はじめに
ボルボはEX30で、電動化への道のりの進み方を変えようと狙っている。このコンパクトなEVは、イエーテボリの販売比率に大きなインパクトをもたらす、と期待されるモデルだ。
すでに、2025年までにはグローバル販売台数の50%、2030年には100%をピュアEVにする目標を掲げているボルボ。しかしながら、それを達成するには、EX30のように手頃なBEVが必要だ。しかし、それ以上に必要なのは、それを購入してくれるユーザーを今よりもっと増やすことだ。
電動化への意欲を後退させた、もしくは多少トーンダウンさせたといえる動きだが、ボルボのようなブランドが、そうしたのはどういうわけか。手頃なEVの拡充が足りないわけでもないのに、英国を含む西側マーケットの多くでEVの普及率が15~25%程度にとどまっているのが現状だからだ。
そのため、EX30が直面する商業的なチャレンジは重要なものとなるだろう。しかし、われわれの関心は、このクルマそのものが納得できる走りをもたらし、成功を収めることのできるEVなのかということに尽きる。
これが新種のボルボだと言える理由はいくつかある。まず、1970年代のボルボ−DAF300シリーズ以来、最小のラインナップだ。XC40派生のC40を除けば、初のEV専用設計モデルでもある。そして、ジーリー傘下で完全新開発されたプラットフォームの初採用例だ。
ボルボによれば、購買層は彼らの顧客としてはもっとも若い世代で、これまでボルボを買ったことのないユーザーが4分の3を占めているという。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
ボルボはこのクルマを、自社の基準で小さく仕立てたが、コンパクトEVのクラス標準を無視したわけではない。EX30という車名が示すように、これは完全電動のコンパクトSUVだ。イエーテボリのラインナップでは、全長がひとクラス上のモデルより200mm以上ショートという寸法となっている。
しかも5ドアでありながら、1986年デビューの480や、2006年に登場したフォード・フォーカスがベースのC30といった3ドア車よりも短いのだ。とはいえ、競合車にはこれよりさらに200mm短いジープ・アヴェンジャーのような例もあるのだが。
現時点では、全高をほどほどに抑えたクロスオーバー的なモデルのみを設定しているEX30。しかし、今年後半には、地上高を引き上げたクロスカントリー仕様が追加される予定だ。
プラットフォームはサステイナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャーと銘打たれ、略称はSEA。ジーリーが新世代電動車のため開発したコンポーネンツで、スマートの#1や#3、ポールスター4などに採用されるほか、ロータス・エレトレのEPAプラットフォームのベースともなっている。
ジーリー曰く、SEAは単なるスケートボードタイプのシャシーではなく、プラットフォームのファミリーに近いものだとか。EX30では、スティールシャシーをベースに、ボディはスティールやアルミ、プラスティックで構成し、リサイクル素材の比率は60%近くに上るらしい。
室内では、プラスティック成形材の5分の1ほどがリサイクル材で、内装材は再生素材のポリエステルやデニムを使用している。
そうしたもろもろの結果として、EX30は製造から使用までを通したライフサイクル全体でのカーボンフットプリントが自社史上最小になったと、ボルボは主張する。XC40のガソリン車に比較すると、じつに半分だということだ。
そうしたサステナビリティ的な要素が、若くて環境意識の高いユーザーへ訴求することを、ボルボは期待している。しかし、エシカルな主張ばかりを押し付けるというわけではない。競合モデルの多くがそうであるように、EX30はリアモーターの後輪駆動をベースとする。最高出力は272ps、最大トルクは35.0kg-mだ。テスト車の実測重量は1779kgなので、パワーウェイトレシオはBMW i5 eドライブ40に近い。
参考までに、同じクラスのEVの車両重量を引き合いに出すなら、フォルクスワーゲンID3 58kWhが1757kg、プジョーe−2008GTが1638kgだった。
更なる高性能モデルを求めるなら、ツインモーターのパフォーマンス・プラスという選択肢もある。156psのフロントモーターを追加し、合計429psで0−100km/h加速はボルボ量産モデル史上最速の3.6秒をマークする。
バッテリーはリチウムイオンで、2種類を設定。ベーシックモデルには実用容量49kWhのリン酸鉄タイプ、エクステンデッドレンジ系とツインモーター系には64kWhのニッケル・マンガン・コバルトタイプ。テスト車のWLTPモード航続距離は476kmと、手頃な価格帯のEVとしては上々の部類だ。
内装 ★★★★★☆☆☆☆☆
ボルボの内装デザイナーが、EX30のキャビンをかくもスッキリとして手触りよく、訴求力のある空間に仕上げたことには賞賛を贈りたい。リサイクル素材を多用しながら、モールディングパネルや加飾トリムは魅力的でソリッドなタッチ。面白みや斬新さもある。
とはいえ、足りないものも目につく。ドライバーの前にはメーターパネルもヘッドアップディスプレイも存在しない。パワーウインドウのスイッチはセンターコンソールにあり、ドアパネルにはスピーカーもスイッチも一切据え付けられていない。
ドリンクホルダーは、センターアームレストの下から引き出すタイプで、その前方には小さなグローブボックスを配置。あとはシンメトリカルなレイアウトのインテリアで、右ハンドルか左ハンドルかで大きな変更が必要になる複雑な造形は加えられていない。
ダッシュボード下部に要素はほとんどなく、センターコンソール前方の浅い蓋つき小物入れに変わるストレージが追加できるくらいだ。上部にはインフォテインメントシステム用の12.3インチ縦型タッチディスプレイを設置。その画面は上端に簡素化されたデジタルメーターパネルを表示し、その下はトリップコンピューターのデータやマップ、オーディオ/電話/空調などの操作パネルが占める。さらに、フォグライトやワイパー、ADASの設定といったその他もろもろの2次的コントロール系もここからアクセスする。
言うまでもなく、これはなかなか大胆なエルゴノミクスの見直しだ。それも、われわれの基準からすれば、問題視すべき類の。ステアリングコラムからは、右側にトランスミッション、左側にメインライトと方向指示灯、フロントウインドウウォッシャーを操作するレバーが生えているが、操作系の主体はタッチ画面に集約されすぎている。
重要な機能へのアクセス性は抜群と言うにはほど遠く、ドライバビリティに重大な問題を引き起こしかねないほど深刻だ。たとえば、ドライバーモニタリングや制限速度アラームをカットするには経るべき手順が多すぎ、しかもカーソルをコントロールできる実体式デバイスは用意されないので、その手の作業をしようとすると、周囲への注意力が大きく削がれる。
ボルボが言うには、インフォテインメントのホーム画面は今年後半にもソフトウェアのOTAアップデートを実施し、問題は改善されるとのことなので、それが現実となることを望みたい。それでも大部分は、安全性重視のボルボであれば、もっとシンプルかつ容易に操作できて、集中力を逸らすことなく安心して運転できることを期待するものだ。
さらに言うなら、実用性も高めてほしい。後席も荷室も、はるかに使い勝手のいい選択肢が存在するクラスにおいては、評価するに足りるレベルではない。
走り ★★★★★★★★☆☆
EX30はシングルモーター仕様であっても、かなり完成度が高く上質だが、爽快で威勢のいいドライビングも楽しめる。ゼロスタートは唐突に発進するものではないが、トラクションも落ち着きもたっぷりありながら加速性能も高い。ドライだが冷えた路面では、5.7秒で97km/hに届き、48−113km/hは5.1秒だった。参考までに競合車のデータを見てみると、キア・ニロEVは6.9秒と5.6秒だった。
しかし、そのリニアにして静粛性に優れ、レスポンスにも優れたパフォーマンスを堪能する前には、このクルマの悩みどころを和らげる過程を経なければならない。その主犯格はドライバーモニタリングシステム、共犯は計器類とインフォテインメント系を集中させたセンター画面だ。
ドライバーモニタリングシステムが作動していると、センター画面のメーター表示を2~3秒以上見ているだけで厳しく非難してくる。むしろわれわれとしては、自然な視線の近くに計器類を設置していないことを責めたいのだが。同じことは、バックミラーや、運転席側の窓外へ目を向けたときにも起こる。
これでは運転中に気が散ってしかたがないので、走り出す前にシステムをオフにしたくなる。再始動するたびにリセットされてしまうのだが、それでも毎回切ることをおすすめしたい。
その通過儀礼を終えれば、EX30はひたすら心地よく、必要十分か、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮してくれる。速さに不満はなく、少なからぬ差があるとはいえ、デュアルモーター仕様が割高で選ばなくてもいいものに思えてくるほどだ。トルクバンドは広く、高速道路の速度域でも不足を感じさせない。少なくともこの段階までは、運転しづらさは感じない。
気になるのは、エネルギー回生の手動調整機構やBレンジ、パワートレインのワンペダル運転セッティングがないことだ。ブレーキペダルを軽く踏んだあたりではモーターによる減速をうまく織り込んでくれるのだが、スロットルを抜いただけでは回生せずに前進を続けようとする傾向がある。
もっとも、パワートレインのエネルギーマネージメントがマニュアル制御できることを好むのは、たいていがEV慣れしたドライバーだろう。大多数のユーザーは、そうしたことができないシンプルな操作系でも問題視することはないはずだ。
使い勝手 ★★★★★☆☆☆☆☆
インフォテインメント
EX30に装備される12.3インチ画面のインフォテインメントシステムは、Googleオートモーティブのソフトウェアを用いるが、導入時点でAppleとAndroidのミラーリング対応も確約されていた。ところが残念なことに、ボルボがOTAアップデートで追加されるとしていたAppleとの互換性が、テスト車を見る限り導入されていない。同様の問題は、ポールスター2の導入時にもあったのだが。
トップ画面には、競合するシステムにあるようなユーザーが調整できる能力が欠けていて、メニューの階層を掘り進めないと使用頻度の高い機能へたどり着けないことも少なくない。ボルボはホーム画面に幾つかのパターンを用意しているが、ショートカットを並べたツールバーは不在。この有無が、使い勝手を大きく左右すると思うのだが。
今のままでは、ドライバビリティに直接関係する各機能の操作があまりに呼び出しづらい。機能をオフにしたはずが、再起動のたび勝手にリセットされてオンになるのもうっとうしい。
Googleベースのナビを用いる利点は、Googleアカウントを持っていればアドレスや目的地をセーブできることだ。テスト車にはハーマンカードンのプレミアムオーディオが装備されていたが、ドアスピーカーがないので、音はやや痩せ気味だ。
燈火類
LEDライトは標準装備で、パワーも照射範囲もかなりのもの。自動減光機能は備わるが、前走車への反応は対向車へのそれより遅い。
ステアリングとペダル
一般的な2ペダルのレイアウトは問題なく、ブレーキペダルは左右どちらの足でも操作しやすい。ステアリングコラムは、チルトもテレスコピックも調整幅が広い。
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
ボルボは、25年前と比べたらガラリと様相が変わってしまった。そうでないとしても彼らが、少なくともハンドリングに関して、アジリティやファンな要素で多少なりとも味付けした、若者向けのスモールカーを送り出すとは予想しなかったのではないだろうか。
とはいうものの、EX30はそこを売りにするクルマではない。ステアリングはかなり軽くてフィールはダイレクトでなく、ペースはほどほどだ。小さなクルマに時折見られる素早くエネルギッシュなノーズの動きを装うことはなく、ハンドリングは常に直観的だ。
しかしそうであっても、気合を入れると走りには明らかに鋭さの兆候が現れる。横グリップのレベルと旋回時のボディコントロールは、クロスオーバーモデルとしてはかなりいい。ターンインは安定しているがロールに耐える構えができていて、四輪の接地面を駆使してタイトな走行ラインを断固捉え続ける。そのとき、前輪が軽くなるフィールはまったくない。リアモーターながら、前後重量配分は48:52というバランスも効いているのだろう。
安全策として常にアンダーステア傾向とすることはなく、安全性重視の安定性を主張するためにスタビリティコントロールの介入を強めることもしていない。
特別に走りが楽しいクルマではない。活発さに欠けるところがあり、穏やかさが勝っている。ステアリングやシャシーのレスポンスは、クプラ・ボーンのようなドライバーを夢中にさせてくれるクルマに後れをとっている。それでも、まずまず気持ちいいドライビングを味わえる。
快適性/静粛性 ★★★★★★☆☆☆☆
EX30の運転席は、ハッチバックにありがちな高さで、シート自体もさほど大きくも包み込むような形状でもないが、周辺のスペースが広くて快適なのはたしかだ。座面も背もたれもアジャスト性はやや限定的だが、テスターのほとんどは適切で快適なドライビングポジションをいつでも見つけられた。フロントとサイドの視認性は良好、後方や肩越しも問題はない。
巡航時の騒音計の数値は、80km/hで63dBA、113km/hで66dBA。それぞれ、いずれかでライバル各車を凌ぐ静粛性を見せるが、全面的に圧倒するほどではなかった。スピードを上げると、19インチホイールが多少のロードノイズを発するのが聞き取れる。
しかし、やや過敏で、A級道路やB級道路でも妙にピッチの出る乗り心地は、プレミアム物件を名乗るには小さからぬ支障だ。その一因は車両重量にありそうだが、そこにトラベルの長いサスペンションという組み合わせも理由なのだろう。
このシャシーは、モーターを積んで駆動するリアアクスルを、一種のモーションダンパーとして使うようなチューニングを施しているようなところがある。凹凸の大きい道路では、後輪上の上下動は穏やかだが一貫した挙動になるはずだ。
コントロールを失うことは決してないが、完全に制御できることもめったにない。快適性全般を考えれば、ポジティブな効果をもたらす策ではない。
購入と維持 ★★★★★★☆☆☆☆
英国での価格設定は3万3795ポンド(約649万円)からというEX30をして、ボルボは購入の敷居を大きく引き下げたと言うが、これは装備がシンプルで、バッテリー容量も航続距離も最小のシングルモーター・プラス仕様の場合だ。
テスト車は中間グレードのシングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラスで、価格は3万8545ポンド(約740万円)となるが、装備は充実している。パイロット機能付きのクルーズコントロールのほか、ボルボご自慢の安全システムはフル装備状態。ワイヤレス充電器やプレミアムオーディオ、前席とステアリングホイールのヒーターもついてくる。
それ以上を望むなら、4万2045ポンド(約807万円)のウルトラへアップグレードする以外に選択肢はない。オプションパッケージなどは用意されていないからだ。
残念だったのは電費だ。英国の高速道路の制限速度である113km/hで巡航した場合は4.2km/kWhに留まった。たしかに気温の低い中でのテストだったのだが、テスト車にはヒートポンプが標準装備されていたというのに、この数字では不満を覚える。
低速走行であれば、公称値に近い数字が出るのだが、複合的な使い方をすると、一充電あたり288kmしか走れないのだ。主なライバルは、これより25~40%は余計に走る。
スペック
レイアウト
EX30は、親会社であるジーリーが主体となって開発したSEAモデルプラットフォームを用いる最初のボルボ。これは、スマートの#1や#3と共用するコンポーネンツだ。モーターはリア置きで、後輪を駆動する。
サスペンションは四輪独立で、フラットな駆動用バッテリーをキャビンの床下に搭載。エントリーモデルはリン酸鉄リチウムイオンだ。前後重量配分は、実測で48:52だ。
パワーユニット
駆動方式:リア横置き後輪駆動
形式:永久磁石同期式電動機
駆動用バッテリー:リチウムイオン(ニッケル・マンガン・コバルト)・400V・69.0/64.0kWh(グロス値/ネット値)
総合最高出力:272ps/5375-9248rpm
総合最大トルク:35.0kg-m/116-5375rpm
最大エネルギー回生性能:-kW
許容回転数:-rpm
馬力荷重比:153ps/t
トルク荷重比:19.8kg-m/t
ボディ/シャシー
全長:4233mm
ホイールベース:2650mm
オーバーハング(前):788mm
オーバーハング(後):795mm
全幅(ミラー含む):2032mm
全幅(両ドア開き):3620mm
全高:1549mm
全高:(テールゲート開き):2050mm
足元長さ(前席):最大1120mm
足元長さ(後席):690mm
座面~天井(前席):最大980mm
座面~天井(後席):920mm
積載容量・前/後:7L/318~904L
構造:スティールモノコック、スティール/アルミ/コンポジット複合ボディ
車両重量:1775kg(公称値)/1779kg(実測値)
抗力係数:0.28
ホイール前・後:8.0×19
タイヤ前・後:245/45 R19 102V
グッドイヤー・エフィシエントグリップ・パフォーマンスSUV
スペアタイヤ:なし(パンク修理剤)
変速機
形式:1速リダクションギア
ギア比
リダクション比:-
1000rpm時車速:-km/h
113km/h/129km/h時モーター回転数:-rpm/-rpm
電力消費率
AUTOCAR実測値:消費率
総平均:4.5km/kWh
ツーリング:4.2km/kWh
動力性能計測時:2.7km/kWh
メーカー公表値:消費率
低速(市街地):8.7km/kWh
中速(郊外):-km/kWh
高速(高速道路):-km/kWh
超高速:-km/kWh
混合:6.0km/kWh
公称航続距離:476km
テスト時航続距離:288km
CO2排出量:0g/km
サスペンション
前:マクファーソンストラット/コイルスプリング、スタビライザー
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザー
ステアリング
形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.8回転
最小回転直径:11.0m
ブレーキ
前:322mm通気冷却式ディスク
後:320mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS、ESC、EBD、EBA
ハンドブレーキ:電動・完全自動式
静粛性
アイドリング:-dBA
全開走行時(145km/h):71dBA
48km/h走行時:58dBA
80km/h走行時:63dBA
113km/h走行時:66dBA
安全装備
ABS/ESC/EBA/EBD/AEB/BLIS/RCTA/ステアアシスト
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
交通弱者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%
発進加速
テスト条件:乾燥路面/気温4℃
0-30マイル/時(48km/h):2.4秒
0-40(64):3.2秒
0-50(80):4.3秒
0-60(97):5.7秒
0-70(113):7.5秒
0-80(129):9.7秒
0-90(145):12.5秒
0-100(161):16.1秒
0-110(177):20.8秒
0-402m発進加速:14.5秒(到達速度:154.7km/h)
0-1000m発進加速:27.0秒(到達速度:179.4km/h)
ライバルの発進加速ライバルの発進加速
スマート#1プレミアム(2023年)
テスト条件:湿潤路面/気温12℃
0-30マイル/時(48km/h):2.5秒
0-40(64):3.4秒
0-50(80):4.4秒
0-60(97):5.6秒
0-70(113):7.1秒
0-80(129):9.1秒
0-90(145):11.5秒
0-100(161):14.4秒
0-110(177):18.4秒
0-402m発進加速:14.3秒(到達速度:160.5km/h)
0-1000m発進加速:26.5秒(到達速度:180.2km/h)
キックダウン加速
20-40mph(32-64km/h):1.6秒
30-50(48-80):1.9秒
40-60(64-97):2.4秒
50-70(80-113):3.1秒
60-80(97-129):4.0秒
70-90(113-145):5.1秒
80-100(129-161):6.5秒
90-110(145-177):8.3秒
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温4℃
30-0マイル/時(48km/h):8.8m
50-0マイル/時(80km/h):23.6m
70-0マイル/時(113km/h):45.9m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.96秒
ライバルの制動距離スマート#1プレミアム(2023年)
テスト条件:湿潤路面/気温12℃
30-0マイル/時(48km/h):8.6m
50-0マイル/時(80km/h):23.1m
70-0マイル/時(113km/h):46.0m
結論 ★★★★★★☆☆☆☆
自動車メーカーがどこもそうであるように、ボルボもマーケットの新たなセグメントへ参入する際には、それまでと異なることをしても許されるものだ。しかし、それが裏目に出るのはいただけない。少なくとも、それを非難する声がなかったわけではないのに。
スモールSUVだとカテゴライズされているものの、EX30の実態は地上高を多少引き上げたものの、まずまずうまいパッケージングを施したハッチバックだ。ボルボのラインナップとしては、明らかに異なる方向性を示している。『小さいのだから、実用面の不足には目をつぶろう』という姿勢が透けて見える。競合するコンパクトEVと並べても、パッケージングも万能性もそこそこだ。
このクルマのポジショニングは、とくに2モーター仕様で言えることがだが、必要以上に強力なパフォーマンスを備えていながら、効率性や航続距離は物足りず、乗り心地の煮詰めもやや足りないという、これまでにないほど不合理なものとなっている。
しかしながら、キャビンのレイアウトやデジタル操作系のコンセプトは、ある種のサステナビリティや安全への傾倒ぶりが押し付けがましいくらい感じられる。しかし実際のところは、操作のしやすさやドライバーの注意力を逸らさないようにするという点で、ボルボのあるべき姿よりかなりの妥協を強いるものとなってしまっているのだ。
担当テスターのアドバイス
イリヤ・バプラートエネルギー回生の標準設定はかなりマイルドだが、完全にオフになるわけではない。そして、プラットフォームを共用するスマート#1と同じ、レスポンス遅れという問題を抱えている。50km/h程度を維持して走ろうとすると、穏やかながらブレーキがかかってしまうことがある。
マット・ソーンダースボルボのソフトウェア担当エンジニアは、この秋にインフォテインメント系のアップデートを実施し、使い勝手を大幅に高めるという。それを実現するためにカスタマーデータの収集が必要だった、と言うのが彼らの主張だが、ユーザーの手に渡る前に真っ当な商品に仕上げておくのが、作り手の筋というものではないだろうか。
オプション追加のアドバイス
テスト車となったシングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス以上の装備内容は必要ないだろう。しかし、長距離移動の機会がないなら、エントリーモデルは検討の余地あり。軽量なぶん、乗り心地と電費が改善されるはずだ。
改善してほしいポイント
・重量のかさむモデルは、ダンパーのチューンが必要だ。
・ドライバーモニタリングと制限速度アラームの作動はもっと唐突でないものにしてもらいたい。
・メーターとトリップコンピュータの情報を表示するヘッドアップディスプレイがほしい。
・ADASやドライバーモニタリングへダイレクトにアクセスできる実体ボタンを装備してほしい。
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