この記事をまとめると
■S耐にスバルの新型マシン「ハイパフォーマンスXフューチャー・コンセプト」がデビュー
次期WRXの姿が見え隠れ! スバリストはスバルがS耐に投入するニューマシン「HIGH PERFORMANCE X FUTURE CONCEPT」に注目すべし!!
■ハイパフォXはVB型WRXをベースとするが次世代車両の技術開発として参戦している
■まだまだマイナートラブルも多く十分な戦闘力もあるとはいえず今後の熟成に期待したい
S耐第3戦でもっとも注目を集めた1台
スーパー耐久シリーズ第3戦が大分県のオートポリスで開催。真夏の太陽が照りつけるなか、各クラスで5時間のバトルが展開されたのだが、そのなかでもっとも注目を集めた一台が、スバルがST-Qクラスに投入したニューマシン「スバル・ハイパフォーマンスXフューチャー・コンセプト(SUBARU HighPerformance X Future Concept)」、略して“ハイパフォX”だといえるだろう。
スバルの社員チーム「Team SDA Engineering」は、2021年のST-Qクラス設立以来、カーボンニュートラル燃料を使用した「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」を投入。航空宇宙カンパニーが開発したカーボンの再生利用やアイサイトなど、さまざまなチャレンジを行うことで、分野間の垣根を超えた人材が育成されたほか、その結果、車両に関してもエンジン、シャシー、駆動、ブレーキなど全方位で進化を果たしたという。
事実、2022年と2024年の富士ラウンドを比較すると、予選のラップタイムで約3秒もタイムアップに成功。 このように、スバル陣営はスーパー耐久のST-QクラスにBRZを投入することで、“NA×FR”の技術進化を果たすことに成功したのだが、2024年は“ターボ×AWD”の進化を果たすべく、第3戦のオートポリスに合わせてターボエンジンを搭載した4WDモデル、“ハイパフォX”に主力モデルをスイッチしたのである。
ベース車両となっているのは、VB型のWRXで、エンジンはFA24が搭載されているが、スバルの視線はあくまでも次世代の車両で、Team SDA Engineeringのチーム代表である本井雅人氏は、「次世代車両の開発をこのクルマ(ハイパフォX)でやりたいということで、AWDの制御はBEVチームのメンバーが取り組んでいます。それにターボエンジンも将来に残すために技術開発を行っています」とのこと。
事実、スーパー耐久の参戦車両とはいえ、ハイパフォXはほぼノーマルの状態。ロールケージやダンパー&スプリング、ホイール&タイヤ、マフラー、レーシングシート、メーターなど、レース専用のパーツは装着されているが、エンジンやギヤボックスはノーマルの状態で、テールまわりのポイントになっているリヤウイングも市販パーツを活用しているようだ。
ちなみに前後のフェンダーおよびAピラーに装着されているエアロデバイスは、社内の3Dプリンターで製作された試作パーツとなっている。
アップデートによる今後の「ハイパフォX」の進化に期待
2024年よりTeam SDA Engineeringの監督兼チーフエンジニアに就任した伊藤 奨氏は、「ハイパフォXでターボエンジンとAWD駆動力制御技術、そして高出力、AWDを受け止めるためのシャシーを鍛えたいと思います」とのこと。
具体的には、「エンジンに関しては環境対応をしていくと出力が下がっていきがちなので、スーパー耐久のなかで水平対向エンジンの可能性を探ったうえで環境対応をしていきたいと思います。そのためにBRZや全日本ラリーで培った制御を応用。アンチラグを利かせているので音の面でもいいと思います。また、AWDについては、BEVでは再現できないプロペラシャフト付きAWDのよさがあると思うので、そのよさを探りながら、BEVにも活きる技術を開発していきたいと思います」としたうえで、「エンジンやAWDだけでなく、シャシーや空力も鍛えていきたいと思います」と語る。
このハイパフォXは7月上旬のシェイクダウンを経て、第3戦のオートポリスでデビューを果たしたが、その間にも進化を果たしているようで、ドライバーのひとり、井口卓人選手によれば「まだノーマルに近い印象ですが、シェイクダウンから足まわりが改善されていたので、今後の期待がもてるデビューですね。BRZと比べると全高が高いのでクルマの動きが大きくなっているけれど、AWDのよさを活かせるように仕上げていきたい」とのこと。
同じくハイパフォXのステアリングを握る山内英輝選手も、「シェイクダウンから短い時間でしたが、早いスピードで改善されているのでいいことだと思います。でも、この排気量で考えるとまだまだです。市販車に近い状態でノビシロしかないので、煮詰めていきたいと思います」と印象を語る。
こうしてデビュー戦を迎えたハイパフォXは、27日の予選でST-Qクラスの4位を獲得した。Bドライバーのタイムで見ると、山内選手のベストタイムが2分03秒742で、ST-2クラスでベストタイムをマークした三菱ランサーの2分00秒382(菊池靖選手)と比べると約3秒も遅い状態。井口/山内の両選手が語るように、現時点では熟成不足の段階にあるようだ。
さらに、28日に行われた5時間の決勝でもマイナートラブルが続出。本井チーム代表によれば、「最初は順調だったんですけど、サスペンションの部品がタイヤに接触していたので、ピットインして対応しました。その後は反対側も同じ症状が出ていたのでピットイン。そのあとはエンジンが吹けない状態になったのでピットイン。原因はわからなかったので、いろんな部品を変えたことで症状は治ったんですけど、足まわりとエンジンのトラブルはその後も出ていました」とのことで、ハイパフォXは予定外のピットインを繰り返しながらの走行を強いられることとなったのである。
その結果、ハイパフォXはST-Qクラスの4番手となる98周でチェッカー。しかし、残念ながら規定周回数にわずかに届かず、ハイパフォXは完走を果たせずに、デビュー戦を終えることとなった。
このように、スバル勢にとってはほろ苦いデビュー戦となったが、「ロングおよび実戦スピードゆえに発生したトラブルですからね。チームとしてはポジティブに捉えていて、次戦までに検証と対策を行いたいと思います。それに、若いスタッフのアイディアが意外とハマってプロドライバーが高く評価してくれたことでモチベーションも高まっている。この一戦を通してチームの雰囲気がよくなっていることが大きい」と本井チーム代表はコメント。
さらに伊藤監督も、「目標としてはAWDだけどよく曲がるクルマにしたい。速さという部分では、ST-ZクラスのGT4車両と戦ってほしい……というファンの期待もあるので、まずはST-2クラスでトップを目指して、次にGT4車両を目指したい。これまでは枠のなかで抑えていた部分もありますが、今後はテーマを達成するために必要な部分があればトライしていきたい」と振り幅の広いアップデートを行なっていくようなので、今後もハイパフォXの動向に注目したいものだ。
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なんならロードスターですら私の今の身分では高嶺の花だ