ピカピカの初代クラウン初期ロット車
執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)
【画像】神奈川トヨタがレストア 初代クラウン【細部まで見る】 全78枚
2月19~20日にパシフィコ横浜で開催されたクラシックモーターショー、ノスタルジック2デイズ。
その会場内で、ひときわ輝いていたのが、トヨタモビリティ神奈川(神奈川トヨタ)が出展していた、初代トヨタ・クラウン(トヨペット・クラウン)だ。
漆黒のボディは新車のごとく、いや新車以上にピカピカに輝き、室内も古さを感じさせない。しかも、ナンバープレートは当時のまま、陸運局の地名(品川や多摩など)が付かない「5」で始まるものなのだ。
RS型と呼ばれる初代クラウンが発表されたのが、1955年(昭和30年)1月。
そしてこのクルマは、その年の5月登録。まさに「初期ロット」と呼べるモデルだ。
その証拠が、ボンネット内のフェンダーに刻まれた熱気抜きのスリット。これは初代クラウンの、それも初期ロットにしか採用されていないものだという。
このクラウンのオーナー、仮にA氏としよう。A氏は、当時20代半ば。お母様が資金を工面してくれてこのクラウンを手に入れた。その後、ご両親やお兄様も亡くなり、このクラウンはA氏にとって家族のような存在になっていった。
以来、新しい家族ができ、クルマを買い換えようと言われても、頑なにこのクラウンを愛し続ける。他のクルマは考えたことがなかったという。
買い換えず、1台を乗り続けて「一生モノ」
展示されたクラウンをよく見ると、ボンネットのマスコットやサイドのアクセントモールなど、1955年12月に発表されたRSD型のようなのだが、実際はRS型。
これはA氏がパーツを取り寄せて、RS型をRSD型に仕立てていたのだった。
したがってRS型の特徴の1つだったスプリット・フロントウインドウは、1枚ガラスに換えられている。
ところで、旧車を乗り続ける場合、たいていは普段使いに新しいクルマも所有している人が多いのだが、A氏は生涯このクラウン1台だけ。
普段使いでも、このクラウンを乗り続けていた。遠出をする機会は少なかったのか、実走行は11万kmほどだった。
自宅の近くにあった神奈川トヨタのディーラーで、新型のクラウンが登場するたびに、A氏はこのクラウンを快く展示用に貸し出してくれた。しかも、パーティションなどは張らず、誰でもドアを開けて乗り込んでかまわない、みんなにこのクルマを見てもらいたいと言うのだった。
晩年、愛するクラウンに乗れなくなったA氏は、神奈川トヨタに無償で譲渡している。ただし、条件が2つ。
1. 絶対に転売しないこと。
2. 今後も一人でも多くの人に見てもらうこと。
ボディとフレーム「ピタリとおさまった」
その条件を約束してA氏のクラウンを譲り受けた神奈川トヨタでは、クラウン誕生60周年を記念して2016年に行われるイベントのパレードに参加すべく、フルレストアを行う。
ボディカバーは掛けられていたが青空駐車だったというA氏のクラウンは、マメにワックスをかけられて外装はキレイだったが、さすがにロッカーパネル、フロア(とくにトランク下)などは腐食していた。
それでも、分解してフレームだけにしてサビを落として塗装をし直し、再びボディを載せると「ピタリとおさまった(神奈川トヨタ渉外広報部 加藤久雄 渉外担当室長)」。それだけ、フレームに狂いはなかったのだ。
エンジンや駆動系もオーバーホールされた。インテリアでは、シート地はフロントは張り替えたが、リアは新車時のものを直して使っている。美しく再塗装されたボディは、ガラスコーティングが3回も施されている。
BFグッドリッチ製のホワイトリボン・タイヤは、日本では入手できず海外から取り寄せた。消耗部品は、「生涯、乗り続ける」と決めていたA氏が多くをストックしていたので、それも活用することができた。
2年近くの期間をかけて(実作業は1年くらいだったそうだが)フルレストアされたA氏のクラウンは、「クラウン・ジャパン・フェスタ」と名づけられて2016年に開催されたクラウン誕生60周年記念イベントで、生まれ故郷である愛知県豊田市の元町工場からゴールの東京・代官山までの430kmをノートラブルで走りきった。
だが、残念ながらA氏はその姿を見ることなく彼岸へと旅立っていた。
今も公道走行可能 生きた教材に
1955年に新車登録された当時のナンバープレートを付けたA氏のクラウンは、もちろん今もA氏との約束どおり神奈川トヨタが所有している。
最新の燃料電池自動車「ミライ」と並べて展示されたり、小学校の体験授業における「生きた教材」として子ども達と過ごしたり、レストア訴求のためのイベントなど、さまざまな場所で活躍している。
そして、A氏とのもう1つの約束「一人でも多くの人に見てもらう」も果たされている。
ノスタルジック2デイズの会場でもドアは開け放たれており、多くの人がこのクラウンに乗り込んで、記念写真を撮ったり、ハンドルを握ったりしながら「カッコいいね」「キレイだね」と笑顔を見せていた。
ただ一人のオーナーに愛され、彼の亡き後も遺志を受け継いで美しくレストアされ、多くの人に見てもらえるA氏の初代クラウンは、博物館で余生を送るのではなく、現在も公道を走っている。
これほど幸せなクルマは、世の中にそうはないだろう。そして、このクルマを愛し続けたA氏のクルマ人生も、幸せだったに違いないと思わせてくれるのだった。
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