新型フィットがデビューして出だしは好調な販売をマークしている。そのフィットはガソリンモデルとハイブリッドをラインナップしているが、ハイブリッドはこれまでの1モーターから2モーターに変更され、通常時はモーターでの走行となる。
つまりシステムは違っても結果的に日産ノートe-POWERと同じと言っていい。
【ホンダよ頼む!! 奮起してください!!】新型フィット 魅力と実力と課題
となれば、新型フィットハイブリッドとノートe-POWREは走らせてみてどっちがいいのか気になる。その疑問について松田秀士氏が考察する。
文:松田秀士/写真:HONDA、NISSAN、TOYOTA、SUZUKI、平野学
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ノートはe-POWERでコンパクトカー界を席巻
2012年にデビューしたノートは、2016年にビッグマイチェンを受けエクステリアデザインが大幅に変更されたと同時に、e-POWERを追加して大人気
コンパクトカーにもハイブリッドが多く設定されている。トヨタが先鞭をつけたエンジンをモーターでアシストするタイプとなっていて、旧型フィットもそのタイプだった。
それに対し日産はエンジンとモーターを搭載するのは同じだが、エンジンは発電専用で駆動用には使わないシリーズハイブリッドをe-POWERとして2016年からノートに搭載。このe-POWERはセレナにも搭載されている。
ノートは2017~2019年の3年連続でコンパクトカーの販売台数ナンバーワンで2018年は登録車ナンバーワンに輝くなど大人気となっているのもe-POWERがあるからこそ。
ノートe-POWERは2016年のマイチェンで追加された。電気自動車のリーフのために作ったモーターなどのパーツを効率よく消化したいといった事情があっただろうが、e-POWERというわかりやすいネーミング、エンジニアの意向に関係なくマーケサイドがEVであると大々的に宣言したのが凄いところで最大の勝因だと思う。
シリーズハイブリッドながらEVと言い切る戦略、e-POWERという非常にわかりやすく訴求力のあるネーミングがすばらしい
新型フィットは通常時はモーター走行
いっぽうのホンダは新型で2モーターハイブリッドを新開発して搭載し、そのシステムはe:HEV(イー・エイチイーブイ)と命名されている。名称に関しては、呼びやすくてわかりやすいe-POWERの圧勝でしょう。
新型フィットは全5タイプでデビュー。それぞれにガソリンモデルとハイブリッドのe:HEVの両方をラインナップ。さらに全モデルFFと4WDを用意
通常時の低中速走行はモーターで駆動するのはノートe-POWERと同じ。しかしノートがどんな速度域でもモーターのみの走行なのに対し、新型フィットは100km/h以上の高速走行ではエンジンで駆動する。
これは、モーターは高回転域ではそれほど効率がよくないため、ホンダはそれを嫌い、その苦手部分をエンジンでカバーしようというのがe:HEVで、ドライバビリティというよりも燃費向上のためのシステムだ。
ホンダが新開発してフィットに搭載した2モーターハイブリッドはe:HEVの名称が与えられた。モーター走行のハイブリッドで同じだが、e-POWERほうが単純明快
加速感はどう違う?
まずそれぞれのスペックは以下のとおり。
■新型フィットe:HEV
1.5L直4DOHC(98ps/5600~6400rpm、13.0km/4500~5000rpm)+モーター(109ps/3500~8000rpm、25.8kgm/0~3000rpm)
■ノートe-POWER
1.2L直3DOHC(79ps/5400rpm、10.5km/3600~5200rpm)+モーター(109ps/3008~10000rpm、25.9kgm/0~3008rpm)
ノートのエンジンは発電専用で、発進から高速域まですべてモーターで駆動する。走っているぶんには日産が主張するとおりそのままEV
モーターに関してはほぼ同じスペックのモノが搭載されているのがわかる。
車重はFF同士で比較すると新型フィットが1180~1200kg、ノートが1190~1230kgとノートのほうが若干重いが大差はない。
実際に走らせてみると、スペックどおり明らかな優劣というものは存在せずどちらも気持ちいいくらい速いが、加速感はノートのほうが速く感じる。
これは発進時のモーターの起動トルクの立ち上げ方などのセッティングによるものだと思う。
ノートe-POWERを購入した人はその速さ、加速感への満足度が高いと耳にするが、新型フィットを購入しても満足度は高いはずだ。
ちなみに両車ともモーター特有の発進加速の小気味よさが魅力だが、ドーンと唐突に発信するわけではないので、ガソリン車から乗り換えても全く違和感がない。もっさりした感じが皆無で気持ちいいだけだ。
フィットのe:HEVは基本モーターでの走行だが、100km/h以上の速度域ではエンジンでの走行となる。高速域での安定感は抜群に高い
高速域はどうか?
ノートはどんな速度域でもモーターで走行するが、高速域ではやや厳しくなる。いっぽうフィットは100km/h以上でモーターからエンジンに駆動が切り替わるが非常にスムーズで違和感はない。
テストコースでフィットを走らせた時に180km/hくらいまでジワジワと加速。高速域の安定感はフィットに軍配と言ったところだろう。
走りの質感はどう違う?
現行ノートは2012年にデビューし、その時に日産の開発者は、「ホンダフィットを隅から隅まで研究してきた」と公言していた。
しかし、日産が研究したフィットは2代目フィットで、ユーティリティ、使い勝手の面などは今でも魅力は色あせないが、走りに関してはデビューして8年が経過するその基本設計の古さは隠せない。
2代目フィットを研究し尽くしたというだけあってノートのユーティリティはデビューから8年が経過しても大きな魅力だ
新型フィットよりも乗り味が硬く、乗り心地もよくない。特に設計が古いこともあってNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)的には厳しい。
いっぽう新型フィットはホンダが最近サスペンションを動かすということに目覚め、その最適解を見つけたようで、しなやかなハンドリングと質感の高い乗り心地を実現していて個人的にも気に入っている。
サスペンションを動かす方向のセッティングが施されているフィットはハンドリング、乗り心地とも優れている。おまけに静粛性も高い
あと室内に入ってくる音で言えばエンジン音がある。
ノートの1.2L直3エンジンは街中を走っていてもけっこう音がする。これは快適性という点ではノートe-POWERの欠点だと思う。2020年中に登場すると噂されている新型では、発電用エンジンの音振対策が取られるはずだ。
その点フィットは新しいこともありエンジンの静粛性に優れていて不満はない。
走りの質感、快適性にも大きく影響するシートについては、ホンダは新型フィットにボディスタビライジングシートを採用してきたが、これが抜群にいいことも加えておきたい。
新型フィットのフロントシートには新開発のボディスタビライジングシートが採用されていて、ロングドライブでその真価を発揮
ホンダセンシングが魅力的
燃費はノートが古いクルマのためWLTCモードが存在せず、JC08モード燃費のみとなっているのでそれで比較してみると、ノートが37.2km/Lに対しフィットが38.6km/Lとなっている。
0.1km/Lの違いに目くじらを立てていた時代もあったが、それほどのネガにはならないだろう。
それよりも新型フィットの魅力としては最新のホンダセンシングで、各種安全装備、運転支援装置が用意されるなか、ACCとLKAが独自にセパレートで使えるのが魅力的だ。対するノートはセパレートでは使うことができない。
新型フィットには最新のホンダセンシングが搭載されていて、ACCとLKAがセパレートで使えるのがいい
新型フィットe:HEVの価格のベンチマークはノートe-POWER!?
最新型車と基本設計が8年前のクルマを比べること自体に無理があると思われるかもしれないが、裏を返せば、設計が古かろうが、e-POWERのような魅力的な飛び道具があればユーザーは強い関心を持つことを実証してくれたのがノートだ。
ノートe-POWERに走りを求めるなら、NISMOとNISMO Sも用意されている。価格は253万4400~281万2700円。標準より高いぶん満足感も高い
最新のe:HEVの優位性が高いのは事実だが、若干の難点はあれど、e-POWERは充分に対抗できるだけのポテンシャルを持っている。特に速さという点ではそん色ない。
新型フィットは5タイプを用意し、それぞれにe:HEVがラインナップされている。価格はFFで199万7600~232万7600円となっている。
それに対しノートe-POWERは193万7100~246万9500円の価格設定となっている(NISMO除く)。
新型フィットがデビューした時に高くなったと感じたが、価格を見る限りノートe-POWERがベンチマークとなっていたことがよくわかる。
フィットクロスターはシリーズで唯一の3ナンバーボディとなるが、車重は1200kgだから軽快に加速して気持ちいい
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みんなのコメント
実際は高速走行でもバッテリーの充電量に応じてモーター駆動も結構ある。
逆に一般道でも60km/hを少し超えた位で、平地を定速で走行するような場合ではエンジン駆動もある。
状況に応じて、効率の良い駆動を選択しながら走行しているということになる。
要はe-POWERのような単純な駆動方式とは異なる。