世界中にファンをもつ偉大な道
地平線まで真っ直ぐに続いた一本道、澄んだ青空と赤地のコントラスト、砂煙を上げて走るクラシックカー。映画のような世界が広がるアメリカの『ルート66』という道、クルマやバイク好きな人であれば名前は知っているかもしれない。
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五大湖のひとつミシガン湖のほとりであるイリノイ州シカゴから、太平洋の大海原を望むカリフォルニア州サンタモニカまで、全長2347マイル(3755km)にも及ぶかつての大動脈だ。西部の発展に大きく寄与したことから『マザー・ロード』と呼ばれ、映画や音楽の題材としてアメリカのみならず世界的な知名度を誇っている。
ルート66を走るためさまざまな人たちが訪れる
創設されたのは1926年。東からイリノイ/ミズーリ/カンザス/オクラホマ/テキサス/ニューメキシコ/アリゾナ/カリフォルニアと8州をまたぎ、州間高速道路の拡充により1985年にいったん廃線となるが、各地で復活させるための運動が盛んに行われた。その結果『ヒストリック・ルート66』としてふたたび地図に名が刻まれ、各州や沿線の町で観光資源に活用しつつPR活動が続いている。
筆者は思春期にアメリカン・カルチャーのひとつとしてルート66を知り、いつか絶対に自分で走ると心に誓い30歳を過ぎてから夢を実現させた。以来ルート66や国立公園などアメリカの撮影がライフワークと化し、コロナ禍の以前は5回の全線走破を含め、年に2~3度は渡米するほどに。
アメリカ国民がノスタルジーをかき立てられるのは当然として、日本をはじめ世界中から現地を訪れ旅するファンも少なくない。ルート66を『聖地』のように考えるクルマ好きやバイク好きもおり、3~4週間かけてイッキに走り切るため仕事を辞めてきた、リタイヤした記念に夫婦でキャンピングカーに泊まりながら、10台を超えるハーレーを連れ立ってのツーリング……。どんなスタイルでも相棒としてクルマかバイクが必須で、レンタカーを借りるしかない海外からの旅人はともかく、カスタムした愛車でルート66を走るアメリカ人も多い。
筆者もクルマ好きと分かり英語も分からないまま打ち解け、連絡先を交換したり一緒に写真を撮るといった交流が生まれ、家族ぐるみの付き合いに発展したという経験を持っている。
北アメリカ大陸を大西洋から太平洋まで横断する道路ではないものの、ルート66は本州どころか日本の全長をはるかに凌駕しており、風景や気候どころか人の気質も地域によって大きく変わる。また少し足を伸ばせば西部劇で有名なモニュメント・バレー、日本でもよく知られるラスベガスなど『+α』のスポットも多数。ルート66の知識やアメリカの文化に興味がない人であっても、絶対に後悔しないし再訪したくなる旅先のひとつだと筆者は思う。
トラブルなどに巻き込まれないよう注意することも多い
ただし自分で走るときの注意点はいくつかある。まず治安がよくない場所も少なからず存在すること。その代表格がイリノイ州イースト・セントルイスで、全線のトレースをあきらめてでも街には立ち入らず、フリーウェイで迂回するべきというのが率直な感想だ。
あとは未舗装路や荒れた路面でのパンクや事故。筆者はカリフォルニアの東部に広がるモハヴェ砂漠、携帯電話も繋がらない場所でパンクした経験がある。不幸中の幸いかランフラットタイヤで最寄りの町までギリギリ辿り着けたが、近隣のタイヤショップで交換し修理代をレンタカー会社と電話で交渉するなど、大なり小なり苦労した話や日本との違いに戸惑った話は事欠かない。
初心者はまずカリフォルニアとアリゾナから走ってみよう
それらを踏まえて走ってみたい人にアドバイスを。いきなり全線走破は日数的にもコスト的にもキツいので、最初はカリフォルニアとアリゾナの2州がオススメだ。ロサンゼルス近郊は交通量が多く運転には細心の注意を払う必要こそあるが、日本からの直行便がたくさん就航し格安で航空券が手に入る可能性が高く、コロナ禍の前は往復で時期によっては10万円を切るケースも珍しくなかった。
ロサンゼルスの大都市圏を離れれば荒涼とした大地に突入、いくつかの町を過ぎコロラド川を渡ってアリゾナ州に入る。ルート66が復活するきっかけを作った街のセリグマン、かつて繁栄していたゴーストタウンのツーガンズ、約5万年前に隕石が衝突したメテオ・クレーター、ペトリファイド・フォレスト(化石の森)国立公園など、フォトジェニックなスポットの連続で退屈しているヒマがない。
やや駆け足になるが往復を含め5~7日の旅程が組めれば、カリフォルニア州とアリゾナ州を堪能することができるだろう。マスクの義務が解除され元の生活を取り戻しつつあるアメリカ、自由に往来できるようになったら是非ルート66を訪れてほしい。
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