一部改良を受けた新しい「ES300h」に今尾直樹が試乗した。同時に試乗したトヨタ「クラウン クロスオーバー」との違いも含め、リポートする。
Always Onの思想
電車に揺れて揺られて、朝6時半。渋谷駅に到着して徒歩1分、のところ、地下鉄銀座の出口がわからず、徒歩8分。約束の西武渋谷の前に行ってみると、青いレクサスESはすでに到着していた。筆者にとっては2018年、国内発売直後、横浜みなとみらいでの試乗会でチョイ乗りして以来である。
早速、運転席に乗り込み、後席に陣取った編集のイナガキくんに、「どこが変わったの?」と質問した。例によって筆者は、予習していないのだった。
「前はセンターコンソールに小さなパッドがあって、それで文字入力もできたんですよ。でも、あれは右ハンドルだと使いにくい。世のなか、右利きのひとのほうが多いじゃないですか。左ハンドルだったらいいんでしょうけど。新型はダッシュボード中央のディスプレイがタッチ式になって、直接入力できるようになったんです」
センターコンソールに目を移すと、なるほどパッドのあったところにカップホルダーと、その前方にスマホを置くだけで充電できる「置くだけ充電」が設けられている。これは大いに便利だ。試乗後、ネットで検索してみたら、ESの場合、ディスプレイがタッチ式になったのは去年のことで、でもこのときはパッド式の入力方法はそのまま残されていた。つまり、カップホルダーと「置くだけ充電」は今年の夏の小改良で登場したのだった。
さらに「ヘイ、レクサス!」と呼びかけると起動する音声入力も可能になっている。「やっぱりレクサスは……だねぇ」なんて雑談をイナガキくんとしようとすると、突然、「ご要件をお話ください」と、レクサスのAIが割り込んできたりする。
このほか、昨2021年春には静粛性と乗り心地の向上の改良も発表されている。“F SPORT”の装備するAVS(Adaptive Variable Suspension system:可変ダンピング・サスペンション)のアクチュエーターに新型を採用し低減衰力にも対応できるようにしたり、リア・サスペンションのメンバー・ブレースを、1枚板構造から2枚の板を合わせた構造にして剛性を向上させたりしている。レクサスというのは、プレスリリースを引用すると、「『より良いクルマづくり』を目指してAlways Onの思想を貫い」ているのだ。
昨年の小改良では、ブレーキのコントロール性を向上させるべく、細かい改良を行ってもいる。電子制御の制御定数や、ペダルのパッド形状を足裏との接触範囲を広げるように変えたり、ブレーキ・ペダルのリンク内のブッシュの取り付け方法を見直したりすることで、ペダルの横方向の剛性感を向上させる。というような地味な改良である。
いわゆる先進予防安全技術もアップデートされている。話が細かくなるので、これ以上は触れませんけれど、ともかくレクサス・ブランドは「Always Onの思想」なのである。自動車産業の競争は苛烈で、ましてやいまは100年に一度の大変革期。担当者の方に、筆者の思いを小声で伝えておきたい。たまには休んだほうがいいですよ。
しかして、水戸黄門の主題歌のように、あるいは水前寺清子の歌のように、歩いているだけではたぶん遅い。走る必要がある。現場はタイヘンにちがいない。
これはこれでオモシロイ最新型のES300h“F SPORT”に話を戻すと、パワーユニット関係には手が入っていない。2.5リッター直列4気筒のアトキンソン・サイクル・エンジンは単体で最高出力178ps/5700rpm、最大トルク221Nm /3600~5200rpmを発揮する。
このエンジンが生み出す駆動力を、遊星ギアが発電用のモーターと駆動用のモーターに分割し、発電した電気エネルギーはリチウム・イオン・バッテリーに蓄え、そのエネルギーでEV走行したりもするわけである。
駆動用のモーターは最高出力120ps、最大トルク202Nmを発揮する。トヨタ方式のハイブリッドのシステム最高出力は218psと、控えめなように思える。新型クラウン・クロスオーバーの2.5ハイブリッドのシステム最高出力234psより低いではないか……と、思ったけれど、考えてみたら新型クラウンは後輪をモーターで駆動する4WDだった。ES300hは純然たるFWD、前輪駆動で、そのぶん車重が軽く仕上がっている。全長5mまであと25mmという巨体なのに、車検証の値で1710kgにおさまっている。ちなみに新型クラウンの2.5ハイブリッドのいちばん高いモデルは1790kgある。
走り出して気になったのは、低速の乗り心地があまり感心しないことだ。19インチのタイヤ&ホイールを標準装着する“F SPORT”ということもあり、薄ぼんやりとした筆者の記憶のなかのフツウのESよりも明らかにファーム、引き締められている。首都高3号線の目地段差ではやや跳ねる傾向もあった。
ところが100km/hでのクルーズになってしまうと、そういう現象はほとんど出なくなった。「静かで、ものすごく快適ですねぇ」と後席のイナガキくんが感想を漏らすほどである。実際、聞こえてくるのはロード・ノイズと風切り音だけ。
ふと気づくと、2.5リッターの直4エンジンは休止している。ドライブ・モードを「スポーツS」、もしくは「スポーツS+」にすると盤面上にタコメーターが出てくる。その針の動きを観察していると、頻繁にゼロを示す。EV走行の場合は、小さなグリーンの文字が点灯して、それを知らせる。100km/hでもEV走行を維持する。軽くアクセルを踏み込むと、エンジンが始動する。でも振動もないし、騒音が高まることもない。ただ、盤面上からEVの文字が消えたことによってそれを知る
箱根の山道に至り、ちょいとばかし飛ばしてみると、前輪に引っ張られ、後輪はついていくだけの、大型のFWD車を操っている感覚があって、これはこれでオモシロイと思った。
いつの間にかリッパな存在に今回のドライブは、新型クラウン クロスオーバーの試乗会の往復を兼ねていた。レクサスESと新型クラウンは同じGA-Kプラットフォームと、新型クラウンの2種類のパワーユニットのうちの2.5ハイブリッド システムを共有する。
そのクラウン クロスオーバーと較べても、レクサスESは、さすがレクサス ブランドだけあって、より静かで、2.5の直4エンジンは上までまわしても、クラウンみたいなガーガー音を発しない。クラウンの同排気量のエンジンは、最高出力186psとプラス8ps強化されている。そのせいもあるのかもしれない。ともかくESのそれは、おそらく最高出力を発揮する回転数が300rpm抑えられている分、自動車のエンジンらしいサウンドを奏でてくれる。
レクサスESには4年の歳月とFWDというハンディがある。にもかかわらず、レクサスES 300h“F SPORT”は新型クラウンより全域にわたって静かで、つくりがラグジュアリーになっている。たとえば、スターターのボタンはクラウンと共通と思しき丸型だけれど、その周囲の材質が違っている。レクサスESの場合は、メッキが施してあったりして質感がキラキラしている。
低速だと乗り心地が感心しない、と最初は思ったけれど、箱根ターンパイク経由で芦ノ湖に向かう途中の一般道や、箱根神社のちょっと先の一般道の荒れた道だと、AVSが見事に凸凹をいなして通過してみせた。ダンパーというのは入力があったほうが対応しやすいものだということを実感した。
なによりレクサスESで驚いたのは、新型クラウン クロスオーバーの試乗会の会場である芦ノ湖畔のホテルの駐車場に到着したとき、自分がエラくなった気分、誇らしい心持ちになっていたことだ。いつもの私の古い中古車だとこうはいかない。
いまさらながら、自動車というのは社会的な存在である。レクサス・ブランドは、私のようにレクサスとは縁遠いひとのこころのなかにも、いつの間にかリッパな存在として根をおろしていたのである。そうでなければ、どうしてそんなふうに思ったりするだろう。「Always Onの思想」にハット・オフである。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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