もくじ
ー かつてもあった2社の関係
ー サーブのよさはインテリアに
ー ルイス・ブースの見解:魔法が必要
かつてもあった2社の関係
10年前、スバルがサーブ向けに最後の9-2Xを送りだしたあと、不運なサーブ-スバルの提携関係は解消された。2000年以降、サーブはGMの100%子会社であり、当時GMはスバルの株式も所有していたのだ。
2005年の発売が予定されていた新型9-5の開発計画がGMとフィアットの資本提携が解消された際にキャンセルされたため、新型モデルを欲しがる米国のサーブ・ディーラーの求めに応じて、GMはスバルに白羽の矢を立てた。
9-2Xは主に音振対策のためにベースとなったインプレッサよりも重くなっていたが、その走りはしなやかで、サーブ-スバルの次の計画である当時発売間近のスバル・トライベッカを下敷きにしたSUVモデルに期待を持たせるできだった。
サーブはこのサーバル(サーブ+スバル)とでも呼ぶべきSUVモデルの販売コンセプトまで作り上げたが、2005年初頭にGMがスバルの株式を売却したことで、計画自体が棚上げとなった。
確立した自動車メーカーというよりも、素晴らしいエンジニアリングのノウハウを持った企業として、サーブの消滅は大いに惜しまれる。素晴らしいできのシートと、最高に低く座らせるドライビング・ポジション、道路状況が悪くても矢のようにまっすぐ走る直進安定性や、実際の道路上における真の安全性といつでも必要な時に取りだせるパワーの組み合わせによって、長距離向けとして知られている大概のモデルよりも優れたグランドツアラーだった。
こういった美点はスバルに引き継がれており、スバルの新グローバル・プラットフォームは新世代サーブの素晴らしいベースとなるだろう。
この新しいプラットフォームを採用したクルマは米国と日本でこれまでテストされた車両のなかで最も安全との評価を受けている。長距離運転の快適性と直進性の良さは、スバル独自のプラットフォームによるフルタイム4輪駆動の特徴とも言えるが、こんな贅沢なつくりはレンジローバーほどの大きさのクルマ以外では珍しい。
スバルが誇る驚くほど滑らかで素直な2.5ℓ水平対向4気筒エンジンもまた、サーブの素晴らしいエンジンとなるだろう。
では、サーブの伝統をスバルの車体にどうやって活かすべきだろう?
サーブのよさはインテリアに
最初のポイントはスタイリングである。スバルのクルマを尊敬してはいるが、その見た目は最高という訳ではないとAUTOCARは思っている。
第2世代のサーブ9-5を思いだして欲しい。このサルーンは5年以上前のモデルだが、そのスタイリングは依然として素晴らしく、ほんの僅かしか存在していないエステート・モデルも見事なデザインを纏っている。
しかし、スバルの骨格にサーブの表皮を与える最大の理由はインテリアにある。未だ誰もサーブを越えるシートを作りだしたものはなく、特にダッシュボードとインストゥルメントに代表されるインテリアの雰囲気は依然として自動車デザインの到達点のひとつに位置付けられる。
サーブ最後のモデルとなった9-5と9-4Xの美しいバックライト照明に照らされた素晴らしく見やすいフォント、柔らかな曲線を描くダッシュボードは高級車市場でも際立つ存在だろう。
サーブのフェニックス計画を思いだしても良いかもしれない。ビクター・ミューラーの下で2011年に立案されたものだが、この計画ではインフォテインメント・システムの大部分がアンドロイドのOSで機能する予定だったのだ。なんと的確な未来予測だったのだろう。
スバルは収益性を維持しながら昨年100万台のクルマを作りだした。サーブの復活とサーブ風のアウトバック、フォレスターやXVはスバルのビジネスを成長させるだけでなく、多くが復活を望むスウェーデン・ブランドの真の姿を保つこともできるのだ。
ルイス・ブースの見解:魔法が必要
名の知られた革新的なブランドを復活させることができるかもしれない。しかし、デザインを変えただけのスバルのクルマなど必要だろうか?
サーブのエッセンスを取り入れた優れたクルマになるのか、それとも単なるバッジ・エンジニアリング・モデルになる危険を冒すだけになるのだろうか?
この境界線は非常にあいまいであり、サーブには本物の、そして恐らくは金の掛かるイノベーションがあって初めて信頼を得る事ができる。
そして、スバルのメリットは何だろう?
販売チャンネルはなく、自分たちのモデルと競合するリスクがありながら、販売数量も期待できず、これまで慎重に築き上げてきたスバルのブランドを棄損する恐れもある。
サーブのことは放っておいて、自分たちの将来に集中した方が良いだろう。
オタク向けアピール度:7/10
顧客向けアピール度:6/10
ビジネスプラン:5/10
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