電動化が進み、パワーユニットの主役がエンジンからモーターになることで、トランスミッションの存在意義が問われています。多くのバッテリーEVは、トランスミッションを搭載せず、ハイブリッド車でもトランスミッションの役割は低下しています。
今後、本格的な電動化時代となれば、トランスミッションは不要となるのでしょうか。
クルマの電動化で今後はどうなる!? 激変するガソリンスタンド事情
※本稿では機構としてのトランスミッションについての解説であり、マニュアルトランスミッション(MT)、オートマチックトランスミッション(AT)問わずに言及しております。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:Adobe Stock_pichit1422
写真:NISSAN、TOYOTA、HONDA、MAZDA、LEXUS イラスト:著者作成
[gallink]
トルクバンドが広いモーターには、トランスミッションは不要
エンジンは、効率よく有効なトルクを発生する回転域(トルクバンド)が狭いため、どのような運転条件でもスムーズに走行するためには、多段のトランスミッションが必要となってきます。
例えば、発進や登坂といった、大きなトルクが必要な状況では、ローギアを使い、トルクを増大させます。エンジン出力=トルク×回転数の関係があるので、ローギアでは走行速度は下がりますが、その分トルクが増大するのです。定速走行や高速走行では、低いトルクでも高い走行速度が維持できるようにハイギヤが選ばれます。
一方のモーターは、トルクバンドが広く、停止状態から一定の速度までは最大トルクを維持し、その速度を超えるとトルクは徐々に低下します。この特性は、クルマに求められるトルク特性と近いので、モーターはトランスミッションがなくても、様々な運転条件に対応できるのです。
エンジンはトルクバンドが狭く、有効なトルクを発揮する回転域が狭いのでトランスミッションが必要。モーターはトルクバンドが広く、基本的にはトランスミッションが不要(イラスト:著者作成)
バッテリーEVでは、当面は「なし」が主流に
現在、バッテリーEVで、トランスミッションが搭載されているのは、世界中をみてもポルシェのタイカンのみ。国内でも、日産「リーフ」やホンダ「Honda e」、マツダ「MX-30 EV model」など、すべてトランスミッションは搭載されていません。コストや搭載性を考慮すれば、今後も一般的なバッテリーEVにトランスミッションは搭載されないと思われます。
ただ、まったく搭載されないか、というと、そうとは言えません。タイカンがトランスミッションを搭載している理由は、モーターの効率が高回転で低下することにあります。モーターの効率も運転条件によって変化し、モーターのスペックにも依りますが、通常は車速120km/h以上になると効率が低下します。
タイカンは、高速走行時の効率を上げるために、トランスミッションで変速しているのです。ただし、高速域で変速するシンプルな2段のAT機構です。
変速によってモーターの効率を高めている代表例は、電気自動車のF1と呼ばれるバッテリーEVの最高峰「フォーミュラE」です。フォーミュラEでは、6速までのギアボックスの使用が認められています。できるだけ電気を使わず、しかも速く走行するためには、バッテリーEVでも、変速することが有効なのです。
したがって、スポーツカーの高速走行の性能向上のため、あるいは航続距離を延長させる目的で、2段や3段のトランスミッションを搭載するバッテリーEVが、今後他にも出てくる可能性はあります。
日産の電気自動車リーフ。2010年デビュー当時の航続距離は200kmだったが、改良を重ねて現行モデルでは航続距離322km(大容量バッテリー搭載のリーフe+の航続距離は、458km)に延長
ハイブリッドはシステムの種類による
トランスミッションを使わない流れは、確実にハイブリッド車にも広がっています。現在、ハイブリッド車でトランスミッションを搭載しているのは、トヨタのレクサスLS、LC、クラウンと日産のフーガ、シーマ、スカイラインといった、高級FRモデルに限られ、その他のハイブリッドモデルには搭載されていません。
トランスミッションが必要かどうかは、基本的にはハイブリッドシステムの違いによって決まります。
・シリーズ方式ハイブリッド
エンジンは発電専用で、タイヤはモーターのみで駆動。エンジンは、常時効率のいい条件で運転できるので、トランスミッションは不要。代表例は、日産の「e-POWER」です。
・パラレル方式ハイブリッド
エンジンとモーターの両方でタイヤを駆動。基本的に、エンジン主導なのでトランスミッションが必要。代表例は、日産のフーガなどで採用されているFR用ハイブリッドや、軽自動車で採用されているマイルドハイブリッドです。
・シリーズハイブリッド方式ハイブリッド
エンジンの出力を駆動と発電に分割するシステムで、通常は電気式無段変速機を採用しているので、トランスミッションは不要。代表例は、トヨタのTHSやホンダのe:HEVです。
「電気式無段変速機」とは、トヨタTHSでは遊星ギアによる分割機構によって、ホンダe:HEVは発電機とモーターの制御によって、トランスミッションを使わずに駆動軸の回転速度を無段変速するシステムです。
今後、燃費(CO2)低減のため、モーター主導で走行するハイブリッド車が増えることを想定すると、ハイブリッド車でもトランスミッションの役割は小さくなるでしょう。
日産の電動パワートレイン「e-POWER」搭載のノート。ガソリンエンジンで発電して、その電力でモーター走行するシリーズ方式ハイブリッドで、トランスミッションは搭載してない
現在は、バッテリーEVであれば脱炭素社会に貢献している、ハイブリッド車であれば燃費がいい、ということに目がいきがちですが、今後さらに電動車が普及すれば、それだけでは差別化は難しく、何らかの付加価値が必要となってきます。そこに、優れた走行性能や、長い航続距離といったものが使われるようになれば、いまのトランスミッションとは異なる機構かもしれませんが、変速機構が再び注目される日が来る、と考えられます。
◆ ◆ ◆
電動化が進む中、トランスミッションはただ消えていこうとしているわけではありません。エンジンと同様、電動パワーユニットでも高性能と省エネというテーマは永遠であり、トランスミッションはそれをサポートする名脇役として、今後重要な役目を任される可能性があります。今後の技術進化に注目です。
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みんなのコメント
いつも適当な記事を書いて期待させておいて
後は知らぬ存ぜず。
効率と実用性だけが自動車の存在意義で無い事すら理解していないで自動車評論家なんてよくやってられますね。