から行っている安全なクルマ作りを行ってきた。
フロントフェイスの角張り感からリアに向けては流れるようなスタイル。随所に今どきなデザインも取り入れて、EV時代のボルボを表現している
さらには実際の事故を分析したデータベースを社内だけに留めず広く公開するなど。安全において世の中をリードしてきたのは誰もが認めるところだ。さらには2007年には「ヴィジョン2020」としてボルボ車に搭乗中の死亡者と重傷者をゼロにするという目標を掲げ、そこへ向かってきた。
そして、安全に続く次の大きな柱が、持続可能社会に向けた全車EV化というわけ。他メーカーより先に進めることに意味があり、それがプレゼンスを高めることにつなげていこうというのだ。
■全車EV化の先駆けとなる『C40』はどんなクルマ?
そんなボルボが先日、「2030年までに全車EV化」という宣言とともにワールドプレミアしたのが、EV専用モデルの「C40」。40という数字からもわかるように、このモデルはコンパクトボディだ。
特徴は、伸びやかなクーペスタイルのリヤデザインだ。ボルボの“C”といえばこれまで「クーペ」を示していたし、C40のシルエットもいわゆる“クーペSUV”である。だからCがクーペを意味するのかと思いきや、実はそうではなく「クロスオーバー」なのだという。参考までにボルボはこのC40の説明において、「クーペ」という言葉は一度も使っていない。
いかにも「ボルボ」なフロントと比べると、リアはボルボのクーペデザインの流れをくむ挑戦的なもの。EV化に先鞭をつけ、他社はこのリアスタイルを眺めてついてきなさいと挑発するかのようだ
C40の日本発売は2021年秋を予定。本国などではすでに同社初のEVとなる「XC40リチャージ」をリリースしているが、それは日本ではまだ発売されていない。日本においてはC40がボルボとして最初のEVになるという(その後XC40リチャージを発売予定)。
今回公開されたC40はモックアップであり、スペックの詳細などもまだ明らかになっていない。しかしながらボディ前半分がXC40に近いことからもわかるように、同社のコンパクトモデル用プラットフォームである「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)」を使ったEVと考えていいだろう。
フロントデザインはボルボのEVを表し、リヤスタイルは既存のモデルにはない、Cピラー沿いに下ってテールゲートで左右をつなぐ細いラインを描くランプが特徴的。久々に登場するボルボのニューモデルだけに、随所に新しいテイストが盛り込まれている。
特徴的なクーペスタイルだが、ボルボはクロスオーバーだと言う。ただ、後方視界が心配になる。安全に抜かりのないボルボだけに、その点は抜かりなくこのスタイルを実現しているのであろう
インテリアも、インフォテイメントシステムをGoogleと共同開発してAndroidを組み込むなど新しい試みが大きな注目だ。ざっくりといえば、AndroidAutoでクルマにスマホをつなげるのでなく、スマホ自体をクルマに組み込んでしまったとイメージすればいいだろう。もちろんクルマに関わるアプリが多く備わり、そのアップデートはオンラインでできるという。
■『C40』は販売の仕方から新しく! EVの敷居を下げ普及を狙う??
このC40は、販売においても新しい取り組みを行う予定だ。まず購入の入り口をWEBサイトとし、オンライン販売のみとする。
これは商談をスムーズに進めるためだけでなく、価格の透明化などを推し進める狙いもあるようだ。現状のクルマ販売は、値引きの有無などユーザーによって購入条件が異なるケースもある。それをなくし、だれもが同じ条件で購入する公平性も狙っていると考えていいだろう。
とはいえすべてをオンラインで行うのではなく、仕様のセレクトなどをオンラインで行ったのち、納車やアフターケアなどは従来同様にディーラーで行うことになる。ボルボは、今後導入するすべてのEVをオンライン販売にする計画だという。
EV化に合わせ、オンライン販売やインフォメイトシステムにAndroidAutoを導入するなど意欲的な反面、スマートすぎてクルマとしての味が薄くなる懸念もなくはない
また日本において、最初の100台のC40はサブスクリプションにて提供。このサブスクがまた驚くべきものだ。
まず、3カ月たてば追加負担なく自由に車両を手放すことができるという縛りのなさがスゴイ。そのうえ、車両代に税金やメンテだけでなく任意保険料まで含めたコミコミプランにするというから気軽である。
これは、手放すときの下取りを考えずにEVを選べるようになる、もしEVに馴染めなくても短期で気軽に手放せる、などユーザーメリットも多い。ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長は「これでEV購入のハードルを下げる」と意気込む。
ところで、C40の実車お披露目はニューヨーク、ロンドン、そして東京の3カ所で同時に行われた。世界のわずか3都市のひとつに東京が選ばれたのは日本人として素直にうれしいが、そこにはどんな狙いがあるというのだろうか。
『C40』の実車お披露目の地に東京も選ばれた。ボルボにとって日本市場が重要視されている訳だが、今やネット後進国とまで言われつつある日本で、野心的な試みが受け入れられるのか? 注目だ
マーティン社長は「それはボルボがいかに日本のマーケットを重視し、期待しているかの証」という。また「日本市場でEVの話題を喚起し、他ブランドも含めてその存在感を高めていくのも狙い」とのこと。
いずれにせよボルボ初のEV専用モデルとなるC40。ボルボが目指す「プレミアムEVマーケットのリーダー」への大きな前進となりえるのか。そして、日本でどう受け入れられるのか。そんな視点からも興味深いモデルだ。
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みんなのコメント
国産含め2025年以降はバッテリー性能も上がり内燃機関の車の販売数と並んできて、2030年には完全にEVが主導権を握るでしょう。
それでも内燃機関は生き残るけど、税金がかなり上げられて絶滅に向かうのは間違いないでしょう。
ボルボはプレミアムEVメーカーとしての地位を確立して、日本でも安全性の高いコンパクトEVをヒットさせているでしょう。
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