なぜSUVが人気なのか? 守られ感とか、遠くまで見渡せる視界のよさとか、買うひとによって理由はいろいろあるだろう。ボルボ「XC60」は、それらにくわえ、気持ちいいドライブ・フィールも魅力だ。
今回試乗したXC60 D4は、2019年3月、現行XC60に追加設定されたディーゼル・エンジンモデル。1968ccの直列4気筒ディーゼル・エンジンにインタークーラー付きターボチャージャーを搭載する。
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【主要諸元(R-Design)】全長×全幅×全高:4690×1900×1660mm、ホイールベース2865mm、車両重量1880kg、乗車定員5名、エンジン1968cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(190ps/4250rpm、400Nm/1750~2500rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ235/55R19、価格714万円(OP含まず)。19インチのアルミホイールはR-Design専用デザイン。オプションでエアサスペンションも選べる。ディーゼル・エンジンモデルのXC60は最高出力140kW(190ps)を発揮する「D4」のみの設定。グレードは「モメンタム」「インスクリプション」「R-Design」の3種類で、駆動方式はすべて4WDである。
力強さが印象的なモデルだった。試乗車はスポーティな内外装が特徴の「R-Design」。400Nmの最大トルクを1750rpmから発生するだけあって、加速の軽快さは、全長4690mmのボディの大きさを意識させない。
搭載するエンジンは1968cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(190ps/4250rpm、400Nm/1750~2500rpm)。排ガス処理用のアドブルーの充填口は、給油口(キャップレスタイプ)のとなりにある。スタイリッシュなデザインボディの上屋(外から見たキャビンの造型)は、リアウィンドウの角度を寝かせ、かつサイドウィンドウ下端のベルトラインが後ろのほうでキックアップしている。そのため、クーペ的というのか、スポーティな印象を受ける。
しかも、R-Designは専用パーツを複数装着するのでさらにスポーティ。そして、ほかのグレードに対し、少し硬めのセッティングが施されたサスペンションを与えられていて、積極的にドライブを楽しみたいというひと向けである。
JC08モード燃費は16.1km/L。トランスミッションは電子制御式8AT。シフトレバーうしろに、走行モード用のダイヤル・スウィッチがある。ただし、メルセデス・ベンツの「AMGパッケージ」やBMWの「Mスポーツ」ほど、足まわりは硬くない。そこがR-Designの、いいところかもしれない。高速ではサスペンション・システムがよく動き、凹凸をていねいに吸収する。
複数から選べる走行モードは、「コンフォート」がデフォルトだけれど、私としては、リアサスペンションの動きがよりビシっと落ち着く「ダイナミック」モードが好みだ。
最小回転半径は5.7m。メーターはフルデジタル。ナビゲーションマップも表示出来る。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などを含む先進安全装備群「インテリセーフ」は全車標準。ステアリングの応答性は、中立付近で少々甘い。とはいえ、スポーツカーではないし、雪上路などでも使われるクルマだから、市街地で使うドライバーズ・カーとして許容範囲だ。
印象としては“やわらかいクルマ”である。ひとまわり小さい「XC40」にもおなじような感覚があって、ドイツ車とはちがうチューニングの妙が魅力である。
R-Designのステアリング・ホイールはパドル・シフト付き。搭載するディーゼルターボ・エンジンは、必要にして充分なパワーの持ち主だった。低回転域を受け持つレスポンスのいい小型ターボと、回転があがったときのための大型ターボというツインターボ・システムを採用、くわえて気筒ごとに細かく燃焼制御をおこなう。
コスパ良好インテリアはあいかわらず魅力的だ。「(ボルボのインテリアは)いいと思うが、おなじ路線を追究すれば、どうしてもボルボの二番煎じになってしまう」と、かつてドイツ・メーカーのインテリア・デザイナーが述べていた。
アルミパネルを各所に使ったインテリア。インフォテインメント・システム「センサス」は全車標準。チルトアップ機構付き電動パノラマ・ガラス・サンルーフは、オプションのプラス・パッケージ(33万6112円)に含まれる。緻密な造型と鮮やかな色づかいは、スタイリッシュ。R-Designの場合、専用デザインのシートが備わるが、フルバケットタイプのようなスポーツシートではない。ほどよくスポーティ、といった具合だ。
くすんだブルーのレザーと、グレーのファブリックを組み合わせた素材づかいが肌に気持いい。ほかのグレードとちょっと異なるスポーティなデザインに、オーナーも誇らしくなるはず。外側は堅牢なイメージで、車内に入ると、気持がくつろぐ……北欧の家と似ているように思う。
R-Designのシートはスポーティ。フロントシートは電動調整機構付き。シート表皮はレザーとファブリックのコンビ。リアシート専用のエアコンは標準。リアシートヒーターはオプションのプラス・パッケージに含まれる。ラゲッジルーム容量は5050リッター。ラゲッジルームのフロア下には、小物入れスペースもある。XC60 D4 R-Designの価格は714万円。ライバルのドイツ・ブランドにも、2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ・エンジン搭載のSUVはいくつもある。
ひとつは、メルセデス・ベンツ「GLC 220d 4MATIC」(690万円)。XC60に対し20mm短い全長のボディに最高出力143kW(194ps)を誇る2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ・エンジンを搭載。BMW「X3 xDrive 20d M Sport」(745万円)は30mm長いボディに、最高出力140kW(190ps)の2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ・エンジンを搭載する。ボディの大きさこそ違うが、スペックや価格は似たり寄ったりだ。
どれも個性があるから、購入時は迷うはずだが、どれを選んでも完成度は高いから後悔はしないだろう。楽しみながら迷えばよい。ただし、GLCでスポーティ仕様の「AMGパッケージ」を選ぶと、約60万円高価になる。GLC 220d 4MATICの場合、約750万円。その点、XC60 D4 R-Designは714万円だから価格競争力は高い。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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