■ハイブリッド車の先駆者であるプリウスは来年モデルチェンジ?
トヨタ「プリウス」の現行モデルが2015年登場してから6年経過し、そろそろ次期モデルの噂が聞こえてくる頃です。
初代モデルが1997年に世界初の量産型ハイブリッド車として登場してからすでに四半世紀が経過したいま、ハイブリッド車は当たり前の存在となりますが、次期型プリウスはどのような形で登場するのでしょうか。
次期型「プリウス」は超絶進化? トヨタが「全固体電池」に全集中する訳とは
2021年現在発売されているプリウスは、2015年に登場した4代目です。
フルモデルチェンジから6年が経過していることもあり、順当にいけば2022年には次期モデルが登場すると予想されています。
ハイブリッド車(HV)の代名詞的存在であるプリウスのフルモデルチェンジには、多くのユーザーが高い関心を寄せることになるでしょう。
しかし、現時点でトヨタからの次期プリウスについての正式なアナウンスはほとんどありません。
プリウスの歴史は、ハイブリッド車の歴史ともいえるほどですが、いまやハイブリッド車は当たり前の時代、さらに電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)も登場しています。
そうしたなかで「ハイブリッド車の先駆者」、「ハイブリッド車の代名詞」といわれるプリウスは、今後どのような立ち位置かつブランディングをしていくのでしょうか。
プリウスが産声を上げたのは、1997年のことでした。
「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーとともに登場した世界初の量産型ハイブリッド車は、コンパクトなボディに未来的なデザインを持つ革新的なクルマでした。
28.0km/L(10・15モード)という、当時としては驚異的な燃費性能と、215万円という現実的な価格を実現していたものの、ハイブリッド車という新しいモノに対して市場の理解が薄かったこともあり、2代目以降のプリウスと比較すると販売台数は決して多くはありません。
しかし、その後のハイブリッド車の基礎を築いたという点で、初代プリウスは大きな役割を果たしたといえます。
初代プリウスでつかんだ手応えをもとに、2003年に登場した2代目プリウスは、まさにハイブリッド車の中興の祖ともいうべきものです。
初代に比べてボディサイズがひと回り大きくなり、なおかつ5ドアのファストバックスタイルへと変更されたほか、心臓部であるハイブリッドシステムも「THS-II」へと進化し、現在のプリウスのコンセプトが固まったモデルでもあります。
燃費も35.5km/L(10・15モード)と、世界最高レベルの性能を誇り、インテリジェントパーキングアシストや電動インバーターエアコンなどの世界初となる技術も盛り込まれるなど、トヨタの「本気」が見られる1台でした。
世界的な環境問題への関心の高まりも手伝って、2代目プリウスは日本国内はもちろん、アメリカを中心とした海外でも発売され、プリウスの名を世界に知らしめることになります。
そして2009年に満を持して登場した3代目プリウスは、2代目の正統進化とも呼べるもので、すべての面で2代目を凌駕しつつ、2代目ユーザーが違和感なく受け入れられるものに仕上げられていました。
「リダクション機構付THS-II」が採用されたことで燃費は38.0km/L(10・15モード)へと向上し、エンジンも1.8リッターへと拡大されたことで、課題となっていたパワー不足も解消します。
また、東日本大震災後の2012年には、AC電源もオプションで選択できるようになり、家庭へも電源を供給できる「ヴィークルパワーコネクター」も装備されるなど、その後のハイブリッド車のあり方も示しました。
海外展開もさらに加速し、2代目を大きく超える世界80か国以上で販売され、多くの国で記録的なヒットとなった3代目プリウスによって、「ハイブリッド車=プリウス」というイメージは確固たるものとなります。
ハイブリッド車がひとつのカテゴリーとして確立し、各社がラインナップするようになった2015年、現行モデルの4代目となるプリウスが登場します。
トヨタの新しいクルマづくりのシステムである「TNGA(=トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」を採用した初のモデルとして、40.8km/L(JC08モード)を記録した燃費性能はもちろん、運動性能や静粛性などのあらゆる部分がさらに向上しました。
しかし、4代目プリウスは、2代目や3代目ほどの記録的な販売台数は記録していません。
モデル末期となる2021年は、前年比のおよそ半分ほどに売れ行きが落ち込んでいます。
その背景には、前衛的なデザインが賛否両論を呼んだなどのプリウス自体の事情もありますが、それ以上に大きな要因といえるのが、プリウス以外のハイブリッド車が充実してきたという外的要因です。
例えば、よりコンパクトな「アクア」「ヤリス」や、人気のSUVである「ヤリスクロス」や「ハリアー」など、トヨタのなかだけ見てもハイブリッド車を設定するライバルを少なくありません。
つまり、プリウスがハイブリッド車というカテゴリーを築き上げたことでライバルが多く登場することになり、先駆者であるプリウスの座が脅かされるという皮肉な事態が起こっています。
ここまで述べたように、プリウスがハイブリッド車の先駆者として、日本はもちろん世界中でその名をとどろかせてきました。
その功績は、単に多くの台数を販売したというだけでなく、いまでは当たり前となっている「低燃費」という概念をユーザーにもたらせたことにもあります。
しかし、現在は低燃費であることだけでは絶対的な価値とはなりません。
プリウスが発売された四半世紀前とは異なり、現在ではハイブリッド車のラインナップは格段に増えており、低燃費性を求めるのであれば、プリウス以外の選択肢もあるからです。
実際、2021年11月現在、カタログ燃費(WLTCモード)は1位がヤリス(36.0km/L)、2位がアクア(35.8km/L)、3位がプリウス(32.1km/L)となっています。
では、次期型プリウスでは、これらのライバルをしのぐ圧倒的な低燃費を実現するのでしょうか。
この点については、筆者は懐疑的です。もちろん、技術を磨き上げることで、現行モデルよりも低燃費性を追求することはできるかもしれません。
ただ、よりコンパクトなヤリスやアクアのほうが低燃費という点では有利なのはいうまでもなく、すぐに追い抜かれてしまうことは明白です。
また、すでにここまで磨き上げてきた既存のハイブリッドシステムでは、飛躍的な燃費向上は見込めないのではとも思います。
そもそも、PHEVやEVへのシフトが顕著な昨今の自動車業界で、わずかなカタログ燃費を追い求めるのは、不合理といえるかもしれません。
もちろん、ハイブリッド車のパイオニアであるプリウスは、常に新しい価値を提供し続けていくべきだと感じます。しかし、その価値とは、単にカタログ燃費の数値だけではないと考えます。
プリウスがここまでユーザーに提供してきたことは、クルマにおける「エコ」という概念を知らしめたことです。
さらにいえば、多くのユーザーが実際に購入し、使用できるだけの価格や航続距離、実用性を持っているという点も重要です。
つまり、プリウスの本質的な価値は、多くのユーザーに対して、「エコカー」という選択肢を提供し、エコカーを民主化したことにあるといえます。
■2022年に登場か? 次期プリウスはどうなる?
このように考えると、次期プリウスの姿もおのずと見えてくるように思います。
例えば、エコという意味では、EVやFCVという選択肢もありますが、どちらも現在広く世界中で用いられているガソリン車の代替になることは現時点で難しいため、次期プリウスで採用されることはないでしょう。
またトヨタなどが進める「水素エンジンなどが採用されるのでは?」というウワサもありますが、EVやFCVと同じ理由で採用されることはないでしょう。
いま現在世界中の人々の生活を支えているプリウスの次期型を、単に技術上のショーケースとしてしまうことは考えにくいでしょう。
また、ボディタイプが大きく変わることもないと考えられます。
SUVやコンパクトはほかの選択肢がありますし、燃費や実用性のバランスから見ても、現在のパッケージングはほぼ完成されているといえます。
ただ、専門的な部分では進化はあったとしても、パワートレインもボディタイプも現在の延長線上となると、次期プリウスには目新しさを感じにくいかもしれません。
もちろん、世界のエコカーをリードしてきたプリウスのことですから、しっかりと目玉を用意していると筆者は考えています。
ただ、それは一部の人にとって有益な「飛び道具」的なものではなく、実際にプリウスを購入し、プリウスを使用する人にとって有意義なものであると考えます。
例えば、それは最新の運転支援機能かもしれません。もちろん、限られた場所と条件で使用できる「理論上の自動運転」などではなく、日々の走行シーンで活用できる地に足のついたものです。
そうなれば、当然通信機能によって定期的にバージョンアップするような仕組みも用意されることでしょう。
あるいは、オンラインを活用した画期的な購入方法が用意されるかもしれません。
さらに、KINTOのようなサブスクリプションシステムを組み合わせることで、より手軽に、かつお得に新車に乗れるような仕組みも提供されるかもしれません。
もちろん、これは筆者の妄想の域を出ませんが、ここで重要なのは、ハードウェアの進化だけでなく、ソフトウェアの進化、つまりクルマの買い方から使い方に関する部分の進化が著しくなるであろうという点です。
画期的なパワートレインが搭載されたり、カタログ燃費が50km/Lを超えたりするようなクルマになれば、大きな話題となることは間違いないでしょう。
しかし、そのために航続距離が著しく減少したり、価格が高騰したりしては、それはもはや「プリウス」という名である必要はありません。
「エコカー」を民主化したという点にプリウスの価値があると述べました。しかし、個人レベルで見れば、多少燃費が良くても、車両価格が割高なエコカーを買うよりも、ガソリン車で事足りるというユーザーが多いのも事実です。
つまり、いくら環境性能が良くても、実際のユーザーが購入し、使用できるものでなければ、メーカーのエゴに終わってしまいます。
だからこそ、次期プリウスは、これまでのどんなプリウスよりも使い勝手がよく、価格も充分に手の届くもので、多くの人が手に入れやすいものにならなければならないと、筆者は考えるのです。
※ ※ ※
世界初の量産型ハイブリッド車として世界中に衝撃を与えたプリウスは、時代の変化とともにその立ち位置は変わりつつあります。
しかし、プリウスの持つ本質的な価値は不変であり、次期プリウスもこれまでと同様に「エコカー」の民主化に貢献すると存在として、登場することを期待します。
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みんなのコメント
今ならメカニカルじゃなくても電子制御でMT再現できるでしょ。
シフトミスでエンストも演出。
または右足ブレーキ、左足アクセルにしたら、パニクった時に昔の癖でブレーク踏むよ。
踏み間違えてから制御が介入するんじゃなくて、
踏み間違えしにくい構造を開発してほしいです。