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試乗 トヨタ新型ヤリス・プロトタイプ 内燃/ハイブリッド/内装の進化は?

掲載 更新
試乗 トヨタ新型ヤリス・プロトタイプ 内燃/ハイブリッド/内装の進化は?

試作車、日本で試乗

text:Naoki Imao(今尾直樹)

【画像】新型ヤリス・プロトタイプ試乗 全48枚

photo:Keisuke Maeda(前田恵介)

(スペックはすべてトヨタ社内測定値)

11月4日に幕を閉じた東京モーターショーで一般公開されたトヨタの新しいコンパクト・カー、ヤリス。そのプロトタイプの試乗会が袖ヶ浦フォレストレースウェイで開かれた。

ご存じのように、ヤリスは1999年に登場したヴィッツの海外名である。トヨタは2017年からヤリスでWRC(世界ラリー選手権)に復帰しており、2019年はオィット・タナックがドライバーズ・タイトルを獲得するという快挙を成し遂げた。このようなWRCの栄光を江湖(こうこ)に伝えるためにも、名前の統一が必要だったに違いない。

国内では新型車、グローバルでは第4世代となる新しいヤリスの特徴は、プラットフォームから、エンジン、トランスミッション、サスペンションにいたるまで、すべて新開発だということ。

とりわけ、先進国向けコンパクト・カー用に開発されたTNGAプラットフォーム(GA-B)がカギだとされる。

その新型車ヤリス、試乗したのは1.5リッター3気筒+モーターのハイブリッド2台、同ハイブリッドのE-Four(電気式4WD)、さらに1.5リッター3気筒ガソリン車のCVTと6MT各1台の計5台である。このほか従来からのダイハツ製1リッター3気筒とCVTの組み合わせもあるけれど、今回は車両の用意がなかった。

で、5台のうち、最後に乗ったハイブリッドで、185/60の15インチ・タイヤを履くモデルがベストだと筆者は思った。新型ヤリスで開発陣がやりたかったことが最もよく表現されているのではあるまいか。以下、試乗順にそのモデルの特徴と率直な印象を記す。

1.5L ガソリン車

一番目は、1.5リッター3気筒エンジン車のCVTである。

着座してオッと思ったのは、インストゥルメント・パネルがシンプルなことだ。直径370mmから同365mmに小径化されたステアリングホイールの奥に、これまた直径が小さめの液晶表示の立体的なメーターが2個並んでいる。そのシンプルさが小型車っぽくてステキだ。

新開発の3気筒「ダイナミックフォースエンジン」は、基本的にレクサスUXに使われている2リッターの直噴4気筒から1気筒カットしたモジュール・ユニットで、最高出力117ps/6600rpm(開発目標値)を発揮する。これにUXと同じく、発進用のギアを持つダイレクトシフトCVTを組み合わせている。

80.5×97.6mmのロング・ストローク型直噴3気筒は先代ヴィッツの1.3リッター4気筒に比べると、トルクが30%ほど分厚い。

それ自体は排気量が大きいのだから当然として、注目すべきは極低速でもトルクが落ちないことだ。これは3気筒固有の爆発間隔から生まれる特性だそうだけれど、じつのところピットから飛び出すや、筆者の頭のなかはともかくエンジンを上まで回すことで占められ、大事なとこの確認を失念してしまった。

ロング・ストロークなので、ややゆったり回っているような感はあるけれど、4気筒のように高回転時に振動が出ることもない。たいへんスムーズで、回ることを厭わない。

これで音質がもうちょっと音楽的だったら……と思ったけれど、考えてみたら、トヨタがこの実用エンジンに求めているのは、高回転時の快音ではない。日常使用時での静粛性なのである。いささか筆者のカン混じりではあるけれど、たぶんそこはできている。

コーナリングは?

ハンドリングはたいへん素直で、好感が持てる。

最近トヨタはステアリングの取り付け剛性に対して意識的だけれど、電動パワーステアリングであることをほとんど意識させないしっとり感がある。

車両重量はハイブリッド車同士の比較で、50kgも軽い1050kg(開発目標値)を実現。このうち、ボディのハイテン(高張力鋼板)化で約16kg、外板薄板化で6kg、シャシーで6kgダイエットしている。バッテリーをニッケル水素からリチウムイオンに変更したことも大きい。じつはこれだけで20kg以上も軽くなっている。

その一方、ねじり剛性は30%強化されている。プラットフォームのツギハギのように見える補強板は、エンジニアの知恵、と汗、はどうか知りませんが、ともかくその賜物なのだ。

軽量・高剛性ボディに組み付けられたサスペンションは、ロールは大きいけれど、ロール・スピードがゆっくりしていて、加減速時の姿勢変化が小さいことが好ましい。変な動きをまったくしないので、安心してドライブできる。

1.5L ハイブリッド車

次に乗ったハイブリッドは、モーターのアシストを受けているから、静かで速いことは間違いない。

最高出力は91ps/5500rpmと先代1.5リッター4気筒の74psより24%増しで、車重が50kg軽くて、さらにリチウムイオン電池の採用で電池の能力が入力で2倍、出力で1.5倍になっている。0-100km/h加速は2秒弱も速くなっているという。

ところが、タイヤが175/70R14で、その直前に乗った185/55R16よりタイヤの性能が低い。その分、なんだか物足りないと感じてしまった。冷静になってみると、タイヤ性能が低くても、車両姿勢が安定していることは同じだったということはいえる。

続いてハイブリッドの4WDに試乗した。4WDといってもプリウスのE-Fourと呼ばれる電気モーター式のユニットを移植したもので、サーキット走行においてはほとんど重りにしかなっていないらしい。

4台目は、オートカー読者諸兄も注目されるであろう1.5リッター3気筒の6速マニュアル・トランスミッション仕様である。

1.5L ガソリン車(MT)

正直にお伝えすると、筆者はこの6MTをうまく操作できなかった。クラッチのミート・ポイントが奥過ぎるのと、6MTそれ自体のストロークが長すぎることが要因だ。

ワンメイク・レースのベース車両という考えもあるようだけれど、ヒール&トーもダブル・クラッチもむずかしい。これはエンジンのレスポンスがイマイチだからではあるまいか。と自分の技量を棚にあげて思ったりした。

ドライビング・スキルを磨くには、これぐらいむずかしいほうがいいかもしれない。あるいは、ヒール&トーなんてドイツ人は使わなくても速く走るのだから無問題と考えることもできる。

だけど、せっかくマニュアルなのだ。ギアをセレクトするレバーを入れたり出したり、シフトの瞬間の喜びをヴィヴィッドに感じたいではないか。

ま、それには腕を磨けばいいのだけれど、間口を広げることも大切ではないでしょうか。

試作段階 好印象なのは?

最後に、冒頭に記した筆者がベストだと思った1台、ハイブリッドのFWDである。

その直前に試乗したMTの反動か、高回転まで回しても、ハイブリッドのほうが断然静かに感じた。実際、ハイブリッドはハイブリッドということだけではなくて、遮音材の量が多くて、静かなのだ。

でもって、15インチだと、走りのほうも快適に感じられる。で、その静かさと快適さに私は新型ヤリスの真髄を見る。

いみじくも、試乗に先立っての商品説明の時間に、開発を担当した末沢泰謙(すえざわ・やすのり)チーフエンジニアは「小ささへのこだわり」ということで、次の3つをあげた。

1. コンパクト・カーとしての「小さいこと」
2. コンパクト・カーならではの「軽快なハンドリング」
3. コンパクト・カーを超える「上質な乗り心地」

駐車支援システムも

トヨタの考える上質さというのは、クラウンから始まった静粛性と快適性のことである。それはレクサスLS400に引き継がれ、こんにちのLS500hへとつながっている。

そして、すべてのトヨタ車はLS500hを目指すのだ。と筆者は思うのだけれど、そのような議論は、2020年2月中旬、新型ヤリスが日本発売されてからでも遅くはない。

プラットフォームからパワーユニットにいたる主要部品すべて新開発というこの力作を、1台につき1周2.4kmのサーキットを3周しただけで、しかもプロトタイプで判断するのはあまりに早計というものだろう。

超高齢化社会にピッタリの、簡単な操作で、筆者なんぞよりはるかに素早くて正確な自動駐車を実現したトヨタ初の高度駐車支援システムをはじめ、先進安全装備をてんこ盛りしてもいる。

果報は寝て待て。新型ホンダ・フィットも発売となる。コンパクト・カー新時代がやってくる!

ヤリス・プロトタイプ 日本仕様参考値

1.5L ガソリン車 トヨタ社内測定値

数値はすべてトヨタ社内測定値

価格:-
全長:3940mm
全幅:1695mm
全高:1500mm
ホイールベース:2550mm
最高速度:-km/h
0-100km/h加速:-秒
燃費:-km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:-kg
パワートレイン:直列3気筒1.5L
使用燃料:ガソリン
最高出力:117ps/6600rpm
最大トルク:-kg-m
ギアボックス:CVT

1.5L ハイブリッド車 トヨタ社内測定値

数値はすべてトヨタ社内測定値

パワートレイン:直列3気筒1.5L+モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:91ps/5500rpm
最大トルク:-kg-m
ギアボックス:電気式無段変速機

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