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GT-Rのプロが考える! サーキットもストリートも走れる「いいクルマ」の作り方

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GT-Rのプロが考える! サーキットもストリートも走れる「いいクルマ」の作り方

『MCR』小林真一代表が考えるGT-Rチューニング

 チューニングショップの代表が「デモカーではなく愛車」として仕立てるGT-R。今回登場するのは千葉県のプロショップ『MCR』の小林真一代表である。自らもサーキットを走り速さを見せる。その相棒となるR35GT-Rとはどのような仕上がりなのか。上手く仕立てたストリートカーはサーキットでも存分に楽しめる。それでもレーシングカーとは別物として考えるべきではないか。普段から乗るためにはメンテナンスのコストや快適性など性能以外にも気を配る項目は以外に多い。すべてをクリアに仕立てた愛車は、デモカーとしても十分に通用する1台となった。

ドリキン土屋圭市にとって特別なGT-R! 高橋国光さんとの出会いが人生を変えた

(初出:GT-R Magazine157号)

クルマが良くなるなら徹夜の作業も惜しまない!

 チューナーが日頃から足として使っている愛車は、ショップのカラーを打ち出さなければいけないデモカーとは一線を画すケースが多いものだ。

「でも自分は違います。趣味と仕事は単純には分けられません。うちは競技車両を製作しているのではなく、普段使いも快適にこなせるストリートカーを仕立てています。だから街中をまともに走れないクルマはデモカーにはしません。愛車とデモカーは常にオーバーラップしています」と『MCR』の小林真一代表。

 もともとはクルマと関係のない仕事をしていて、趣味のクルマが生活の大半を占めるようになったのでMCRを立ち上げた。そんな経緯を知れば、デモカーと愛車を分けて考えられないという言葉にも納得できる。クルマが良くなるなら徹夜作業も苦にならない。人生をクルマに捧げている男だ。

「2020年末に懸案だったブレーキ関係の対応策を思い付いたので、どうしても試したくてサーキットに行きました。12月31日ですよ。家の用事もしなくてはいけない師走なのにサーキットを走り回り、挙句の果てに予想と違っていましたからね。力が抜けました。こんなことばかりです。仕事としては成り立たないでしょう」

 確かに趣味も含んでいるからできるのかもしれない。だから余計に貴重だ。仕事を越えた領域でなければ掴めない知識こそがMCRの財産。

レーシングカーではなく純正然とした上質メイク

 現在の愛車はメインとなるR35GT-R NISMO、リーズナブルに走りが楽しめるZ34、そして還暦を過ぎたら楽しもうと準備したR34スカイラインGT-Rの3台。年末に走ったのはZ34だ。 

「デモカーとしても活用しているR35はショップ対抗のサーキットバトルでは1番や2番は取れません。ユーザーに推奨しているストリートの延長でサーキットも走れるという仕様ですから。内装を取っ払って、大きなウイングを付けたクルマには敵いません。タイムを追求することはレーシングカーに任せておけばいいじゃないか、という考えです」

 そんな小林代表ではあるがR33が現役だったころはタイムを重視していた。内・外装共にかなり過激に仕立てていたという。パワーの大きさ、それにゼロヨンや最高速の数字が重視された時代だ。そんな流れに乗らざるを得なかった。

「今のようにストリートに軸足を置くようになったのは『マインズ』さんの影響がかなり大きいです。それにはGT-Rマガジンも大いに関係がある。平成15(2007)年9月に富士スピードウェイで開催されたR’s Meetingでのマインズとの対決企画。この真剣勝負がきっかけです」

 R34で1周のタイムを競う戦いは、2台のために本コースを1時間借り切った贅沢な企画だった。マインズのドライバーは桂 伸一氏で、MCRはもちろん小林代表自らがアタック。R34時代はかなりストリートに振った仕立て方になっていたが、マインズはその上を行っていた。どちらも見た目はノーマル風だが、見えない部分に手を加えている。

 2度アタックし合って負けて、最後に車高を数ミリ下げた微調整を行うことで幸運にも0.2か0.3秒の僅差で勝てた。しかしマインズの外観はノーマルだがMCRは大きめのリヤウイングを装着。小林代表はウイングなしでは負けていたはずだと言う。そこまで徹底したマインズのノーマル志向に感化されたのだ。

絶対的なパワーの数字より感性に響く味付けを重視

「R35は速いクルマよりも良いクルマを目指しています。ベースがNISMOなので装着パーツは厳選しました」

 タイヤはタイムに直結するが、グリップ力だけでは選ばない。30分のサーキット走行枠を2本走っただけで終わってしまうタイヤはとても維持できない。摩耗率の目安となるトレッドウェアを鑑みて選んでいる。

 現在は安心できる制動力に注力。グレードアップしたブレーキで納得できるストッピングパワーが得られない場合、その原因がブレーキのシステムにあるとは限らない。リヤデフの効き具合やダンパーなども疑わなくてはならないことを小林代表は心得ている。

 純正でチタン製マフラーが採用されているので交換せずにキャタライザーのみを変更。ターボもノーマルのままだ。コンピュータのデータは小林代表が実走を繰り返して煮詰めている。マップを変更することでブースト圧を1.0kg/平方センチメートルから1.2kg/平方センチメートルまで引き上げて730ps。パワーアップに伴ってインジェクターは700ccに変更している。燃圧が高めなので燃料は足りているが、それでも97%噴射で余裕はない。

実走し基本に忠実にクルマの良さを引き出す

「容量を増やせばもう少しパワーを引き出せますが、このインジェクターの霧化の良さが気に入って使っています。バルブの傘に当たるように絶妙に広がっているはずです。実際に走ってセッティングしていればわかるものです。900ccも使ってみましたがフィーリングが悪くなってしまったのでやめました。パワーよりも感性に響く味付け重視です」

 じつはR35だけでも4台乗り継いでいて、中には1,000ps級のチューニングを施したクルマもある。しかし、走行会でガス欠を心配しなければならないし、メンテナンスにも気を使わなければならない。それに対して今乗っているNISMOはあらゆる負担が少ない。そこを重視している。

「ロガーのデータをもとに各部を理論的に突き詰めたり、ダミーホイールを使って妥協せずにアライメントを整えたりと、基本に忠実に仕立てることの醍醐味をこのクルマで楽しんでいます」 

 テストドライバーとして培った開発能力を武器に、パーツに頼ることのないクルマ作りで素性の良さを引き出す。それがストリートで際立つ愛車R35の持ち味だ。

●MCR小林真一代表GT-R PROFILE

■所有車両:R35 GT-R NISMO

■年式:2018年式

■乗り始めた時期:2018年1月

■現在の総走行距離:9,128km

■現在の車両スペック

エンジン:HKS700ccフューエルインジェクター、

GReddy AIRINX-GT、SARDスポーツキャタライザー

電子パーツ:MCR SWAT ROM RACING

足まわり:TEINサスペンションキット

ブレーキ:フロントENDLESSレーシングMONO6GT+400φカーボンローター/リヤENDLESSレーシングMONO6r+387φカーボンロ

ーター

エクステリア:MCRドライカーボンルーフ/ブルーワイドミラー/LEDロアサイドマーカー/ボンネットダンパー

インテリア:BRIDE HIPER/VORGA JAPAN

ホイール:NISMO BBS RI-A(フロント10J×20+41/リヤ10.5J×20+25)

タイヤ:ミシュランPILOTSPORT4S(F 255/40R20 R 285/35R20)

■パワー:730ps

(2021年1月当時)

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