日本では2006年4月に、Z4クーぺ追加と同時に発表された、Z4ロードスターのマイナーチェンジ。Z4クーぺの日本上陸はやや遅れることになったが、新しいZ4ロードスターは時間を置かずにデリバリーが開始された。早速、Motor Magazine誌ではテストを行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年7月号より、タイトル写真はマイナーチェンジと同時に登場したMロードスター)
内外装とも基本的なデザインに変更なし
2002年のパリ・サロンの場で正式披露となったBMW Z4。Z3よりも1ランク「大人のロードスター」へと成長を遂げてのデビューとなったこのモデルにも、誕生以来丸4年という時間を経てのマイナーチェンジの時期がやってきた。
【くるま問答】トヨタ2000GTのサイドにある四角い部分には、いったい何が入っているのか?
いかにもBMWらしい、ちょっと古典的なFRフォルムを主張する大胆なまでにロングノーズのプロポーションと、ボディサイドやダッシュボードにインバー(凹み)面を多用することなどで世界の多くのデザイナーに衝撃を与えたこのモデル。が、そんなデザインの基本的なイメージは、ご覧のように今回のマイナーチェンジでも、ほとんど手を加えられることはなかった。ここにはBMWの、Z4のルックスに対する自信のほどが窺える。
そうは言っても、クルマ好きにとってZ4の新旧を見分ける作業はさほど困難を伴うものではないだろう。
フロントバンパー下部に口を開くロワーグリルはシャープな逆台形型にリファインされ、その上端部の左右にはこれまで丸型独立タイプであったフォグライトが横長型にアレンジし直されてビルトインされた。リアビューではコンビネーションランプ内の区画分けが変更されている。リアバンパー下部に入るレリーフの形状も変更された。さらに細かいことを言えば、バイキセノン式ヘッドライトにスモールライトリングが新採用となったり、ボディカラーに新色が用意されたのも新型でのニュースとなる。
もっとも言い方を変えれば、かように細部には手を入れられているものの「ボディパネル部分には一切の変更がない」というのも新型での特徴。それゆえ、前述のように細かなポイントはリストアップが可能でも、ちょっと遠目に見ると「雰囲気そのものは全然変わってないな」と感じられることにもなる。
そして、そんなリファインのやり方はインテリアでも同様。これまでは少々プラスチッキーだったダッシュボード中央下部に位置する空調用の3連ダイヤルの質感が大きく増したことにはすぐに気が付くが、それ以外は周囲を見回しても、新しさを感じさせる部分はほとんど存在しない。
え? 自分は旧型のオーナーだけれど、そんな代わり映えのほどを耳にして安心した!? いやいや、残念ながらそう単純にハナシは終わらない。マイナーチェンジをしたZ4の真髄は、実はこれから!だからである。
マイナーチェンジの真髄はパワーユニットの刷新にあり
「Z3に比べると好き嫌いが大きく分かれるはず」という当初の懸念も吹き払うかのように販売面でも好調が伝えられるZ4。すでに紹介したようにBMWの自信のほどを示すかのごとく、ルックス面では変更を最小限に留めた。そのマイナーチェンジの大きな特徴は、実はパワーユニットを全面的に刷新させたことにあると言ってもいいものだ。
Z4に積まれる心臓と言えば、BMWが得意とするところの直列6気筒デザイン。そんな直6のエンジンがすべての新型Z4で新開発のユニットに置き換えられたのである。
従来型3.0iに代わり、sportを示す「s」の文字が加えられた「3.0si」が搭載するのは最高出力で34ps、最大トルクで15Nmという大幅なパワー/トルクアップを果たした最新ユニット。そして従来同様のモデル名を与えられた「2.5i」が搭載するのは、177ps/230Nmのパワー/トルクを発する、やはりクランクケースにマグネシウムテクノロジーを採用した新しいユニットだ。
ところでここで、新しいZ4シリーズのラインアップに触れておく必要があるだろう。前述のように従来の3.0iは3.0siへと置き換えられてパワーアップを果たした一方、2.5iは同名の新型となって、その表示出力がむしろ大きくダウンしたことに疑問を抱く人がいるであろうからだ。
実はこの点は、欧州でのラインナップと照合するとわかりやすい。2.5iと3.0siという2本立ての日本でのラインアップに対し、欧州では両者の間に「2.5si」なるモデルが存在。さらに底辺には4気筒の150psエンジンを搭載する「2.0i」なるモデルも設定。4本立ての構成を採るのが欧州でのラインナップだ。
こうして、日本での売れ筋モデルであった旧2.2iと旧2.5iが新たな「2.5i」へと統合され、特にスポーティなキャラクターをアピールするモデルが「3.0si」へと格上げされた形となっている。
ちなみに、単純比較ではかつての2.2iから新しい2.5iへの価格アップは16万円。が、「エンジンが高性能化されてATも6速仕様となり、さらに2.2iではオプション扱いだった電動トップが標準となったので、実質的には大幅値下げに相当する」というのがインポーターであるBMWジャパンによる謳い文句になる。
シャープな動きは抑えられ落ち着きのある走り味
そんな新型Z4のうち、まずは439万円のプライスタグを提げる2.5iでスタート。なるほど、その加速のフィーリングは「従来の2.2iと比べれば同等以上だが、旧2.5iと比較をしてしまうとちょっと物足りなさも残る」という微妙なライン上。そんな動力性能からネーミングを与えるとすれば、さしずめ「2.4i」とでもするのが適当というところだろうか。
一方の3.0siの動力性能は、スタートの瞬間から従来の3.0iに対しては明らかな力強さの上乗せを感じさせるという、 旧3.0i乗りの自分にとってはちょっとばかりの悔しさも募る仕上がりぶりであった。
スペック上での比較では、新旧エンジンは新型の方がより高回転で大きな出力を発生するという「高回転・高出力型」という性格の持ち主になったようにも受け取れる。そして、実際にアクセルペダルを深く踏み込んでみると回転の上昇につれてのパワー感が新型の方が確実に逞しく思えたのは、30ps以上という最高出力の差を考えれば当然でもあるだろう。
けれども、より実感としてその差を感じるのは、パーシャルスロットル域でのトルク感の違いであった。アクセル操作に対するトルクの付きの差は、むしろ2000rpm付近での方が大きく感じられもした。場合によってはそれは「排気量が200ccほども増したのではないか」とも思えるもので、そう感じて改めてカタログに目をやれば、実は最大トルクは遥かに低い回転数で、従来型よりもずっと大きな値を表示するのが新エンジンであることがわかった。
もっとも、そんなパワーフィールを放つ新エンジンが、ATのみとの組み合わせでしか味わえないというのは返すがえすも残念だ。フォルクスワーゲンのDSGばりのデュアルクラッチ式トランスミッションを開発中とも聞かれる現在、旧3.0iに用意されていたSMGは本国のカタログからも落ちている。が、一方で彼の地ではATではなくMTが標準という扱い。「どうしてもMTというなら『Mロードスター』に用意がある」と、それが日本のインポーター流のもてなしと言うものなのか……。
ところで、何とも機敏な回頭感が売りものでもあったのがデビュー当初のZ4のハンドリング。が、悪く言えばそうしたシャープな動きはすっかり影を潜め、良く言えばそれと引き換えに、これまでウイークポイントとされてきたヒョコヒョコと落ち着かないボディの動きを随分克服したのが、最新Z4のフットワークテイストでもある。
今回のマイナーチェンジでは、シャシ関連のリファインについては何も触れられてはいない。が、それでもスペック上には表れない手が加えられた可能性は考えられるし、ランフラットタイヤがデビュー当初のものに比べると断面形状までを含めてずっと乗り心地面で有利なものへと進化していることは間違いない。もちろん、現在のモデルでも「スポーツカーらしいハンドリング」を実現させているのは確かだが、同時に「わかりやすい機敏さ」という点では当初のモデルよりも後退した印象を抱かせるのもまた事実。このあたりは、人によって大きく評価が変わりそうな部分でもある。同時に、「Mロードスター」が敢えてランフラットタイヤの採用を避けた、という事実についても、考えさせられるものがあるということになるのだが……。
官能的エンジンとしなやかで上質な乗り心地
マイナーチェンジを行ったZ4をベースにM3から移植されたパワーパックを搭載。かいつまんで述べれば、そのように紹介できるのがZ4 Mロードスターだ。専用デザインの前後バンパーと4本出しのテールパイプがZ4シリーズの中でも特にプレミアムな存在であることをほのめかしてはいる。それでもそのルックス上でことさらに強いオーラを発したりするわけではないのは、やはりボディの基本デザイン自体が、見る人が見れば「Mだ!」と気付きそうなパワーバルジが与えられたボンネットフード以外はオリジナルのZ4と変わるところがないからだろう。
見た目上ではそんな「さりげなさ」が特徴とも言えそうなMロードスターは、しかしエンジンに火が入った瞬間にただならぬ迫力をアピールする。ず太い重低音を周囲に放ちつつ少々ラフなアイドリングを続ける様は、明らかに尋常ならぬハイパフォーマンスカーならではの佇まい。エンジンの暖気に伴い徐々にイエローゾーンの下限が高い回転数へと移行する昨今の「Mモデル」に共通表示のタコメーターによれば、温間時でもそのアイドリング回転数はおよそ900rpmと高めの設定だ。
今回のテスト車は右ハンドルだったが、左足の置き場もきちんと確保され、ドライビングポジションに違和感はまったくない。直列エンジンはやや右寄り傾斜で搭載されるBMW車の場合、「重量バランスやレイアウト的には左ハンドル車が有利」という意見も聞かれるが、この仕上がりぶりであれば何かにつけて不便を伴い、時に危険すら感じさせられる左ハンドル車を日本で敢えて選択するつもりは、ぼくには毛頭ないことも加えておこう。
一方、そんなこのクルマのインターフェース上でとても残念だったのは、そのステアリングホイールのデザイン。ぼくにはグリップ部分が太過ぎて最後まで馴染めなかった。
しかし、終始「このステアリングホイールだけは交換したい!」という思いに駆られてしまったことを除けば、予想通りにこのクルマのドライビングは痛快そのものだった。
そんな魅惑の根源その1は、例によって何ともパワフルで、いかにもスポーツ心臓らしくレスポンスに優れ、その上、耳に届くサウンドもゴキゲンそのもの、とまさに何拍子もが揃うそのエンジンの実力にある。800万円を大きくオーバーと確かに高価ではあるこのモデルだが、それでも「そうした価値の内の半分はココにあるのではないか」と思わせるほどのこの珠玉のような心臓が、何はともあれMロードスターというクルマの魅力度を大きく高めているのは間違いない。
と同時に、そんな強心臓の搭載に合わせて強化されたMスポーツ仕様のサスペンションを採用しながらも、そのフットワークテイストがオリジナルのZ4シリーズ以上に上質と感じられたことが、魅惑の根源その2、と言える。
そして実は、この部分に関しては電動式パワステと共に、Mのモデル開発を担当するM社が頑なにその採用を拒む、ランフラットタイヤを採用していないという事柄の影響も強く感じざるを得ないものであった。
確かにMロードスターのフットワークは、路面凹凸を拾うと時として強く伝えられる上下Gなどに、その強化ぶりを意識させられるものではある。けれども、そうして伝えられる振動の波形は、強弱はあってもイメージ的には「常に角が丸められた」と受け取れるもの。ランフラットタイヤを履くオリジナルのZ4シリーズの、時にシャープに突き上げられるような感覚を伝えてしまうのとは、そこのところに大きな印象の違いがあるのだ。
かくして、Mロードスターのフットワークは「かたいけれどもオリジナルZ4よりも不快感は少ない」というコメントを与えられるもの。これが、前述のように「より上質」と評価を出来る要因になっている。
ところで、そんなMロードスターのハンドリングは、例によって前後の重量配分の巧みさを実感させられるものでもあった。フロントが225/45、リアが255/40という18インチのタイヤ(テスト車はコンチネンタル・スポーツコンタクトを装着)は、それぞれが常にバランスの良い仕事を行っていることを実感させてくれる。
4輪が生み出す色濃い接地性を感じながら、自在なフォームで次々と現れるコーナーを克服して行く……それも、またこのクルマならではの走りの醍醐味というわけだ。
ところで、ロードスターにMモデルが加えられたこのタイミングで、いよいよクーペのボディも登場した。日本へのデリバリーはこの夏になる。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年7月号より)
BMW Z4ロードスター 2.5i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4100×1780×1285mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1410kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:177ps/5800pm
●最大トルク:230Nm/3500-5000pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:439万円(2006年)
BMW Z4ロードスター 3.0si 主要諸元
●全長×全幅×全高:4100×1780×1285mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1430kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:265ps/6600pm
●最大トルク:315Nm/2750pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:589万円(2006年)
BMW Z4 Mロードスター 主要諸元
●全長×全幅×全高:4120×1780×1300mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1485kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:3245cc
●最高出力:343ps/7900pm
●最大トルク:365Nm/4900pm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●車両価格:829万円(2006年)
[ アルバム : BMW Z4ロードスター(2006年) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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