この記事をまとめると
■ノッチバック、ハッチバックなど、クルマ用語には「●●バック」がいくつかある
同じ車種で同じエンジンでもセダンとワゴンでは走りの性能が異なる理由とは
■アウトバック、スポーツバック、クロスバックなど車種名につくことも
■それぞれの意味について解説する
クルマ用語には「バック」がつくものが多数!
「そういえば、ノッチバックって言葉、最近はほとんど聞きませんねぇ。キミの世代だと聞いたことなんかないでしょ? そもそもノッチって何なんですかねぇ……?」
隣に座る若い女性スタッフに同意を求めたのは、ときどき仕事で御一緒する某代理店の担当氏だ。僕より少し若いけど、まぁ似たようないいオヤジである。クルマまわりの仕事をしてるのだから知ってるはずなのにあえて訊ねるということは、おそらく僕に説明させて若いスタッフに覚えてもらおうという魂胆でもあるのだろう。一緒にいることに慣れちゃった上司がクドクド説明してもまったく頭に残らなかったのに、初めて会った“その道のプロ”と紹介された人と話してすんなり覚えちゃった、なんて経験は僕にもある。
なるほど。スチャラカに見えるオヤジだけど、意外やいい上司なのかも知れない。僕は話に乗ってあげることにした。以下、オヤジと僕の会話である。
「まぁ、ノッチバックって昔ながらの基本のカタチですからね。その基本が最初にあったうえで、ハッチバックだとかファストバックだとか、そういう言葉が生まれたわけで。クルマの基本といえば昔は四角っぽいセダンだったでしょ? 今でいうならトヨタのセンチュリーとか。スポーティなヤツだとアルファのジュリアとかもそうですけど。
セダンって乗員のスペースであるキャビンと荷物を入れるラゲッジスペースがはっきりわかれてるじゃないですか。明確な段差があるわけです。ノッチ(notch)ってもともとは“刻み目”とか“切り込み”の意味で、転じて“段差”を示したりもする言葉。バック(back)は、まぁ“背中”とか“後部”ですよね。つまり、後ろに段差があるカタチをしてるから、ノッチバックなんですよ。これはドアの枚数に関係なくて、ノッチバックのセダンとかノッチバックのクーペとか、あえて分類するとそうなるわけです」
「なるほどね。解りやすいです。そうなると、ハッチバックっていうのは……」
「そうそう。後ろにハッチ(hatch)がついてるカタチのことですね。もともとは船の甲板とかの跳ね上げ式の出入り口を指してたみたいですけどね。まぁ後ろに荷物を出し入れするためのガバッと開くドアがあるクルマ、です。昔のトヨタはリフト(lift)する、つまり持ち上がるドアが備わってるってことなのか、リフトバックなんて呼んでましたけどね。
セリカ・リフトバックとか、カローラ・リフトバックとか。まぁそれはそれとして、日本の軽自動車あたりは、ほとんどのクルマがハッチバックです。デイリーなクルマとしての利便性が高いですからね。だけどこれまた昔話だけど、どう見てもノッチバックの4ドアセダンなのにじつはハッチバックつきの5ドアだった、なんてクルマもありました。ダイハツ・アプローズっていうクルマなんですけどね。あれはイマイチよくわからなかった(笑)」
オヤジがニコニコ笑っている隣で、若者女子は知らない車名が出るたびにスマホでチェックしてる。ちょっと嬉しくなってきた。再びオヤジが問う。
「でも、スポーティなクーペだったりすると、ハッチバックっていわずにファストバックっていわれることが多いですよね? どう違うんです?」
女性が好きなちょめちょめバックとは!?
「ああ、そうか。カタチとしては同じグループだけど、ハッチがあるのとないのが存在してるから、ちょっとわかりにくいかも知れないですね。ファストバックはリヤウインドウが比較的寝ていて、リヤに明確なノッチを持ってないクルマ、つまりルーフラインがなだらかにリヤエンドに向けて傾斜していくスタイリングを持つクルマを指すんですよ。2ドアのクーペにはこのカタチが多いし、4ドアのクーペもそうですね。そこにハッチがあるかは関係なくて、分類するなら同じファストバックなんです。
GR86とスバルBRZ、それにアストンマーティンのDB11とかはハッチを持たないファストバック、プジョー508とか今のホンダ・シビックとかマツダ3とかはファストバックでありハッチバックでもある、という感じですね。まぁマツダ3にはノッチバックのセダンもありますけど。ファスト(fast)には“速く”とか“高速の”みたいな意味があるんで、そういうイメージから名づけられたカタチなんでしょうね」
「ちなみにファストバックからの派生みたいなものとして、カムバックっていうのもあるんですよ。これはファストバックのルーフラインがリヤエンドに向かって流れていく途中をスパッと垂直に切り落としたデザインのこと。ヴニバルト・カムっていうドイツの空気力学の専門家が実証した独自の空力理論に沿ったカタチなんですけどね。カムバックっていうのはアメリカ的ないい方で、イギリスではカムテールっていわれることが多いんですけどね。イタリアでのコーダトロンカっていう呼び方の方がポピュラーかな? アルファロメオのTZは有名ですね。日本だとホンダCR-XやCR-Zも、カムバックを採り入れたクルマですね」
「なるほど。ためになるなぁ。でも、ファストバックみたいなクルマなのにスポーツバックっていわれてるクルマもあるじゃないですか。あれはどうなんですか?」
「アウディですね。スポーツバックっていうのは、アウディ独自の呼び方なんですよ。A5スポーツバックとかA7スポーツバックとか、4ドアのファストバックでリヤにハッチのあるモデルをそう名づけてるんです。若々しくスポーティなイメージを持たせようとしたんでしょうね」
「アウトバックっていうのは?」
「ステーションワゴンをベースにしたクロスオーバーSUVにつけられる、スバル独自のネーミングです。アウトバック(outback)っていうのは、もとはオーストラリア内陸部の砂漠を中心としたエリアのことで、それが転じて“奥地”だとか“未開の地”みたいな意味を持つようになった言葉です。そういうところも難なく走れるタフなステーションワゴン、っていうことですね。これもクルマのイメージを伝えるため、でしょう」
「クロスオーバーっていう言葉に似た、クロスバックっていうのもありますよね?」
「ありますね。DS3とDS7は、正式にはDS3クロスバック、DS7クロスバック、ですから。これもアウディのスポーツバックと同じで、クロスオーバーSUVであることを示す独自のネーミングです。ある意味、どういうクルマかわかりやすいじゃないですか。まぁ女性の服とか水着に背中にストラップだとかバンドだとかが交差してるデザインのものがあって、それもクロスバックって呼ぶみたいですけど、そっちとはたぶん関係ないと思います」
「いろいろあるんですねぇ。……それじゃ最後の質問です。女性が好きなXXバック(彼は何と“ちょめちょめバック”といった! いつの時代だ……?)っていうのがあると思うんですが、そのちょめちょめとは何でしょう?」
「……えっ?」
「あるでしょう、女性が好きなちょめちょめバック。それは何でしょう?」
……コノヤロー。一瞬ちょっと怯んだじゃないか。まぁ望んでる答えがわからないわけじゃない。でも隣に女性スタッフがいるわけだから、それは限りなくハラスメントだろ……っていうが“女性が”じゃなくて“あんた”が好きなんだろ? ……と心の中に罵った瞬間、別の答えがポン! と浮かんで来た。
「ああ、キャッシュバックですね。……でしょう?」
女性スタッフはニッコリしながらうなづき、オヤジはクチを開けてポカーンとした。僕の勝ち、である。
「あはっ……あははっ。ですねー」
この男、“意外やいい上司”なんかじゃなくて、やっぱり全力でスチャラカだったのか……。しかも、1グラムもおもしろくないし……。僕は目の前の女性スタッフさんの日々の苦労を想像しつつ、お話の中のひとつでもふたつでも知識として頭に残ってたらいいなぁ……と思ったのだった。
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