「スーパーカー」の世界では、超高性能を発揮するパワートレーンに最先端構造&デザインによる2ドアボディという組み合わせが主流だ。しかし現在ではSUVでも十分にその範疇へ含まれるモデルが増えている。PHEVとなった最新仕様のウルスSEなど、まさにその好例であろう。(文:中村圭吾(本誌) 写真:アウトモビリ ランボルギーニ S.p.A. Motor Magazine 2025年12月号より)
厳重なセキュリティを経て、いよいよご実車と対面
東京からほぼ丸一日かけて、イタリアのバーリ空港へ降り立った。そこから約2時間バスに揺られてホテルへ移動。さらに試乗の舞台はそこから1時間・・・ナルドテクニカルセンターである。PHEVになったスーパーSUV、ウルスSEローンチの場だ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
ナルドサーキットとも呼ばれるここは、近年ではポルシェの新型車をテストする場所としても有名だが、その円形コースは最高速や耐久テストの場としてもお馴染み。過去には300km/hどころか、コンセプトカーやチューニングカーが400km/h超えを記録したこともある。詳しい内容は知らされていなかったので、まさかここで最高速を?などと考えていたが、待ち受けていたのは厳重なセキュリティだった。発表前の新型車もテストしているので当然だが、スマホやカメラは没収される。
そしてランボルギーニのエキスパートからイベントの説明を受ける。その後セーフティライセンステストを受けて無事合格すれば、晴れてコース内で試乗ができる、というものだった。
ウルスSEに乗れるまでの道のりはとても長い。その分、ウルスに対しての期待も、気持ちも高まっていたが、取材班を待っていたのは、まず公道試乗からだった。
それにしても・・・イタリアの地であらためて見たウルスは、ランボルギーニが「史上もっとも美しいウルス」と謳うように、優美でスポーティなスタイリングだと実感した。
舞台はイタリア南部。日本に比べて路面の舗装状態も悪く、道幅も狭い。ウルスSEの初乗りにはなかなか厳しめな条件である。
カラフルなウルスが並ぶ中、用意されたマットグリーンのウルスに乗り込んだ。GOが出てすぐ、特徴的なスタートスイッチを押してみるが、従来のウルスのようにけたたましいサウンドは聞こえてこない。駆動用バッテリー残量も満タンのストラーダモードではエンジンは掛からないようだ。
そのままパドルシフトを弾いてDレンジに入れて走り出す。エンジンは掛かる様子がない。ナルド周辺の90km/h区間でも無音のままだ。135km/hまでEV走行が可能だというから、日本では駆動用バッテリーの電力がある限り高速道路でもEV状態のみで走行することもできるだろう。
電動化をメリットに活用。静粛と躍動の理想的な両立
ハイブリッドモデルの特権として、たとえばガレージからは静かに出庫して住宅地は静粛に走り、幹線道路に入ったらエンジンを掛けて楽しむ、なんてことも可能だ。これがご近所さんにも優しい現代スーパーカーの最適解か。EV航続距離は約60kmもあるから、電気のみで買い物などに使うことも余裕だ。せっかくなのでしばらくはEVモードで走ることにしよう。
EV走行時、意外なほど静かなことに気づいた。従来のICE版ウルスも余計な音はシャットアウトして心地よいサウンドのみを聴かせてくれたが、駆動系からの音がほぼしないEV走行となるとロードノイズが気になることもある。だがウルスSEはピレリがEV走行も考えて開発した専用のPゼロタイヤを装着しているので、ロードノイズが抑えられているのだ。
ハイブリッド化に伴ってバッテリーやモーターを搭載したことにより、重心や重量バランスも変化しているだろうが、ウルスSEは新たにセッティングされたアダプティブエアサスペンションにより決して路面状況が良いとは言えない南イタリアの郊外でもその影響を受けることなく快適に走る。
スーパーSUVながらこうした圧倒的な快適性こそウルスならではの特徴で、それも大きな魅力だ。
従来以上のハイパフォーマンスでありながら、かつ長い間EV走行が可能ということはウルスの商品力を高めることになるだろう。しかし、電気のみで走っていてはウルスの本質的魅力が半減してしまうというものだ。ドライブモードをスポーツへと切り替えると、いつものウルスが目を覚ました。
今回のドライブコースはイタリア南部の海沿いにあるいくつかのスポットを巡りながら、ウルスSEを楽しむというもの。エンジンが掛かったウルスSEの窓を開け、海沿いの街をドライブするのは格別だ。気付けば3時間の試乗時間も、一瞬で終わってしまった。
ウルスSEに搭載されるPHEVシステムは、620ps/800Nm仕様の4L V8ツインターボエンジンと、192ps/483Nmを発生する電気モーターを組み合わせたもので、システム全体で800ps/950Nmというスペック。レヴエルトが1015ps、テメラリオが920ps(ともにシステム総出力)となっているので、もはやそこに驚きはしない。
高速道路も使わない今回の試乗区間ではその片鱗を感じることができた程度だが、本領は後のナルド試乗で味わうことにしよう。
素晴らしきコントロール性。最新4WDシステムに感服
ナルドテクニカルセンターに戻る。残る試乗コンテンツはグラベル(ダート)路とドリフト走行の体験だ。結局、あの超高速外周路を走ることはできなかった(そりゃそうだ)が、今回の目的は加速性能や最高速度ではない。ウルスSEのコントロール性の良さを体感するためのものであり、ある意味で「グラベル」と「ドリフト」というとても贅沢で、貴重な経験をさせてもらえることになった。
まずグラベル路ではインストラクターの指示に従いATを2速ホールド(時々1速)で、アクセルペダルとブレーキペダル操作、ハンドル操作に集中する。ドライブモードはもちろんグラベル。最初の1周はテストで走り方を教わり、いざ本番だ。すでに何組も走行した後の滑りやすい路面&出来たてほやほやのウルスSE。楽しむというより、さすがに緊張する。
直線ではしっかりと加速して、コーナー手前でガツンと減速、コーナーへ進入する。なるべくインに寄せて、じんわりとアクセルペダルを踏み込むと「もっとスロットルを踏め!」と指示が入る。
言われるがままに踏み込む。リアが流れ出しながらも、クルマは前進していく。何だこの感覚は! とても全長5m超えのSUVとは思えない動き。大げさではなく、コンパクトスポーツカーのようにコントローラブル。これこそが新しいトルクベクタリング機能と電制LSDを組み合わせた最新4WDシステムの賜物である。
この走りはドライバーの意思を尊重しつつ、緻密なフィードフォワード制御によって実現されたもの。アクセルペダルやブレーキペダル、ハンドルの操作量から運転操作やその先を読み、四輪をコントロール。しかもそれを自然にだ。
これだけでもコントロール性の高さは十分に感じることができたのだが、最後に残されていたのはドリフトのプログラム。パイロンが置かれた広場でいわゆる定常円旋回と8の字を描くというもの。試乗会終盤ということもあってかなぜかランボルギーニスタッフを含む大勢のギャラリーの中で私の稚拙なドラテク披露となった。
その結果はさておき、通常であれば、ボディや駆動系、タイヤへのダメージを考慮して、新型車、ましてやスーパーモデルでこうした試乗機会は多くはない。あらためてこの貴重な機会を与えてくれたランボルギーニと開発陣の寛容さに感謝したとともに、ランボルギーニがウルスSEで伝えたかったことを理解できた気がする。それはシンプルで「このクルマ、最高に楽しいだろ?」ということである。
SUVでありながらスーパースポーツカーと並ぶ運動性能を持つウルスSE。電動化によってその魅力と楽しさが高まったのは間違いない。まさしく夢を見させてくれるランボルギーニのスーパーSUV、ウルスの新章はここからだ。
【ウルスSE 主要諸元】
●Engine 種類:V8DOHCツインターボ 総排気量:3996cc ボア×ストローク:86.0×86.0mm 圧縮比:9.7 最高出力:456kW(620ps)/6000rpm 最大トルク:800Nm/2250-4500rpm 燃料・タンク容量:プレミアム・-
●Motor & BATtery リアモーター 最高出力:141kW(192ps)/3200rpm リアモーター 最大トルク:483Nm EV走行可能距離:60km以上 駆動用電池種類:リチウムイオン 総電力量:25.9kWh
●Total Performance システム最高出力:588kW(800ps)/6000rpm
●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:5123×2022×1638mm ホイールベース:3003mm トレッド:前1695/後1710mm ラゲッジルーム容量:454L 車両重量:2505kg
●Chassis 駆動方式:4WD トランスミッション:8速AT ステアリング形式:ラック&ピニオン サスペンション形式:前/後マルチリンク ブレーキ:前/後Vディスク タイヤサイズ:前285/45R21/後315/40R21
●Performance 0→100km/h加速:3.4sec 最高速:321km/h
[ アルバム : ランボルギーニ ウルス SE 海外試乗 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
欧州エンジン車全て廃止だけど
EU全域
300キロも重くなってるね。
モーターによりパワーは
650→800psになったが…
タイヤと地面の
接地面積は
変わらないわけで…。