もくじ
どんなクルマ?
ー 最も訴求力の高いエンジン
ー 常識はずれのラグジュアリーSUV
ー W12とV8の外見上での違いはわずか
ジャガーE-PACE 初試乗 まずは2ℓ直4ガソリンから 独特な使命とは?
どんな感じ?
ー 恐怖感を抱くほどの加速力
ー 惜しいターボラグとエグゾーストノート
ー ベントレー・ライクな上質な乗り心地
「買い」か?
ー V8が高めたベンテイガの完成度
スペック
ー ベントレー・ベンテイガV8のスペック
どんなクルマ?
最も訴求力の高いエンジン
W12ガソリンとV8ディーゼルに続いて、ベントレー・ベンテイガに3番目となるパワープラントが登場した。極めて機能性に優れたベントレーのSUVにとっては、現時点で恐らく最も訴求力の高いエンジンと言えそうだ。
90度のバンク角を持つ4ℓV8エンジンには、ツインスクロールターボがバンク内に装着されている。このユニットは、ポルシェ・カイエン・ターボにも用いられており、間もなく登場する第2世代のベントレー・コンチネンタルGTにも、搭載されることだろう。
最高出力は549psで、6ℓW12エンジンからは68psほど低くなり、その発生回転数は、1000rpm上乗せの6000rpmとなる。最大トルクは78.3kg-mにも達し、6ℓW12エンジンの最大トルクには13.5kg-mほど敵わないまでも、その他のライバルと比較するとかなりのインパクトがある。
常識はずれのラグジュアリーSUV
W12エンジンを積んだ兄の人気は、予想を下回っているようだが、それは環境性能によるところが大きいようだ。新しいV8エンジンを搭載した弟には、アイドリングストップ機能と、緩やかに加速する際など、状況に応じて4気筒を休止させてV4とする機能が盛り込まれた。燃費はW12の7.6km/ℓから8.7km/ℓへと15%ほど改善している。
とは言っても、V8ディーゼルの燃費は12.6km/ℓだから、あまり良い数字には見えないけれど。
車重の面でのメリットは大きい、と言いたいところだが、ベンテイガの場合はそうでもなかったりする。盛大にガソリンを燃やすW12エンジンは、V8エンジンよりも4気筒も多いわけだが、その重量差はわずか25kg程度。結果、ベンテイガの弟の車重は2388kgとなり、兄の2440kgと比較して得られるアドバンテージは、さほど大きくない。
0-100km/h加速はW12よりも0.4秒遅い4.4秒。最高速度は289km/hで、12km/hだけ兄には届かない。それでもこの数値は、究極の贅を尽くしたラグジュアリーSUVとしては、常識はずれの数値には違いない。
少し冷静になろう。
W12とV8の外見上での違いはわずか
新しいベンテイガV8には、幾つかのオプションも追加されている。
例えば、カーボンセラミックブレーキが選択可能になった。ブレーキディスクの直径は440mmで、あのブガッティ・シロンよりも20mm大きく、ベントレーによれば量産車としては最大だという。ブレーキキャリパーを赤くペイントするオプションも追加されたが、W12では選択できないようだ。
一方で、路上において、双子の兄弟を見分けるのは少し難しい。
最も大きな違いは、エクステリアトリムがクロームメッキに代わって、ベントレーがスポーティとするグロスブラックに置き換わっていること。またツートーンカラーとなる、新しいデザインの22インチ・アルミホイールも登場した。
マフラーのフィニッシャーも、8の字を横にして中央をつないだような、新しいデザインのものになっている。そのくらいだ。
走りの違いはどうだろうか。
どんな感じ?
恐怖感を抱くほどの加速力
ツインスクロールターボを搭載したV8は一般的には大食漢の部類だが、かなり民主的になり、マナーも良くなっている。表面的には扱いやすい設定で、普通に流している限り、エンジンノイズはフェードアウトしたかのように静か。
しかし、機会は少ないかも知れないが、右足をフロアいっぱいに踏み込めば、W12エンジン・モデルと変わらないような、恐怖感を抱くほどの加速を生み出すことも可能。
エンジンは比較的高回転域まで回りたがる陽気な性格で、レッドゾーンは7000rpmから。今までベントレーが生み出してきたロードカーの中では最も高回転まで許容する設定で、このモデルの性格を表している。トルクカーブはフラットで、最大値は1960rpmから4500rpmまで湧出。最高出力は6000rpmで発生する。
パワーデリバリーは、ほとんど欠点を見つけることができないZF製の8速ATのおかげもあって、極めて滑らかにしつけられている。
惜しいターボラグとエグゾーストノート
このV8ツインスクロールターボのパワートレインに関して苦言を言うとすれば、W12よりも若干長いターボラグが看取されるところ。ただ、操作に対してアクションが明確に遅れるわけではなく、ベントレーがマーケットと目論む、スポーティなモデルに望むべきレスポンスよりも幾らか遅い、という程度だけれど。
もうひとつ。ベントレーはこのV8のエグゾーストノートを、マッスルカーの様な音質を目指したと話しているが、実際はこのジャンルの標準からすると、より人間味があればさらに好ましくなるだろうと感じた。
W12エンジンと比較すれば明確な特色を持ってはいる。しかし、アクラポビッチ製のスポーツエグゾーストの性質によるところも大きいが、排気量の大きいV6に似たサウンドに聞こえる場面がある。
このようなラグジュアリーなSUVの場合、エグゾーストノートは優先事項ではないとは思うが、もう少し楽しめる音質を期待してしまうのは、わたしだけだろうか。
ベントレー・ライクな上質な乗り心地
ダイナミクス性能の面で言うと、アダプティブ・エアサスペンションの設定にW12からの変更はない。ドライビングモードは、コンフォートからスポーツまで車高も変化する複数の設定が備わり、いかにもベントレー・ライクな上質なセッティングを得ている。
アクティブ・スタビライザーも装備され、コーナリング時の遠心力が0.6Gを超えるまでは、ボディをフラットに保ち続ける。0.6Gを超えた時点で、大柄なボディを相当なペースで走らせているということをドライバーに知らせるため、ピッチ側、前後傾斜の動きが発生するようになる。
ベントレーによると、ステアリングフィールも改善したと話しているが、試乗したオーストリアの濡れた路面と、ウィンタータイヤの組合せでは、確かめることはできなかった。
ただし、類まれなラグジュアリーさと、オフロードでの高い走破性能、本物のスポーツカーの様なコミュニケーション力の豊かなシャシーとを兼ね備えることは、恐らく実現しがたい願いだとは思う。
「買い」か?
V8が高めたベンテイガの完成度
ベントレーによると、ベンテイガの購入者の多くは、平均で4万ポンド(607万円)のオプションを選択してカスタマイズするそうだ。
例えば、アダプティブ・クルーズコントロールや、ヘッドアップディスプレイ、レーンキープアシストなど有用な基本装備が追加されるツーリングパッケージは、6225ポンド(95万円)。カーボンエクステリアトリム・パッケージは、1万5000ポンド(227万円)もするから、簡単に価格は釣り上がる。
今回のテスト車両はふんだんにオプションが奢られ、価格は21万5000ポンド(3263万円)にもなっていた。
フラグシップモデルの選択肢を増やすという、ベントレーが実施した内容は、比較的珍しいことだと言える。そもそも、ラグジュアリーSUVというカテゴリーだけでなく、本気度の高いスーパーカーと比較しても、引けを取らない強力なW12エンジンの魅力が、変わることはない。
しかし、V8エンジンに置き換わっても、クルマの性格に大きな変化はなく、実用性や優雅さはそのまま。しかも、価格は3万ポンド(455万円)も安いうえ、ランニングコストも低く収まるはず。W12の息を呑むほどの加速が若干薄まったとしても、V8エンジンを得たことで、ベンテイガの完成度は一層高まったように感じられた。
ちなみに、今回は価格帯の近いV8ディーゼルには触れてはいないが、驚くほど静かで、エンジンもレスポンシブ。ベンテイガを大柄なスポーツカーとしてではなく、超距離移動をこなすラグジュアリー・エクスプレスとして欲するなら、ディーゼルも理想的な選択だと思う。
ベントレー・ベンテイガV8のスペック
■価格 13万6200ポンド(2067万円)
■全長×全幅×全高 5140×1998×1742mm
■最高速度 275km/h
■0-100km/h加速 4.4秒
■燃費 8.7km/ℓ
■CO2排出量 260g/km
■乾燥重量 2388kg
■パワートレイン V型8気筒3996ccツインスクロールターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 531ps/6000rpm
■最大トルク 78.3kg-m/1960-4500rpm
■ギアボックス 8速AT
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