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登場が早すぎて、対応が遅すぎた さよならジューク その軌跡をたどる

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登場が早すぎて、対応が遅すぎた さよならジューク その軌跡をたどる

 ロッキー/ライズやC-HR、ヴェゼルなど、空前のコンパクトSUVブームとなっている日本市場。しかし、そんなブームの真っ只中において、ひっそりと姿を消していったコンパクトSUVがある。「日産ジューク」だ。欧州市場では2代目ジュークが販売されているが、日本では2代目が販売されることはなく、初代の生産終了と共に日本市場からは撤退となってしまった。

 ジュークのデビューは、今から10年前の2010年6月。C-HRよりも6年、ヴェゼルよりも3年も早く登場しており、日本市場において、コンパクトSUVのパイオニア(先駆者)といえる。本記事では、そんなジュークの偉業について、振り返ってみようと思う。

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文:吉川賢一/写真:NISSAN

【画像ギャラリー】革新的!初代ジューク、ジュークNISMO、ジュークRSの斬新すぎるデザインを振り返る

ジューク誕生はデザイナーのひらめきだった?

 「マーチの背を高くして、大きなタイヤを履かせたら、どうだろう…」――。既存のプラットフォームを有効活用し新たなクルマを生み出そう、という、日産の企画力で生まれた、初代ジューク。

 先代のマーチ(K12)と同じ、Bプラットフォームを使用し、驚きのデザインで登場したジュークであるが、あまりに奇抜すぎるデザインであるため、当初は日産社内でも心配する声があった(当時日産社員であった筆者も、その一人だ)。

日産ジューク(2010年)デビュー当時、まるでコンセプトカーのようなデザインに見え、度肝を抜かれた。

 初代ジュークが誕生した2010年当時は、ミニバンブームの全盛期。もちろんSUVがなかったわけではなく、RAV4やハリアー、フォレスター、CR-VなどのSUVはあったのだが、その時代の需要は圧倒的にミニバンや、コンパクトミニバン、軽自動車、コンパクトカーに集中していた。

 そんな中、コンセプトカーがそのまま飛び出してきたかのようなインパクトあるデザイン、走りの良さ、コンパクトボディ、そしてリーズナブルな価格で登場したジュークは、デビュー当初かなり話題となった。

 エンジンは、1.5Lガソリンエンジン(HR15DE)のみであったが、半年後に追加した1.6L直噴ターボ(MR16DDT)を搭載した「16GT」と、その4WD版である「16GT FOUR」が追加された。190ps/24.5kgmを発生するターボエンジンはトルクがあり、適度にスポーティな足回りのおかげで、ジュークのコンパクトなボディを悠々と走らせることができた。

16GTに搭載されていたMR16DDTエンジン。パワフルで元気なエンジンだった。 

 なお、「16GT FOUR」の4WDシステムは、エクストレイルのオールモード4×4-iの進化版だ。トルクベクトルという新たなシステムによって、従来の前後トルク配分に加え、後輪左右のトルクをもコントールし、コーナーを思い通りに曲がることができた。

ジュークNISMOはコンパクトSUVの異端児

 また、2013年デビューのジュークNISMOも魅力的であった。エクステリアには、カーボンパーツを用いたエアロパーツが装着されており、インテリアもスエードを使ったステアリングや、専用のアルカンターラ調バケットシートを装備。このシートはホールド性、快適性ともに、バツグンに良かった。

 また、車体の様々な部分に補強を入れてボディ剛性を向上させたことで、サスペンションがしっかりと仕事をし、その結果、ハンドリングだけでなく、乗り心地も向上した。

 1.6L直噴ターボエンジンにも手を加え、出力を10ps/1.0kgmアップして200ps/25.5kgmへと向上。サスペンションも再適合し、タイヤサイズも215/55R17から225/45R18へとサイズアップしている。CVTは「エクストロニックCVT-M6」だ。

 2014年の7月のマイナーチェンジを受けて追加されたジュークRSは、パワーユニットはベースとなった16GT FOURと同じだが、さらに10psほど上げた214psまで引き上げ、トランスミッションはマニュアルモードを8速としたパドルシフト付きのCVTへとアップ。価格は343万円(当時は8%税込)であった。

 コンパクトなSUVに、パワフルなエンジンと、強固な車体や足回りを与え、サーキットやワインディングなどをスポーティに走らせる。こんなシーンがジュークNISMOにはよく似合った。いわゆる2ドアのコンパクトなスポーツカーが絶滅に近い中、こうして遊べるSUVが存在していたのは、実は貴重なことだったのだ。

 そうしたジュークの活躍の姿を見て、なのかは定かではないが、ホンダはヴェゼルを開発、トヨタはC-HRを開発したのかもしれないと考えると、ジュークは、トレンドセッターだったのではと考えられる。

 ちなみに、昨年より欧州のみで販売されている2代目ジュークは、ボディサイドのキャラクターデザインや大きなVモーショングリル、シャープなテールランプなど、ずいぶんと洗練された印象となったが、初代譲りの丸形ライトなど、初代ジュークのチャームポイントはしっかりと残されている。

 これからというタイミングで、日産不振のあおりと、コロナ禍の影響をダブルで受けてしまい、苦境に立たされているが、また再び話題に上がってくる一台に違いない。

良くも悪くも日産車だからこその生涯をたどった、ジューク

 日産は、新しい技術の開発が得意で、アイディア力もあるが、小まめなマイチェンで商品力を磨きなおして「最期まで売る」という姿勢に弱い。そのため他社車メーカーに付け込まれ、エルグランドやキューブがそうであるように、せっかく発掘した枠を取られていくことの繰り返しだ。日産が手をかけて「育てる」行為をもっとしていたら、国内市場は今とは違った状況が起きていたかもしれない。

 時が定かではないが、筆者はとある現場で、ボディに偽装をした初代ジュークの最終実験車を目にしていた。当時は、どう見てもカッコいいとは思えなかった。前後が短く、背が高く、タイヤもアンバランスに大きい。「デザイナーの暴走、どうしてあんなのが出てきたのだ」と同僚と話していたのを思い出す。

 正直なところ、筆者レベルのデザイン感度だと、売れるとは思っていなかった。しかし、デビューするや否や世界中で大ヒット。「キモカワ」、「ブサカワ」など、散々言われていたが、あの「癖の強さ」がかえってよかったのであろう。筆者の父も、知らぬ間にジュークターボを買っていた。

【画像ギャラリー】革新的!初代ジューク、ジュークNISMO、ジュークRSの斬新すぎるデザインを振り返る

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みんなのコメント

3件
  • CHRとかコンパクトSUVが乱立するようになったけど、ジュークが最初だったもんな。確かに、せっかくこの市場を新規に開発したのに、他社にあっさりと受け渡してしまい何がしたかったのか分からない。しかも新型ジュークは日本廃止。日本でもまだまだジューク見るし、他社に浮気せず新型を待ち続けていた人多いと思うよ。裏切り行為そのもの。日産は良い車を出すのに本当にユーザーを大事にしない。
  • こういう早過ぎたという記事は大嫌い。
    そんなこと言ってたら誰がチャレンジするの?
    突然みんなが同じのを作るとでも思ってるの?

    ホント、自動車関連の記事の質は落ちたよな。
    当時を全く知らず、ただ資料を見て言ってるだけ。
    それで知ったかぶってあれこれ言うなんて、
    そんなの現実逃避をしたオタクや
    三流ユーチューバーと大して変わらんだろ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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