代名詞といえる王冠マークは2代目から与えられた
外国車のノックダウン生産ではなく、オールトヨタ、いやオールジャパンで製作された日本初の純国産高級車、それが初代トヨペット・クラウンだった。当時、自動車大国と言えばダントツでアメリカだったゆえ、初代クラウンもアメ車の影響が色濃い。トヨタ社内のデザインだが、まるでアメリカ車のような雰囲気。大きさは全長4.3mと現在の基準からすればコンパクトカーレベル。リヤドアは前方から開くため、フロントドアと両方開けると観音開きになる。専用のシャシーが奢られ、フロントのサスペンションは独立式ダブルウイッシュボーンを採用するなど、当時の先進技術を惜しみなく投入した。
「守るべき伝統と打ち破る伝統」新型トヨタ・クラウン開発陣が込めた想いとは
驚くべきことに、初代クラウンはアメリカに輸出された。だがさすがにビッグ3の壁は厚かった。当時でもキャデラックは6Lもあり、勝負にならなかった。1962年に、これもアメ車の影響が強い2代目クラウンが登場。クラウンの象徴でもある王冠マークはこの代から装着され、1964年には日本初のV8エンジンを搭載した「クラウン・エイト」も登場。
1967年登場の3代目では、6気筒エンジンを主力に据え、2ドアクーペもラインアップに加えている。この当時は商用バンの設定もあり、さらにピックアップもあった。初期のクラウンは高級車であり、また実用車でもあった。
1955年 初代トヨペット・クラウン
純国産で作られた我が国最初の高級車
他社がノックダウン生産を選択するなか、日本初の純粋な国産車として誕生した。搭載されたエンジンは1.5L 4気筒OHV。1958年には国産乗用車初のディーゼルも搭載され、さらに1960年には1.9Lエンジンも追加されている。
1962年 2代目トヨペット・クラウン
伝統の王冠エンブレムをまとい6気筒エンジンも初搭載 直線基調のスタイリングは「フラットデッキスタイル」と呼ばれるもので、これもアメ車の影響。ボディは5ナンバーサイズギリギリまで拡大された。1965年には6気筒エンジンを積むスポーティグレード「クラウンS」も登場した。
1967年 3代目トヨペット・クラウン
「日本の美」をテーマに独自の高級車像を投影 庶民には高嶺の花だったクラウンは、法人ユースが主だった。だが3代目は、初めてパーソナルユースを意識したクルマで、定番の4ドアセダンに加え、流麗な2ドアハードトップも設定。主力はすっかり6気筒モデルとなっていた。
1971年 4代目トヨタ・クラウン
紡錘形のデザインの通称「クジラ」は意欲作も販売では苦戦 「スピンドル・シェイプ」と呼ばれる斬新なフォルムに身を包み、トヨペット→トヨタとなった4代目。だが保守的なユーザーからの評価は低かった。世界初のアイドリングストップをオプションで設定(MT車)したクルマでもある。
1960年 日産セドリック
宿命のライバルも現る!! 1959年にプリンスから「グロリア」、1960年に日産から「セドリック」がデビュー。1966年に両社は合併し、セド/グロはクラウン最大のライバルとして高級車を牽引する。 成功とは言えなかった4代目クラウンは3年8カ月という短い期間で5代目へとスイッチ。5代目はまさしく威風堂々、オーソドックスでコンサバティブな日本的高級車を表現して見せた。従来からの4ドアセダン、2ドアハードトップ、ワゴンに加え「4ドアピラードハードトップ」も設定。内外装とも豪華極まりない。このモデル以降、クラウンはこのコンセプトをずっと踏襲。誰もが思い浮かべるニッポンの高級車、クラウンが形作られていく。
1980年代には「ハイソカーブーム」が巻き起こる。マーク2 3兄弟は凄まじい人気だった。だがハイソカーブームはクラウンの人気をも押し上げ、3ナンバー車販売台数1位まで上り詰める。だがそんなとき、クラウン最大のライバルが現れる。
1989年にアメリカで「レクサス」を立ち上げ、「LS」を日本でもトヨタ・セルシオとして販売することになった。クラウンよりもはるかに大きく、動力性能も上。装備面も豪華極まりなく、静粛性も高い。しかも操縦性はヨーロッパの高級車並みで完全にクラウンの上位互換。クラウンの人気はガタ落ち……と思いきや、まったくそんなことはなかった。1955年からある「クラウン」というブランドは、完全に人々に認知されていた。たとえレクサスやセルシオが立ちはだかっても、びくともしないブランドとして確立していたのだ。
1974年 5代目トヨタ・クラウン
先代モデルの反省からオーセンティックな美を表現 先代の大失敗から一転、コンサバ極まりないスタイルとなった5代目。以降、この路線が踏襲されていき、クラウンのターニングポイントとなったクルマでもある。2.6Lには後に伝統のグレードとなる「ロイヤルサルーン」も初設定された。
1979年 6代目トヨタ・クラウン
デザインはより直線的になり和を意識した独自の世界観を演出 よりスクエアなスタイルとなったが完全にキープコンセプトの6代目。セダン&ワゴンは角目4灯、2ドア&4ドアハードトップは角目2灯の顔付き。上級モデルのエンジンは2.8Lとなり、2Lは1981年には新世代の1G-EU型へと切り替わった。
1983年 7代目トヨタ・クラウン
キャッチコピーは「いつかはクラウン」国産高級車の頂点に君臨 あの有名なキャッチコピーが使用された7代目。2ドアハードトップを廃止し、4ドアハードトップ、セダン、ワゴンの3種をラインアップ。4ドアハードトップのリヤピラーは「クリスタルピラー」と呼ばれるもの。
1987年 8代目トヨタ・クラウン
3ナンバーサイズとなった威風堂々たるプレミアムカー セダン/ワゴン/4ドアハードトップと先代同様の構成だが、ハードトップはワイドボディとなり3ナンバーサイズ化。3Lを頂点とするエンジン群だったが、1989年にはセルシオと同様の4L V8エンジンも搭載されている。
1991年 9代目トヨタ・クラウン
全車3ナンバーボディとなり兄弟車「マジェスタ」も登場 主力の4ドアハードトップのみフルモデルチェンジされ、ロイヤルシリーズとなった。V8エンジンはマジェスタにまかせ、4ドアハードトップは3L、2.5Lのガソリンエンジン(6気筒)に加え、2.4Lのターボディーゼルの3種設定。 クラウンは高級車の代表格だが、主にクルマ好きの人たちからの評価は意外にも低かった。その理由は「運転しても楽しくない」というもの。確かに足まわりは柔らかく、積極的にワインディングロードを攻めるタイプのクルマではなかった。だが2003年に登場する12代目となるクラウンで一変。「ゼロクラウン」というキャッチコピーの12代目はプラットフォーム、エンジン、足まわりなどすべて刷新された。直列6気筒エンジンに代わり、新時代のV型6気筒を搭載。スポーティな走りをも可能にした。クルマ好きが年齢を重ねた後に乗るにふさわしいクルマだった。
1990年代から、それまでにはなかった要素がクルマに求められるようになってきた。それは「安全性」と「経済性」である。当初は高級車なら経済性は問われない……という風潮だったが、2000年代以降は高級車にも求められるようになっている。高級車受難の時代だ。
クラウンは、安全性を高めるさまざまな電子デバイスもいち早く採用するとともにボディも強化し、アクティブ&パッシブ両方の安全性向上に努めてきた。さらに2008年には13代目のクラウンに、プリウス以来のトヨタ伝家の宝刀とも言うべき、ハイブリッドも加えた。
伝統に則り、かと言って伝統だけに拘泥するのでなく、最新の技術を積極的に採り入れていく高級車。ニッポンにクラウンあり。
1995年 10代目トヨタ・クラウン
安全・環境への確かなこだわりを秘め新たな時代へと歩み始めた 今回はセダンもフルモデルチェンジ。一見すると先代モデルと大差なく感じるが、伝統のペリメーターフレームと決別し、モノコックボディを採用するなど、中身は大刷新された。シャシーはマジェスタと共通となり、居住性は大きく向上している。
1999年 11代目トヨタ・クラウン
アスリート&ターボ仕様が復活しハイテク化&高級化 5代目から25年間続いた4ドアピラードハードトップがカタログから消えた。理由は安全性。サッシュレスドアをあきらめ、ボディ剛性を確保するため。また、スポーツグレードの「アスリート」も8年ぶりに復活している。
2003年 12代目トヨタ・クラウン
ボディ大刷新&V6エンジン搭載し劇的進化を遂げた「ゼロクラウン」 プラットフォーム、エンジンなど基本コンポーネンツはすべて刷新。エンジンも新時代のV6エンジンとなり、大幅に向上したのはズバリ走行性能。2005年には3.5Lエンジン(315馬力)も積まれている。
2008年 13代目トヨタ・クラウン
伝家の宝刀、ハイブリッドモデルも登場しプレミアム性と環境性能を両立 先代の路線を踏襲しつつ、環境&安全面をさらに高めたモデル。VSCやABS、EBDなどの電子デバイスを協調制御する「VDIM」を装備するなど、先進の安全装備を誇る。ハイブリッドも設定。
2012年 14代目トヨタ・クラウン
ダウンサイジングターボも搭載し進化を重ねた60年間の想い 特徴的なフロントグリルで、ひと目でクラウンとわかる顔付きとなった14代目。通常のガソリンエンジンに加え、23.2km /Lという驚異的な燃費を誇るハイブリッド、さらに2015年には、2Lの直噴ダウンサイジングターボまでラインアップ。
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