ポルシェ初のBEVとして登場した「タイカン」。そんなタイカンをシューティングブレークのようなボディ形状へ変更し、よりアクティブなクロスオーバーへと仕立てたのが「クロスツーリスモ」だ。今回はトップモデルのターボを借り出し、肝心の走りの面において厳しくチェックする!!
※本稿は2024年1月のものです
文/水野和敏、写真/ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2024年2月26日号
操舵がポルシェらしくない!? でも安定感はバツグン!! ポルシェ タイカンターボ クロスツーリスモ 徹底試乗
■安定感は抜群なものの操舵に違和感が……
圧倒的な動力性能を見せるポルシェ タイカンクロスツーリスモ。高速時のコーナリングでは高いスタビリティを発揮
走り出して間真っ先にゴツゴツした硬さを感じます。これはタイヤです。タイヤのサイドウォールの硬さです。
まずは歩くほどのゆっくりとした速度で走りますが、車体のガッチリ感がもの凄い。EQSと同じく、2.5トンに迫る車重に対応するため、車体そのものがガッチリしているし、サスペンションも高い剛性を持っています。
加速をしてみます。前後2モーターで最高出力680ps、最大トルク86.7kgmの動力性能は圧倒的です。
ステアセンターを起点にして、左右の不規則な操舵と、アクセル操作を行うと、不感帯の領域ができます。これはポルシェらしくない。深く切り込んでいくと、ある舵角から急激にゲインが出てCP(旋回力)が立ち上がります。
これは……車体の遊びや足回りではありません。前後モーター4WDの協調制御の合わせ込み領域の問題だと思います。
アクセルを踏み込んである程度前後の駆動力が安定した領域では違和感は出ないのですが、コーナリング中にアクセルのオン/オフコントロールをすると、前後モーターの駆動トルクに微妙な差異が生じ、FF車のトルクステアのような操舵の挙動があります。特にアクセルオフの瞬間にでる、CPの変化が気になります。
速度を高めたコーナリング時の挙動そのものは圧倒的なスタビリティを発揮します。リアを軸にしてフロントのバランスをとっています。公道で普通の人が走らせている限り、挙動を乱すようなことはないでしょう。それほどの安定感です。
ブレーキは大きなキャリパーとローターを付けているにも関わらず、フル制動でちょっと抜ける感覚があります。特にペダルを踏んだ瞬間のググっと効く感覚が乏しいです。ポルシェのブレーキにしては効きの変化があります。
路面からの音は小さく抑えられています。ロードノイズも抑えられていて静かです。
■タイカンクロスツーリスモの評価は?
ホイールベース2900mmで全長は4975mmのタイカンクロスツーリスモ。前後2モーターで最高出力625ps、最大トルク86.7kgmを発揮するEVだ。水野さんの評価は93点
【水野和敏 取材メモ】
・ポルシェタイカンのクロスオーバーSUVモデルとして、サルーンタイプとは異なる魅力をアピールするモデル。
・前後2モーターの4WDで680ps、86.7kgm。前後モーターのパワー協調制御にやや合わせ込み不足を感じた。
・車体剛性、足回りの強靭さはさすがポルシェ。スタビリティの高い操安性能だ。
リア周りをハッチバック形状としたクロスオーバーモデルがクロスツーリスモ。ハッチゲート部分をギュッと絞り込んだ造形によって、リアフェンダーの張り出しを強調したフォルムは力強さを感じさせ、リアエンジンと後輪での押し感を演出するポルシェ911ブランドのフォルムを再現。
前後2モーターで最大トルク86.7kgmはさすがにパワフルで、異次元の加速を感じさせるが、頑強なボディと足回りで高いスタビリティと操縦性を発揮する。
一方で、前後モーターの駆動力協調制御の合わせ込みの問題だろうが、条件によって操舵に不感領域が生じるのは少し不自然だ。
ポルシェ タイカンターボクロスツーリスモ 主要諸元
・全長:4970mm
・全幅:1970mm
・全高:1430mm
・ホイールベース:2900mm
・最低地上高:―
・最小回転半径:―
・車両重量:2410kg
・バッテリー:リチウムイオンバッテリー
・総電力量:93kWh
・フロントモーター:―
・リアモーター:―
・システム出力:625ps(オーバーブースト時680ps)、86.7kgm
・一充電走行距離:462km
・WLTCモード電費:228Wh/km
・Fサスペンション:ダブルウイッシュボーン
・Rサスペンション:マルチリンク
・タイヤサイズ:F=265/35ZR21 R=305/30ZR21
・車両価格:2207万円
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