現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 61歳の天体物理学者が「ポルシェ 981 ケイマン GT4 クラブスポーツ」で挑んだパイクスピーク 【動画】

ここから本文です

61歳の天体物理学者が「ポルシェ 981 ケイマン GT4 クラブスポーツ」で挑んだパイクスピーク 【動画】

掲載 更新 3
61歳の天体物理学者が「ポルシェ 981 ケイマン GT4 クラブスポーツ」で挑んだパイクスピーク 【動画】

Porsche 981 Cayman GT4 Clubsport

ポルシェ 981 ケイマン GT4 クラブスポーツ

ジープ80周年記念第一弾「80th アニバーサリーエディション」、充実装備とスペシャルカラーをまとって4車種に設定

51歳で初サーキット、57歳で初レース

テキサス出身の天体物理学者キャシー・ミード(Kathy Mead)は、2020年に伝統のヒルクライムレース「パイクスピーク」に挑戦した。それは、彼女が61歳の時だった。

ポルシェのコミュニティには多くの注目すべき人物がいる。リタイアした天体物理学者のキャシー・ミードは、そのなかでもとびきりの人物だろう。61歳の彼女が本格的にモータースポーツに参加し始めたのは5年前。そして2020年に彼女は世界で最も有名なヒルクライムイベント「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」に初参戦し、いちやく時の人となった。

キャシーは飾らず、そのままの気持ちを話してくれる。そして60代でのモータースポーツ初参戦が珍しいことでも、それが不利になるとも思っていない。

「アメリカには今でも“ジェントルマンドライバー”と呼ばれている人がたくさんいますからね。6歳でレースキャリアをスタートできるだけの才能がなければ、レースに参戦できる余裕を持つまで待つしかありません(笑)。私の場合、最初のサーキット走行は51歳の時でした。正直に言えば、速いクルマに乗ってもいいのか、じっくり考える必要があったというわけです」

サーキットフリークスや、レーシングカーマニアで溢れたモータースポーツ・コミュニティのなかで、彼女は決してレースに取り憑かれた人物ではない。

「人生において、ずっと私はカーエンスージアストではありませんでした。もちろんスポーツカーは好きでしたが、それでも“クルマ好き”というレベルではないと思います。ただ、ずっとポルシェ911が欲しいと思っていたのです」

念願のポルシェ911(タイプ997)でドライビングを探求

キャシーは2010年にその野望を達成し、PDKトランスミッションを搭載したタイプ997の911カレラを購入した。

「ついに911を購入しました。ドライブすることが好きなので、このクルマを正しく運転することを学びたかったのです」

「運転とは技術です。そして、ポルシェは機械工学の分野で驚異的な存在。ガレージに停めて美しさを称えるのではなく、実際にドライブしてこそ、その真価を理解できます。そのためには自分自身の技術を磨いて、クルマが持つポテンシャルを体験できるようにならなければならないんです」

彼女は「ポルシェ・クラブ・オブ・アメリカ(PCA)」に加入し、テキサス近郊で開催されるドライビングレッスンに何度も参加した。だがこの時点ではまだ「レースに出たい」という気持ちにはならなかったという。キャシーはただ競争のない環境で、911のダイナミズムを探究することに没頭していたのだ。

「初めてサーキットに行ったとき、自分のブレーキパッドの交換からエンジンやサスペンションのセッティングまで、誰もが自分でクルマの整備を行っていました。でも、私だけが違います(笑)。ただ、自分のクルマをドライブしたかっただけなんですから」

タイプ981のケイマン GT4 クラブスポーツを購入

やがてミードは、自分の997にサーキット走行用サスペンション、レーシングシート、ロールケージなどを装着。ドライビングスキルを磨きながら自信も深めていった。すると当然の成り行きだろうか、追い越しが禁止されているトラックイベントでは物足りなくなってしまった。

「私は自分自身に問いかけてみました。『冷静になるべきか、それともレースに出てみるか?』と。それで答えが出ました。レースに出てみよう、と」

さらに話は進む。次のステップは大きかった。キャシーはタイプ981のケイマン GT4 クラブスポーツを購入したのだ。つまり、サーキット走行に特化したマシンである。これでPCAが主宰するレースイベントにも参戦できる。彼女はレーステクニックを向上させるべくドライビングコーチを雇い、さらにマシンのメンテナンスを行う自身のレーシングチームも立ち上げた。

「かなりチャレンジングでしたけど、最高でした! このシリーズは参加ドライバーの質も高かったですし、何よりもようやく追い越せるようになったんですから(笑)。とにかく真剣にドライビングを学びました。 動画を見たり、自分のデータを分析したり・・・。時間があれば、ひたすら学び続けていました」

「最近では、ドライビングコーチからセッティングを学んだり、ロガーデータからパーツに至るまで、自分のクルマの改善点についても勉強しています。今では例えばPDKのリキャリブレーションのタイミングも分かるようになりました。自分のマシンに何か不具合や不満を感じた時はすぐにメカニックに相談して、自分のフィーリングと実際に起こったことの相関を理解するようにしています」

人と争うレースからタイムトライアルのヒルクライムへ転換

2017年シーズン、クラブマンレースを満喫したミードだったが、様々な事情もあり2年間のレース活動休止を余儀なくされる。2020年、長い休みを終えてモータースポーツへと帰ってきた彼女だったが、ホイール・トゥ・ホイールのレースに躊躇を感じてしまったという。そして目を向けたのが、タイムトライアルだった。

「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」には、ポルシェ・カーズ・ノースアメリカのサポートのもと、ジェフ・ズワート(お馴染みパイクスの達人)のコーチングが受けられる「ケイマンGT4 クラブスポーツ」クラスが設けられていたのだ。ミードとメカニックのマイク・コンは、それ以前からパイクス参戦の可能性について話し合っており、2020年に今こそ絶好のタイミングだと決意した。

「パイクスピークのことは知っていましたが、クラッシュシーンを集めた動画があったような・・・という感じです(笑)。正直、最初はあまり興味がありませんでした。でも2020年1月のある日、マイクが『パイクスのエントリーの締め切りが今晩だよ』と教えてくれました。決断の時が突然やってきたのです。すぐに必要事項をエントリーフォームに記入して参戦登録をしました」

ところが新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、計画は大きく狂ってしまう。州を跨いだ移動制限により、ミードは本番の数ヵ月前にコロラドのパイクスピークを訪れることができなくなってしまったのだ。さらに彼女は高所恐怖症を持っており、高々度への適応も心配の種だった。

「もちろん公道ですし、最初に頂上付近を走った時は制限速度35mph(約56km/h)くらいがちょうどいいと思ったほどです(笑)。それくらい私にとっては強烈な体験でした。でも同時に『自分にはできる』という確信もありました」

パイクスで「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」を獲得

パンデミックによる計画の変更はあったものの、ミードはまるで高校生のように、パイクスピークに関する「予習・授業・復習」をこなした。参加可能なプラクティスにはすべてエントリーし、海抜4000m以上の高地での走行に自分自身を順応させた。さらにハードなフィジカルトレーニングも行い、午前2時のスタートに合わせて睡眠パターンも調整。無数に存在するコーナーをすべて詳細に研究した。

「準備は十分にできていると感じましたが、それでも何かやり残したことがあるような気持ちでした。パイクスピークでのレース本番は、ルート全体を走ることができる唯一の機会なのです。プラクティスで学んだのは、常に次のコーナーのことを考えること。だからこそ、156のコーナーすべてをクリアできたのでしょう」

「フィニッシュラインを越えた時は、今までの人生の中で一番の幸せを感じました。とてつもなく難しい課題の連続でしたが、最高にクールな経験になりました。1ヵ月間の集中と準備の後、完全に解放されて、文字通りクルマの中で叫んでいましたから(笑)」

タイムは11分36秒。ミードは61歳にして2020年の「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。この受賞はまた、彼女にレース復帰への自信ももたらしたという。

「人生は短いし、今年はもっと走りたいと思っています。PCA主催のレースをたくさん走って、パイクスピークにももう一度参戦するつもりです。実は将来の計画を立てるのは苦手なんですが(笑)。今年も絶対に実現するつもりです」

こんな記事も読まれています

電動化の[新型ロードスター]でもこだわりたい”人馬一体”感!! でもやっぱり内燃機関でしょ!!!!
電動化の[新型ロードスター]でもこだわりたい”人馬一体”感!! でもやっぱり内燃機関でしょ!!!!
ベストカーWeb
スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第7戦SUGOは小出峻がポール・トゥ・ウインで今季2勝目
スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第7戦SUGOは小出峻がポール・トゥ・ウインで今季2勝目
AUTOSPORT web
宮田莉朋、2番手チェッカーもペナルティで後退。マルタンスが今季初優勝/FIA F2第6戦レース1
宮田莉朋、2番手チェッカーもペナルティで後退。マルタンスが今季初優勝/FIA F2第6戦レース1
AUTOSPORT web
角田裕毅、F1スペインGPは為す術なく19位がやっと「うまくいかなかった理由を理解すべく、全てを分析しなきゃいけない」
角田裕毅、F1スペインGPは為す術なく19位がやっと「うまくいかなかった理由を理解すべく、全てを分析しなきゃいけない」
motorsport.com 日本版
雨でびしょ濡れ! タッチパネルがめんどい! オッサンが最新式のクルマにキレる「ハイテクトラブル」急増中!
雨でびしょ濡れ! タッチパネルがめんどい! オッサンが最新式のクルマにキレる「ハイテクトラブル」急増中!
ベストカーWeb
ル・マンでサーキットの救急車に乗ることに! お土産は「カルフール」のレース関連グッズ、特にエコバッグがオススメです【みどり独乙通信】
ル・マンでサーキットの救急車に乗ることに! お土産は「カルフール」のレース関連グッズ、特にエコバッグがオススメです【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
“尋常じゃない上げ幅”のTEAM MUGENにどう対抗? セカンドロウの坪井翔&牧野任祐が得た手応え/第3戦SUGO
“尋常じゃない上げ幅”のTEAM MUGENにどう対抗? セカンドロウの坪井翔&牧野任祐が得た手応え/第3戦SUGO
AUTOSPORT web
フロントロウ独占の裏に“共闘”アリ。TEAM MUGEN陣営が振り返るそれぞれのアジャスト/第3戦予選
フロントロウ独占の裏に“共闘”アリ。TEAM MUGEN陣営が振り返るそれぞれのアジャスト/第3戦予選
AUTOSPORT web
F1 Topic:マクラーレンのモーターホームで火災発生。搬送者が出るなか、代表が被害状況把握に務める
F1 Topic:マクラーレンのモーターホームで火災発生。搬送者が出るなか、代表が被害状況把握に務める
AUTOSPORT web
フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在
フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在
AUTOCAR JAPAN
F1スペインGP決勝速報|フェルスタッペンがノリスとの接戦制す。RB角田裕毅は19位と苦戦
F1スペインGP決勝速報|フェルスタッペンがノリスとの接戦制す。RB角田裕毅は19位と苦戦
motorsport.com 日本版
フェルスタッペン、猛追ノリスを退け掴んだ今季7勝目に喜び爆発。角田裕毅は終始苦戦19位|F1スペインGP決勝
フェルスタッペン、猛追ノリスを退け掴んだ今季7勝目に喜び爆発。角田裕毅は終始苦戦19位|F1スペインGP決勝
motorsport.com 日本版
今見ても美しい!! 5ドアクーペルックのBMW3シリーズ320iグランツーリスモ試乗プレイバック
今見ても美しい!! 5ドアクーペルックのBMW3シリーズ320iグランツーリスモ試乗プレイバック
ベストカーWeb
豪華装備のダイハツ「アトレー」は街乗りもアウトドアも両立! ケイワークスならではのハイエンドマルチ軽キャンパーとは
豪華装備のダイハツ「アトレー」は街乗りもアウトドアも両立! ケイワークスならではのハイエンドマルチ軽キャンパーとは
Auto Messe Web
「1つ以外は」最新ミニに求めるすべて! 1.5L 3気筒の新型クーパー Cへ試乗 活発な子犬のよう
「1つ以外は」最新ミニに求めるすべて! 1.5L 3気筒の新型クーパー Cへ試乗 活発な子犬のよう
AUTOCAR JAPAN
ベントレー「ベンテイガ」に世界5地域からインスピレーションを得た限定シリーズが登場! マリナーが仕立てた極上旅を表現した5台とは
ベントレー「ベンテイガ」に世界5地域からインスピレーションを得た限定シリーズが登場! マリナーが仕立てた極上旅を表現した5台とは
Auto Messe Web
アクシデントで途中終了に終わったSF第3戦。優勝の野尻智紀が安全対策に警鐘鳴らす「起こるべくして起きた印象。準備が足らなかったのでは」
アクシデントで途中終了に終わったSF第3戦。優勝の野尻智紀が安全対策に警鐘鳴らす「起こるべくして起きた印象。準備が足らなかったのでは」
motorsport.com 日本版
【正式結果】2024スーパーフォーミュラ第3戦SUGO 予選
【正式結果】2024スーパーフォーミュラ第3戦SUGO 予選
AUTOSPORT web

みんなのコメント

3件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

629.01064.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

178.01380.0万円

中古車を検索
ケイマンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

629.01064.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

178.01380.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村